判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『美しいままで』(ネーダーコールン靖子・秋岡史解説・編・祥伝社)

 オランダというと何を思い浮かべるだろうか。風車にチューリップ? 「アンネの日記」のアンネ? 私は「安楽死」である。オランダで、2001年4月に世界初の「安楽死法」が成立した。この法律が成立する以前にもオランダでは、医師が一定の条件の下で安楽死を行っても、刑法上は有罪だが、訴追されないという慣行があり、1年に約5000人が安楽死をしているといわれ、日本でもそのドキュメントが放映されたことがある。最近、オランダで日本人女性が「安楽死」をしたとの報道がされ、ずっと心にかかっていた。
 その女性、ネーダーコルン靖子さんの死にいたるまでの日記を収めたのが本書である。 靖子さんは1945年生まれ、オランダ人の夫との間に2人の子がいる。86年甲状腺ガンを発病、手術、95年仙骨に転移。手術、放射線治療などさまざまな治療を受けても収まることを知らない激痛と戦いながら、97年9月17日「あと10分で逝きます」というメモを遺して夫に見守られて死を迎えている。人生にいつでも挑戦的であり明るく美しく、夫と子ども父や母を心から愛する靖子さんが、それでも耐えられなかった痛みが、この世にあると思うことだけでも、痛みにからきし弱い私は震え上がる。「安楽死」に心が傾斜しそうになる。オランダの安楽死は医師と患者との信頼関係の中に生まれたと言われている。しかし、本書から透けてくるのは、どんな病気でもホームドクターに相談し、そこから紹介をうけてはじめて専門医の診察を受けられるというホームドクター制の問題性である。ホームドクターはそもそも自分の意思で選べるのか。このドクターと患者の対等性は保障されているのか。専門医の診察を受けることについて患者は自己決定できないのではないか。様々な疑問はわいてくる。それと書名に抵抗を感じる。本人の気持ちをストレートに反映しているとは思うが、これが男性だったらこうはつけないだろう。また女性でも高齢だったらこうはいわないだろうし、第一、無名の高齢者だったら、ジャーナリズムが取り上げることもしないだろう。実はここに「安楽死」の問題があるのではないか。
Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK