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林陽子編著「女性差別撤廃条約と私たち」信山社 2011年

 日本の賃金の男女格差について、また、民法の夫婦同姓の強制、女性のみに課されている再婚禁止期間などについて、女性差別撤廃条約に違反しているから改善するようにという勧告を日本の政府は、女性差別撤廃委員会から、何回も受けている。だが、政府は応じる気配がない。これは単に政府の怠慢であるだけでなく、国民の条約に対するある種の感情を反映しているのではないだろうか。「条約なんて理想論だ」あるいは「罰則もないし、守る必要はない」「条約が一国の法律より優越するなんてことはない」というような。もしかするともっとぼんやりした「条約なんて私たちの現実の生活と関係ない」といった思い。まだまだこの条約が何物なのかがそれほど浸透していないのではないか、という疑問をしばしば抱く。
 女性差別撤廃条約に関するコンメンタールなどをはじめとして、専門的研究書やテキストは数多く出版されているが、確かに一般の人には近づき難いものが少なくない。その点、本書は書名通り、私たちの現実の生活に差別撤廃条約を手繰り寄せている。それは既刊の書物と逆の方法といって良い。身近な問題から出発しており、しかも実際のトラブルの解決に奔走している弁護士が執筆しているだけに、叙述がリアルで読みやすい。「家族法改正」「性別役割分業」「育児休業」「過労死」「DV」「女性に対する性暴力」といった16のテーマから成るが、平均10ページほどの簡潔な解説でわかりやすい。条約の仕組みや個人通報制度という独特な制度の説明も平易で明快である。
 本書によって条約と私たちの現実生活の距離がかなり縮まった。長年の女性たちの闘いの結晶であるこの条約の使い方を知るために待ち望まれていた本だと思う。(巳)
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