判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
須藤八千代・渋谷典子編『女性たちの大学院―社会人が大学院の門をくぐるとき』生活書院 2009年

 「母の時代は戦争によって、祖母の世代は女性であることによって学ぶ機会から疎外されていた」という「あとがき」のフレーズが印象的で、本書を手に取った。
 執筆者の多くが属していると思われる「団塊の世代」からみれば、母でもまして祖母でもないが、大学卒業を前に大学院進学をゼミの指導教授に相談した時のことを思い出した。教授は「女性が大学院に行ったら結婚も就職もできなくなる」と言った。今だったら絶対に許されない発言だが、大学受験で力を使い果たしていた私はもう受験勉強をするのがいやで、結局、就職してしまった。そこで思いがけなく定年まで勤めることになったのだが、定年を控えたころ私はまたしても大学院進学を考えた。しかし、研究テーマを定めることができないまま、あえなく挫折した。
 このような個人的な苦い経験を吹き飛ばしてくれるパワーのある女性たちによる自分史的な本である。ある人は子育ての区切りを契機に、ある人は病気を契機に自分の生活を振り返り猛然とダッシュして大学院進学を果たしている。何人かは高校卒で放送大学や夜間大学を経ての進学である。彼女たちが水を吸い込むように研究に励み、学生生活を満喫しているさまが生き生きと語られている。そしてそこで学んだテーマをその後の職業生活の中に生かしているのがすばらしい。大学教授として、市民活動家として。
 日本の女性の管理職率が低いのは、大きな声では言われていないが、多分男性との学歴の差も関係しているだろう。その意味で女性が高学歴化していくことは、望ましいことであるに違いない。とくに一度社会に出た人々が大学生活に戻る「社会人大学院生」には大いに期待したい。彼女たちの「しなやかでしたたか」な足取りをみると「人生遅すぎることはない」のだと思える。(巳)
Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK