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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『結婚の条件』(小倉千加子 2003年 朝日新聞社)

 あるところでボランティア的仕事を少ししている。現役中には全く知らなかったきらびやかな社会で、そこに集う女性のパワーに圧倒されている。
 彼女たちは一流大学(女子大が多い)を卒業、これまた一流大学を出た学界・官界・企業のエリートと結婚、一流の子どもを再生産し、子育ても一段落したので、いまや自分の時間を「社会貢献」に費やしているのだ。家事・育児に雌伏すること30年余、その間に体力・気力を養って、勇躍、社会復帰をはたした彼女たちは、もともと学力も優秀であるから、ちょっと磨けばたちまち光り輝き、一方怖いもの知らずだから、どんどん新しいことにチャレンジする。お茶くみやお酒のお酌も抵抗なくエレガントにこなすし、リーダーシップだってある。
 家事・育児と仕事の両立に疲れ、男社会の中で周囲の状況を気にしながら、なんとか企業社会を泳いでやっと対岸にたどりついた私とでは、まず意気込みからして違う。彼女たちは吸い取り紙のように新しい知識や経験を吸収していくが、私は伸びきったゴムみたいだ。そういう意味で定年後、産業廃棄物となる男性となんら変わりがない。華麗に飛び回る中高年の女性たちに置き去りにされていると、私の悪戦苦闘の30年は何だったのだろうと空しくなる。
 小倉千加子は本書で言っている。「仕事と家庭を両立するのがフェミニストなのだと多くのフェミニストは言う」が、女子学生たちは「結婚しても子どもができても、なお続けるに値する専門職に就けないのなら、妻の労働はただの家計補助であり、遣り甲斐のない単純な作業でしかない」「仕事の代わりは、いくらでもあるが、我が子の母親の代わりはない」。であるから、若い女性たちは労働からの総撤退を始めており、「専業主婦」の優雅な生き方を執念深く追求しているのだと。「夫にわが身を託すなんて無謀な、夫が死んだらどうするのよ」という声があるが、夫がエリートなら遺族年金がしっかりと保障されているし(私の年金なんかよりずーっと高い)、生命保険がどっとくるのだから、夫の死後の生活に何も心配はいらないのである。
 リストラの時代、夫が失業するリスクは以前よりはずっと高い。だからこそ、男を選ぶのにより慎重になる。彼女たちの厳しい基準をクリアできる男は少ない。こうして晩婚化・少子化は着々と進むのである。ということがとてもよくわかる本である。
 独身で生きてきた時間が長いほど安易な妥協はできない。「そんな男と妥協するくらいなずっと一人でいるわ。」もしかして、こういう女性に経済的自立の道をきりひらいたのが、フェミニズムなのではないか。若年退職制などは少なくともなくなったし、このごろはマンション業者だって、独身女性の財布に目をつけるようになったのだ。
 「夫は仕事と家事・妻は家事と趣味的仕事」。そんな夫をゲットできないなら「シングル」という昔の「男は外・女は内」より、すこしだけ選択の幅が広がったーーこれがフェミニズムの到達点なのかと思うと、わが身を呪いたくなってくる、おもしろくて怖い本である。

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