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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
歌集 鳥 女 (松村由利子 2005年 木阿弥書店)

 第一歌集『薄荷色の朝に』から、7年、その間の歌406首が納められた第二集。前の歌集ではしばしば歌われていた古代生物大好きな少年は、もはや母親の手を離れつつあるのか今回はあまり登場しない。マスコミの最前線で働く女性のシャープな感覚は、2ページだての「scrapbook」というコラム風な扱いの時事詠によく表現されている。
「ともかくも厚生省に駆けつけよ抜かれちまった口惜しさあれど」
「躍ってはならぬ見出しと思うなり第一例の移植といえど」
 また、9.11をうたってーー
「ゆっくりと倒れる巨人ざわざわと編集局は総立ちになる」
「午前三時ひとまず帰る吾の手に滴るような最終版あり」
 このような熱気溢れる現場から離れつつ管理職になっていく著者の感慨は、キャリア・ウーマンの率直な感情が歌われていて心を打つ。
「来月は管理職となる憂鬱に研修室の空気淀みぬ」
「『五年ぶりに殺しの現場に行きました』後輩のメール生き生きせり」
 少しは時間的余裕が出来たのか、著者はフラメンコに汗を流し、美術館にも足を運ぶようになった。そこで小山田二郎の「鳥女」にであう。この像が自分であるような激しいショックを受けて、歌集のタイトルにし、また表紙にもしている。
「わたくしの顔を見つけて立ち止まる幻視の画家の『鳥女』像」
 平易な歌いぶりで、好感が持てる歌集である。それだけにちょっと美しすぎて印象が弱い感じがあるのがもったいない。
「広辞苑叩きつけたい夜もある激辛スナック買って帰りぬ」という激情がもう少し歌にも出ているといいのにと思うのは、ないものねだりかもしれないが。
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