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秋武憲一『離婚調停』日本加除出版 2011.10

 なんとも柔らかい優しい離婚の本である。調停委員さんに向けて語られているが、裁判官にも、弁護士にも、そして、当事者にもぜひ読んでいただきたい。著者は、現在、仙台家庭裁判所所長をされている裁判官。調停はどんな風にはじまって、どんな風に終わるのか、そしてさまざまな離婚をめぐる論点について、平易に解説している。当事者が読めば、当事者からは見えにくい裁判所の中ではどんなことが行われているのか、そのときどきの手続きは全体の流れの中でどういう意義があるのか、こうしたことが客観的にみえてきて、かつ裁判所も努力を続けていることへの信頼をもて、きっとそのことでよりよい方向の解決につながると思われる。
 相(あい)調停委員(一緒に調停をする時のもう一人の調停委員をこうよぶ)が当事者について先入観が入った発言をしたら、調停委員として、勇気をもって自由に意見交換をするようにとアドバイスし、面会交流で監護親が「子どもが会いたくないといっている」と主張したら、それがどういう状況で生じているか当事者に十分考えてもらいましょう、そのうえで、親が子どもに対してどのように接したら、こうした事態を克服できるかについて考えさせるとよいでしょう等と、調停委員が困ったと思う多くの場面について、具体的で適切なアドバイスをしている。特に、面会交流についての、「どのように根深い紛争であっても、当事者のかたくなな気持ちが溶ける時がまず来ます。子どもが解決のきっかけを作ってくれることも多々あります。また、時間が解決してくれることも少なくありません。そのため、その事案ごとに、必要とされる時間を考えるとともに、援助の手間をけっしておしんではいけません。」(180頁)は素晴らしい。少子・高齢化もあり、子の監護事件も後見事件も増加傾向で、かつ人手が増えずに家庭裁判所は大変であるが、心ある裁判官・調査官・書記官・調停委員は、今もていねいに事件を扱ってくれている。
 最後に、調停を経ているのに訴訟になると和解できることが多い、それにはそれなりの理由があるが、調停がもっとしっかり行われていれば、調停で解決に至ったと考えられる、調停の担当者は謙虚に反省し、調停のより充実を、と著者はしめくくっているが、同感である。調停がもっと普及し充実すれば、家庭裁判所は身近な場所になり、協議離婚で養育費や面会交流の取り決めもないということも少なくなるし、互いに攻撃しあって関係を最悪にする訴訟も避けられる。そうすれば裁判に使う家裁のエネルギーを調停に振り向けられる。日本では崩壊に直面した家族への支援はまだまだこれからである。その大きな一助になる1冊と思う。              (富)
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