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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
矢部太郎『大家さんと僕』新潮社 2017年

 今ベストセラーの本著。SNSのお友だちも絶賛するので手に取ってみた。一気に読む。おおお…私も誰かに薦めたくなる。
 初対面、大家さんが発した言葉は「ごきげんよう」。生まれて初めて出会った「ごきげんよう」と挨拶する人である大家さんと、矢部さんは、帰宅して電気を点けたその瞬間に「おかえりなさい」と電話があるような距離感に戸惑いつつ、しかし、いたわりあい、気遣いあう関係になっていく。
 強風の中で手をつないで歩く、矢部さんの誕生日前日(前日、がミソ)のお祝いetc、ぐっときます。
 ヘラヘラしていてそうで几帳面な後輩やガサツそうで大らかな先輩など、ワキ役もいい。後輩と大家さんがすぐ親しくなると、矢部さんが「僕の大家さんなのに」とボソッと思うくだりも(^_^;)。
 楽屋ではテンション高い後輩芸人の中に入り込めず、本番ではスベりまくるお笑い芸人の悲哀にもきゅんとする。
 深くは入り込まないながら、大家さんの過去のロマンスの余韻も味わい深い。
 改憲論者が、家族の絆が云々で24条が問題とか言うけれども(これがいかに的を射ていないかはここでは書かない。24条変えさせないキャンペーンのサイトなどを参照してほしい)、何も大切な関係って、家族だからとかでなく、気遣いや優しさから生まれてくる、とじんとする。悪気はない先輩とかがやたら相続すんのか?とツッコむのは、相続や扶養が絡まない親族でもない間柄でのあたたかな関係に戸惑っているのかもしれない。家族でも友人でも恋人でもない、まさに『大家さんと僕』という関係。
 読後は実に気持ちいい。私もお勧めしますっ。(良)
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