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萩尾望都著『萩尾望都対談集 2000年代編 愛するあなた 恋するわたし』河出書房新社 2014年

 ゴージャスな対談集だ。対談相手には、我妻ひでお、よしながふみ、恩田陸、庵野秀明・佐藤嗣麻子、大和和紀、清水玲子、ヤマザキマリという豪華メンバーがずらり。とはいっても、内容は萩尾望都やさらに大先輩である手塚治虫らへの敬意、同世代や若手漫画家たちの賛美など肯定的なお喋りでありどこからでもすいすい気軽に読める。
 「そうそう」と頷けるところが随所にある。よしながふみに、萩尾の作品中、子どもの目線から次の境地として親の目線も手に入れているのがすごいと言われて、萩尾がいう言葉「歳とともに、親の親和性や神秘性がはがれてきたものでね(笑)。(略)私、小さいころは、大人は20歳になったら20歳の大人になり、30歳になったら30歳の大人になり、40歳になったら40歳の大人になり、そういうものだと思っていたんですよ。どんどん大人になっていくと思っていたのね。ところが精神年齢では違うんですよね。だいたいが自分からして30歳前後で止まっている感じがする(笑)」あたり。私は自分が27歳くらいで止まっている気がするだが、そういうとすぐ「まったあ、図々しい」といさめられる。しかし「若い女の子」でありたいということでなく実感なんだけどとボソッと呟いていたので、なんだ萩尾望都らも止まっているお仲間なんだとほっとした。
 1969年にデビューした萩尾の語りからは、漫画とそれに関わってきた人の現代史が浮かび上がる。漫画も社会の変化と無関係ではない。たとえば、萩尾や大和和紀らは結婚しないで漫画に打ち込む、すなわち家庭と仕事の両立が難しかった世代。その後の世代は、仕事と家庭を両立している。「泊まり込みも全然平気」というアシスタントに、素朴に旦那さんに理解があると萩尾は感嘆する。とはいっても、差別や逆風があったからはね返すパワーが生まれ、作品を描けた、ともいう。
 さらに、萩尾らの世代は、ありえないことが起こる世界として、「日常ではない外国らしい場所」を舞台とした。しかし、女の子が当たり前のように恋愛する時代には、もう舞台が外国でなくてもよくなる。漫画は「非日常的なもの」ではなく、ただただ日常的なものを描くものになる。ヤマザキマリが90年代に描きだした漫画には、当初編集者から「日本の若い子たちは外国の人が登場人物というのは感情移入できないんです。外国の人は出さない漫画にしてほしい」と注文がついてしまったという。ところが、日本でOLしたこともないヤマザキは、片思いでモジモジして「あの人に告白したい…!」とやったこともなく(笑)、苦労したらしい。若い人が外国に憧れ、バックパッカーで出かけることもなくなった。断片的に見えていた世界の不思議さにわくわくしていた世代は昔の人間なのか。
 とり・みきらの異人変人エピソードのほか、ボーイズラブという装置、家族の中での葛藤など、興味は尽きない。
 さすがに絵を描くには手が大変になり騙し騙しなんとか描き続けているがそろそろ原作を提供することも考えているという萩尾に残された漫画執筆の時間は短いかもしれない。『ポーの一族』など、懐かしい代表作を読み返したくなった。(良)
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