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辻村みよ子著『ポジティヴ・アクション 「法による平等」の技法』岩波新書 2011年

 政治・行政・雇用・教育等における差別,格差を解消し,多様な人びとの平等を確保する手法,ポジティヴ・アクション(PA,積極的格差是正措置)。政治等諸分野で男女間に大きな不均衡が存在している日本でも,PAの導入は急務である。
 本著が多々紹介するデータは衝撃的である。たとえば,世界の女性国会議員比率の平均は下院(もしくは一院)で19.5%,両院で19.3%。下院もしくは一院の平均では,北欧諸国42.1%,欧州諸国22.2%,南北アメリカ諸国22.3%,アジア諸国18.2%。日本の衆議院における女性議員比率は…11.3%。下院の世界ランキングで,日本は187か国中126位。そのほか男女の格差を示す国際指標上,日本がどれだけ下位にあるかが多数のデータをもって明らかにされている。性別による差別が禁止された憲法の制定後65年を経て,未だ日本ではここまで男女間の不均衡が著しいのかと,目がくらむ。
 このような状態は,女性のみならず男性にとっても,マイナスである。また男女同数で構成される有権者の意思が同じ重さで政治に反映されないようでは,民主主義を実現しえない。そこで,各国は果敢に多様な取り組みをしている。たとえば,フランスは,議員の候補者名簿の同性の候補者比率が75%を超えてはならない等のクオータ法案が続々と違憲と判断され潰えてもなお諦めず,違憲判決を克服するためになんと憲法を改正し,憲法上で法律は議員職と公職への男女の平等なアクセスを促進することを明言。以後「公職における男女平等参画促進法(パリテ法)」を制定し,候補者の男女割合の差が2%を越えた政党等への公的助成金を減額すること等を定めた。努力の成果があり,フランスは,女性議員の比率につき,EU諸国中の下位の地位を脱出したという。
 日本からみれば斬新な改革が進められているのは,フランスだけではないし,政治分野だけでもない。男女共同参画社会の実現には,政治のみならず社会,経済,教育等の分野での性別役割分業構造の見直しが必要と意識され,労働法や民法,社会保障関連法の改正も進められている。たとえば,韓国では,民法改正によって戸主制が全面廃止されると同時に,日本でも問題になっている6か月間の再婚禁止期間規定が女性に対する差別規定であるとして,民法から削除した。
 日本は,世界で盛り上がる改革から遠く取り残されているかのようだ。しかし,本著は,慨嘆することなく,日本が憲法上の理論的課題を克服する形で採り得る選択肢を掲げる。たとえば,立候補者の女性比率を50%に近づけること,女性のための立候補支援,財政支援など,政治分野だけでも多彩な手段がありうる。
 3.11以後の日本が政治経済を立て直すためには,新たな視点で共生社会を構築することが急務であり,PAもその一環であるとの力強いメッセージで締めくくられている。   (良)
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