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神津志万著『国会女子の忖度日記 議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』徳間書店 2017年

 流行語大賞候補にノミネートされた「忖度」「ちーがーうーだーろー!」がノミネートされた2017年というまさにピッタリな年に、来る日も来る日もボス(国会議員)の心を忖度して行動するも、罵声を浴びせられながら、永田町を必死にサバイバルする議員秘書による本著が世に出た。ひえー!とうめきながらも、一気に読める。
 ブラック企業を見極める指標…長時間労働、セクハラ、パワハラ、イジメ、過密労働、低賃金、コンプライアンス違反、育休産休などの不備…etcがあてはまる、超ブラックな議員事務所。女性活躍推進法が聞いて呆れる男尊女卑も凄まじい。どんなに頑張っても、表向き議員の「手柄」になるが、議員のミスは秘書の忖度が足りなかったせい。議員の秘書は報われない。これでもかこれでもかとブラックな永田町という仕事場を明らかにしながらも、笑えるツボを押さえており、巧みだ。
 実は小渕優子が美スタイル、きれいオーラは三原じゅん子と蓮舫、意外にオーラがない今井絵里子、岡田克也が実際に見るとかっこいい、玄葉光一郎はちょいワルオヤジというイメージで秘書に人気あり、といったどうでもいいことが記憶に残る。
 議員会館の女性スタッフの顔を「愛人顔」と「そうでない顔」に分けるのは、永田町のオッサンたち(議員、秘書、記者)の楽しみのひとつだとか。著者は、それに対し、「愛人顔の定義がわからない」とツッコミをいれるが、オッサンたちはえんえんとくだらない会話をしているのだろう。露出過多のセクシー系女性スタッフばかり採用している議員事務所にオッサンたちは何かと理由をつけて集まってくる、と著者は苦々しく思うも、前職が本当にキャバ嬢だった女性秘書の接待役としての仕事ぶりはさすがである(パー券を快く買っていただく)とも述べる。どうも、永田町は極端に男女の役割が固定化している社会のようだ。本著の筆致とはずれるが、女性議員が増えれば、このお粗末な状況は細々と(そしてその集積で大幅に)変わるのではないだろうか。
 政治的な意見を控えているものの、私たちが固唾を飲んで野党の粘りを応援していた法案審議も、ムダ、夜中まで残されて迷惑でしかないようなところには、ガクッとなるが、まあ労働者としては無理がないだろうか。議員会館に夜中、幼い子どもが歩き回っていたりするという…。それでは家庭責任を負う人は秘書になれない。ワークライフバランスが永田町でも全く実現できそうもない。そのような国会で、ワークライフバランスだの女性の活躍だのの議論が実質的なものになるのだろうか、と一抹の不安がよぎる。
 豊田前議員の「このハゲー!」「ちーがーうーだーろー!」という音声をきいて、著者は、「なんか、なつかしい」と思ったのだという(!)。すっかり感覚が麻痺している、豊田前議員の人望のなさや日頃の行いの悪さを指摘しつつ、告発した秘書がしたミスは、バースデーカードの宛先とカードの名前を間違えるという、支援者の信用を失うこと必至な言語道断のものだったとし、ボスだった豊田前議員を告発したのだから、永田町には居場所がない、著者自身も元ボスとのやりとりを録音したことがあるが、それは再就職の足を引っ張られないために準備したに過ぎないとし、マスコミに売ったり告発したりした豊田前議員の元秘書に眉をひそめている。やはりこの点も、永田町を長く仕事場にしている著者は、暴力の被害を人権問題、労働問題としてとらえる法曹の私とは、大分見方が違う…。
 森友に関連して、昭恵夫人には猛省してほしい、秘書に責任転嫁する官邸の対応は腹立たしい、としていることに、秘書魂を感じる。
 今後ロビーした際にもしも偉そうな秘書に出会うことになっても、きっとかつては苦労したんだろうなあと同情できる気がする。まあ、後輩秘書をイジメてるかもしれないか…。(良)
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