判例 親子
3 面会交流

3−2021.3.29
父母以外の第三者は事実上子を監護してきた者であっても、民法766条の子の監護処分として面会交流を求める審判を申し立てることはできないとした例
[最高裁2021(令和3)年3月29日決定(令和2年(許)第4号) 裁判所ウェブサイト]
[事実の概要]
父(抗告人)は、子の母と子(最決時4歳7か月)とともに、母の親である祖父母(相手方)宅で同居していたが、2017年家を出て別居した。その後、父母は1〜2週間ごとに交替で子を監護したが、祖父母らは母の監護を補助していた。母が死亡し、その後は父が監護している。祖父母らが、子との面会交流を定める審判を申し立て、原々審は不適法として却下、原審は、父母以外の事実上子を監護してきた第三者が、子との面会交流を認めることが子の利益にかなう場合には、民法766条1項及び2項の類推適用により面会交流を認める余地があるとして、原々審判を取り消し差し戻した。父が許可抗告を申し立てた。
[決定の概要]
「民法766条1項前段は、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者その他必要な事項は、父母が協議をして定めるものとし、これを受けて同条2項は、同条1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。他方、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないが、父母以外の第三者に上記申立てを許容する根拠となるものではない。(中略)したがって,父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。
「そして,子の監護に関する処分の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができるのは『子の父母及び子の監護者』(家事事件手続法156条4号)であるところ,前記2の事実関係によれば,相手方らが本件子の『父母』又は『監護者』のいずれにも当たらないことは明らかである」として、原々審判に対する祖父母らによる抗告を不適法として却下した。

3−2020.1.10
申立人(元夫)が,未成年者を監護養育している相手方(元妻)に対し,前の面会交流審判(前審判)に定められた面会交流を実施しないとして、新たに申立てた面会交流申立審判において、前審判を変更し、面会交流の頻度、各回の面会交流時間、未成年者の引渡場所等を具体的に定めた事例
[福岡家裁2020(令和2)年1月10日審判 家庭の法と裁判30号88頁]
[事実の概要]
前審判は、未成年者(平成23年生まれ)と平成30年7月及び同年12月に各1回,各回2時間,平成31年以降,毎年3月,7月,12月に各1回,各回2時間の直接面会をすること及び写真の送付などの間接面会を命じた。
しかし、相手方は、審判の後、一度も面会交流を実施しなかったので、申立人は履行勧告の申出をし、家庭裁判所は,相手方に対し,履行勧告書及び回答書を送付したが,相手方からの回答はなかった。そこで、申立人は改めて面会交流を申し立てた。
[審判の概要]
前審判は間接強制が可能なほどに給付が特定されているものではなく、面会交流を拒否する相手方の姿勢が強固なものであること,相手方は面会交流について申立人との間で協議することも拒否していること等からすると,面会交流の確実な実施のためには,給付の内容を特定すべきであるとして、前審判で命じた直接面会交流の一部を変更し、(1)面会交流の頻度及び具体的日程、(2)各回の面会交流時間、(3)未成年者の引渡場所などを具体的に定めた。

3−2019.11.21 New!
面会交流調停に基づく面会交流実施の不履行についての間接強制申立に対して、不履行1回につき5万円の支払を命じた原決定を維持した事例
[東京高裁2019年(令和元)年11月21日決定 家庭の法と裁判37号74頁]
[事実の概要]
2009年、X(母)とY(父)が婚姻、2010年に長男、2012年に二男が出生。
別居以降、2018年に婚姻費用分担調停、面会交流調停(月1回、午前10時〜午後2時)が成立した。
Xは二男の面会交流には応じたが、長男の面会交流には一度も応じておらず、2019年には二男の精神状態が不安定であること、面会交流を拒否していることを理由として面会の中止を申し入れた。なお、2019年には離婚調停が成立し、子らの親権者はXと定められた。
原審では、審尋期日に子らが帯同し、面会交流には拒否的でないことが確認されており、未実施2回分の面会交流実施が合意されたが、実際には実施されなかった。
Xから調停合意とは異なる提案(午前10時〜12時、ショッピングモール)がされ、2回、面会交流が実施された。原審は、同協議が行われている間に、1回の未実施につき5万円の支払を命じる決定をした。これに対して、Xが執行抗告をした。
[決定の概要]
「本件面会交流調停の内容に従って、相手方と未成年者らとの面会交流を実施することを命じ、各未成年者についての不履行1回につき5万円の割合による間接強制金の支払を命ずるのが相当であると判断するが、その理由は次のとおりである。」として、以下の理由を挙げた。
(1)調停で合意された面会交流実施要項が特定に欠けることなく、間接強制をすることができる。
(2)面会交流の未実施、短い時間での終了の理由として、Xは子らの拒絶、精神的不安定などを理由として挙げるが、Xは調停合意をしているので同時点で面会交流が不可能ではないと認められる。それにも関わらず、長男に関しては一度も実施されず、二男も一時点を境に実施されていない。
また、子らの拒絶、精神的不安定を裏付ける資料もない。審尋期日において面会交流の実施を約束したものの実施されなかったことについて子の拒絶を理由とするが、審尋期日において子らが面会を拒絶していないことが直接確認されている。加えて、X提案の方法では面会交流が実施されていることから、これまでの不実施が子らの強固な拒絶が理由ではないことが認められ、Xの義務不履行によるものと認められる。
(3)調停合意とは異なる方法で面会交流が行われていることについても、本来の面会交流とは別のものとして実施されたものであり、時間も本来の1/2であり、原審審理の経過を踏まえれば、間接強制決定を妨げる理由とはならない。

3−2019.11.20
直接交流の実施は相当ではなく、年4回の写真の送付及び手紙の送付などの間接交流の実施が相当として事例
[大阪高裁2019年(令和元)年11月20日決定 家庭と法の裁判34号87頁以下]
[事実の概要]
X女とY男は、2010年に婚姻、2011年、2015年、2017年にそれぞれ子をもうけた。
しかし、Xは子ら3人を連れて、2017年に別居、2018年には子らの親権者をXとする離婚が成立した。
Yが、子らとの直接交流を求めて面会交流の申立てをしたところ、Yが直接交流を行うことが子の福祉に反すると主張した。原審では、Yと子との交流は、間接交流にとどめるべきとされ、Yがこれを不服として即時抗告した。
[決定の概要]
主として、原審の判断を維持した。 面会交流の実施のためには、監護親と非監護親との間に最低限度の信頼関係が必要であること、信頼関係がない中で無理に面会交流を実施すれば、未成年者は板挟みとなり、ストレスを抱えたり、一緒に生活している監護親との関係で混乱したりすることがあり、かえって未成年者の福祉に反するとし、
本件においては、同居期間中、Yが激高して包丁を持ち出すなどしたこと等を理由として、XがYに対する信頼を喪失していること、XのYに対する恐怖心・拒否的感情を鎮めることができないままであること、Xの体調、立会いの困難さなどがあり、直接交流は相当ではないとし、年4回の写真の送付、手紙の送付の間接交流にとどめるべきと判断した。

3−2019.11.8
父が母に、調停条項に基づく面会交流が実施されなくなったとして、子らとの面会交流を求めた事案において、間接交流のみを認めた原審判を変更し、直接交流を認めた例
[大阪高裁2019(令和1)年11月8日決定 判時2447号5頁 家庭と法の裁判29号78頁]
[事実の概要]
父(抗告人)と母(相手方)は婚姻後、長女と次女をもうけたが、父の女性関係が原因で、母が子らを連れて別居した。別居中、父は月1、2回長女と面会交流を続けた。母は父に対し、離婚調停を申し立てたが、当分の間別居して、母が子らを監護養育し、父は婚姻費用を分担するほか、子らと月1回面会交流することを認める旨の調停が成立した(前件調停)。父と子らの関係は良好で、前件調停後も宿泊や2度にわたり父母と子らで旅行もしている。その後、母は、心身の不調により心療内科で治療を受けるようになり、また、父が交際する女性と対面し父との関係が悪化し、面会交流は次第に実施されなくなった。そのため、父が母に対し子らとの面会交流を求める調停を申立てたが、調停不成立により審判に移行した。原審は、前件調停における実施要領(直接交流)を間接交流に変更したため、父が抗告した。
[決定の概要]
父と未成年者(本決定時:長女9歳、次女6歳)の従前の父子関係は良好であり、2018年6月末ころまでは、宿泊はもとより2回にわたり家族で一緒に旅行に出掛けるなど、面会交流の実施要領に捉われずに柔軟かつ円滑に抗告人と未成年者らの直接交流が行われていたのである。その際、父が未成年者らに対して不適切な言動に及んだことも窺われない。そして、未成年者らは、現在も父を慕い、直接交流の再開を望んでいる。このような事情を考慮すると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらない。長女は、父に会いたいと思う一方、母の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになる。したがって、父と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当である。
母は、心身の不調を理由に間接交流に止めるべきであると主張する。しかし、母は、同年9月には復職できるまでに回復しているのであるから、直接交流に応じることによって健康状態が悪化し、未成年者らの監護に支障を来たしたり、未成年者らに不安を与えたりする状態に至るとは考えられない。また、母は、父との接触を避けることが望ましいと診断されているが、未成年者らの年齢や発達状況からすると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、母と父が直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではない。したがって、母の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならない。母の主張は採用できない。

3−2019.10.4
母による面会交流の審判前の保全処分申立てにつき、子の拒絶的な姿勢は身近な大人の影響によるものであり、母ががんに罹患し余命告知されている状況に鑑みて面会交流を仮に認めた例
[仙台高裁2019(令和元)年10月4日決定 家庭の法と裁判33号59頁]
[事実の概要]
母(相手方、原審申立人)は、2016年、がんと診断され入院して手術を受けた。退院後、父母の関係は悪化し、2017年8月、父は子(2008年生まれ)を連れて実家に転居し、母と別居した。子は父、父の母、父の祖母等と暮らしている。同年12月、母は、面会交流調停を申し立てた。別居後、母は子に誕生日プレゼントや手紙を送るなどしていたが、2018年1月、父の指示により子と母のLINE連絡は中止された。2019年1月、父及び母は医師から余命1か月ないし3か月程度であると告げられた。父は、同年2月の調停期日においても面会に応じる姿勢をみせないので母は調停を取り下げたが、同年4月、再度、面会交流調停及び本件保全処分の申立てをした。
原審は、初回調停時の家裁調査官面接では、子は母との生活について否定的なイメージを並べる一方、「いつも楽しかったです」と述べるなど全体としては肯定的に受け止めていたが、2回目調停時の面接では拒絶的姿勢を強めており、祈祷師の言葉を引用する等その表現内容から、子自身の体験に基づくというよりも、父やその親族等の母に対する否定的な発言の影響によるものであるとした。そして、子が心身共に健全な成長を遂げるには子の認識を修正し母のイメージを修復していく必要があり(本案認容の蓋然性)、かつ母が余命告知を受けている状況に照らし面会の機会を早急に設ける必要がある(保全の必要性)として、月1回1時間程度、父に指定される者の立ち会い可能な面会交流を仮に定めた。父は抗告した。
[決定の概要]
原審判の認定説示を肯定するほか、「…未成年者の過剰とも言える拒絶的な反応をみれば、未成年者は、現在身の回りの世話を頼っている環境において、相手方の情愛を肯定的に受け止められる助言を得られておらず、むしろ、霊的なものによる攻撃等という容易に払拭することができない説明が未成年者に強い影響を及ぼしていることが認められる。未成年者の拒絶的姿勢が、身近な大人の影響によるものであることが、単なる抽象的な可能性であるとはいえない…将来、未成年者が母の情に思いを致す時が来るかもしれないことを考慮するとき、自ら面会交流を拒否したというようなことになれば、それは、未成年者に取り返しのつかない悔いを残してしまうことにもなりかねない」とし、「相手方にとって、面会交流の場で直ちに自らの思いが未成年者に伝わることは期待できず、むしろ未成年者の心情を受け止める機会にとどまることも覚悟すべきではあるが」とも述べた上で、母の病状に鑑みれば、早期に面会交流を実施すべきであるとして原審の判断を維持した。

3−2019.8.23
面会交流(間接面会)として、母から父に対し、息子ら(決定時19歳、16歳、14歳)の電子メールアドレス及びLINEのIDを通知することを命じた例
[東京高裁2019(令和元)年8月23日判決 判時2442号61頁、家庭の法と裁判27号52頁]
[事実の概要]
2016(平28)年の離婚時に父母(双方医師)は月1回の面会交流を合意した。離婚後の同年の面会時に子らが父に対して不信感を抱く出来事があり、以来、直接の面会が途絶え、父から面会交流調停を申し立て、審判に移行した。原審は直接交流を認めず、父から子らへの手紙送付、母から父への成績表送付、母から父への子らの近況写真の送付を内容とする間接交流のみを認めた。
父から抗告した。抗告審では子らは利害関係参加をし、子らの手続代理人が選任された。
[決定の概要]
原審で認めた手紙送付等のほかに、「相手方は、抗告人に対し、長男、二男及び三男の電子メールのアドレス及びLINEのIDを通知するとともに、抗告人と未成年者らがこれらの通信手段を介して連絡を取り合うことを認めなければならない。」とする主文を加えた。
以下は、理由の抜粋である。
「…直ちに直接の面会を再開するのは困難であるとしても、未成年者らとの関係修復を図るため、抗告人に対して、より簡便で効果的な連絡手段の利用を認める必要性が高いと考えられるし、それによる具体的な弊害が大きいわけでもない。したがって、未成年者らが抵抗感を感じるであろうことを十分考慮しても、電子メールやLINEを用いたメッセージの送受信による間接交流を認めるべきであり、そのために、相手方において、未成年者らのアドレス等の連絡先を抗告人に通知するのが相当である(もとより、抗告人においては、メッセージの送信によって、より未成年者らの反感を増すことのないよう、送信頻度やその内容については十分な配慮が求められる)。・・・未成年者らの現在の年齢や判断能力にも照らすと、現時点においてもなお面会交流を拒絶する未成年者らの反応は、未成年者らの自発的な意思に基づくものと見るのが相当であって、相手方の影響を強く受けたものであるということはできない。・・・抗告人の行動は、未成年者らにとって、自分たちをだまして実家に連れて行ったのではないかとの疑いを生じさせるものである上、その後、長時間にわたって自己の正当性を主張したことや、未成年者らの言い分に対して耳を傾けることなく、自らの考えを押し付けようとする面があったこと(なお、平成28年4月の面会の際には、「会えなくなったら、寂しくて自殺しちゃうかもしれないよ。自殺してほしい?死んでほしいと思う?」等の不適切な発言もされていた。)等からすると、未成年者らが抗告人との面会交流に消極的になったのにも一応の理由があるというべきである。…なお、未成年者ら手続代理人において、未成年者らに本決定の内容を告知・説明する際、裁判所は、抗告人と未成年者らとの直接交流が不要と判断したわけではなく、いずれ父親である抗告人との直接交流が再開されることが望ましいと期待したものである旨適切に伝えられるべきであることをあえて付言する。」
[ひとこと]
メールアドレスの開示を認める裁判例の公表は初めてである。どの事案でも認められるというわけではなく、本件の事情を総合判断してのことと思われる。

3−2018.12.21
直接的な面会交流が間接的な面会交流に変更された場合、変更前の不履行についても強制執行が信義則に反し、権利の濫用であって許されないとした例
[大阪高裁2018(平成30)年12月21日判決 家庭の法と裁判23号53頁]
[事実の概要]
控訴人(夫)と被控訴人(妻)は平成16年に婚姻し子2人(本判決時に約13歳、10歳)をもうけたが、平成25年に別居した。平成27年に控訴人と子らの直接面会の抗告審決定が確定し、さらに年1回の不履行につき5万円の支払いを命ずる間接強制決定が確定した(前件決定)。その後同年、被控訴人が事情変更に基づく面会交流調停を申し立て、平成29年に3か月に1回の間接面会及び直接面会につき決定確定後1年経過後に協議して定める旨の抗告審決定が確定した。子らは面会を拒絶している。
平成29年、控訴人による前件決定に基づく強制執行に対し、被控訴人が提訴した請求異議の訴えが認容された(本件の原審)。平成30年離婚判決が最高裁で確定した。平成30年、本件において、控訴を棄却し、原審により強制執行停止決定を認めた。
[判決の概要]
「…未だ強制金の支払がない段階で、債務不履行の前提となる作為債務それ自体が不存在となり、債務者に対し、心理的圧力を加え、債務の履行を確保するという目的が不存在となった場合にまで、常に強制金の給付義務の執行が許されると解されるべきではなく、債務名義に表れた請求権の前提となる基礎事実が変更された場合には、債務名義が確定決定であっても、その執行が信義則に反し権利の濫用となることがあるものと解される(最高裁判所昭和37年5月24日第一小法廷判決・民集16巻5号1157頁参照)。…控訴人は、前件決定が、控訴人自身の行動を原因とする未成年者らの拒絶という事情変更を理由とする本件決定により変更されたことを知り、かつ、被控訴人と控訴人との間の婚姻関係についても、本件離婚訴訟において離婚となり、被控訴人が離婚後の未成年者らの親権者とされたにもかかわらず、あえて、間接強制によって、前件決定の定める直接的な面会交流の債務の履行を求める本件強制執行を、なおも継続しようとしているものである。」
「…控訴人による本件強制執行は、本件決定の確定までに未だ支払がない強制金についての執行も含め、信義則に反し、権利の濫用であるというべきであるから、許されないと解すべきである。」

3−2018.11.20
母に対し子を父と面会交流させなければならない旨を命じる原審判に母が即時抗告したところ、原審判と同様の頻度、時間、引渡方法、代替日の定めにより父と子の面会交流を行うのが相当であるとしつつ、その際には、母が立ち会うことができる旨を併せて定めるのが相当として原審判を変更した事例
[東京高裁2018(平成30)年11月20日決定 LEX/DB25561709]
[事実の概要]
父母は2012年に婚姻した夫婦で、母の就職前は専ら母が子(2013年生)の世話をし、就職した2014年以後は父母で分担したが、母が時短を取った2016年4月以降は母が父が分担した子の世話も行うようになった。
2016年5月、父が子を連れて別居した。同年8月、父宅の近隣住民から、児童相談所に「父らが転居してから度々子の泣き声と男性の怒鳴り声が聞こえていた」等の通報があった。児童相談所が父宅を訪れたが、一時保護措置をとるまでの重篤性、緊急性は認められなかった。同日、母が申し立てた監護者指定・子の引渡しの審判事件の調査のために家庭裁判所調査官が父宅を訪れたところ、外見上、子の健康状態の問題はうかがえず、父の子に対する関わりは、指示的禁止的なものが散見されたが、父子が自然に触れあっている様子もみられた。父が子を単独で監護養育している間、父は母に子の所在を告げず、面会交流も実施されなかった。
母による子の監護者指定・引渡しの申立てを認める審判がなされた後、父が抗告したが、東京高裁は2017年2月21日、抗告を棄却した。同年3月13日、父は母に子を引き渡した。
同月18日、父は面会交流の調停を申立てをした。2018年4月10日、調停不成立となり、審判に移行した。
原審判である千葉家裁松戸支部2018(平成30)年8月22日審判は、父の連れ去りとその後面会交流もさせなかったことを不当としつつ、現時点においては連れ去りの具体的おそれはないとして、次のとおり面会交流をさせなければならない旨の審判をした。
1頻度 月1回(協議によるが、協議が調わない場合第2●曜日)
2各回の面会交流時間 5時間(協議によるが、協議が調わない場合午前10時から午後3時)
3引渡方法 協議によるが、協議が調わない場合A駅東口ロータリー
4代替日 やむを得ない事情により上記の日程で実施できない場合の代替日は協議によるが、協議が調わない場合は第3●曜日、第4●曜日の順に代替日とする
母が抗告。
[決定の概要]
子の年齢からすると、子の福祉に適うように面会交流を実施するためには、監護者である抗告人の協力が不可欠である。面会交流が継続的に行われるようにすることが何より大切であることから、抗告人が主張する相手方による子の連れ去りの懸念に配慮する必要がある。現在までに行われた面会交流は、抗告人手続代理人事務所において、抗告人が衝立越しに様子をうかがえる状態で2時間行われたにすぎない。抗告人の懸念や従前の面会交流の状況等を考慮すると、当面は、抗告人の立会いの下で実施することが望ましい。なお、第三者機関の利用については、費用が発生するものであり、婚姻費用等の支払いをめぐって面会交流が中断した経緯等から、適切とはいえない。
抗告人は連れ去りのおそれや面会交流中に相手方が子に対して不適切な関わりをするおそれがあるとして、直接の面会交流は否定されるべきと主張した。さらに、原審が子と相手方との面会交流場面観察等の調査を経なかったことにつき審理が尽くされていないとも主張した。決定は、直接の面会交流が子の福祉に反すると認められる事情はないし、具体的な面会交流の内容の定め方を工夫することにより連れ去りや不適切な関わりの懸念を解消できるとした。また、家庭裁判所調査官調査の中で相手方と子の関係等が明らかになっており、調査・審理が尽くされていないともいえないとし、いずれの主張も斥けた。
抗告人の立会いを認めたのは、抗告人の懸念に配慮したものであることから、立会いを認める面会交流の実施は、配慮が不要と合理的に解される当分の間に限られる。
相手方は、(1)親族等の参加や、(2)写真撮影や動画撮影を求めたが、決定は、(1)については法的根拠がないとし、(2)についてはトラブル防止の観点から避けることが望ましいとした。 抗告人は、面会交流中の(1)飲食物の提供、(2)プレゼントの交付の禁止を求めたが、(1)については抗告人の承諾を得ることが望ましいが、(2)は時期さえ特定すればよいとした。
そもそも、これらの相手方と抗告人の要望は、当事者が協議により定めるべき事項であり、審判をもって定めるのが相当という事情はないとした。
以上より、決定は、原審判の定めた面会交流の方法のほか、「抗告人は、前項の面会交流における相手方と未成年者との面会交流に立ち会うことができる」と加える形で変更した。

3−2018.10.11
父が母に子との面会交流を求めた事案において、直接交流も間接交流も認めなかった原審判に対する抗告を棄却した例
[大阪高裁2018(平成30)年10月11日決定 家庭の法と裁判113頁]
[事実の概要]
父(抗告人、1963年生、脳梗塞により2015年、第1種身体障がい者1級と認定)と母(相手方)は平成元年に婚姻した後、三人の子(1991年,1993年,2007年生(未成年者))をもうけたが、父が母や子(決定時10歳)に対し、包丁や模造刀を振り回し、手拳で殴打したり、裸にしたりと危険な態様で暴力を振るうことがあった。2017年、母が子を連れて別居し、同年、D V防止法に基づく保護命令の発令を受けた。
父は、その翌月、子(未成年者)との面会交流を母に対して求める調停を申し立てた。当初は、子(未成年者)は写真を送付する程度の間接交流には応じていたが、その後、試行的面会交流の申し出を断り、写真の送付も拒否するに至った。
原審判は、非監護親と未成年者との面会交流は、面会交流をさせることにより子の利益を害するなど特段の事情のない限り、実施するのが相当であるとした上で、本件においては、子(未成年者)が父の暴力的な態度を嫌悪しており、母からの影響を受けていることが否定できないとしても、年齢からして、自己の置かれた状況を把握し、その生活環境について希望を述べる能力を備えていること、父に対する否定的な感情を抱いているまま面会交流させることは、子の健全な成長に支障をきたすことになるとし、面会交流を禁止すべき特段の事情があるというべきであるとした。その上で、直接交流だけでなく、間接交流も相当でないとして、父の申立を却下したところ、父が抗告した。
[決定の概要]
抗告審も原審判を引用したうえ、子(未成年者)の意向を尊重することなく、自己の暴力等が未成年者に与えた影響に思いを致していない抗告人を未成年者と面会交流させることは、子の健全な成長に支障をきたすことになるとして、子(未成年者)と、抗告人との面会交流を禁止すべき特段の事情があるとして、抗告を棄却した。

3−2018.3.22
債務名義に基づく面会交流の不履行につき、母について不履行1回5万円の間接強制金を認めた原決定を変更し、不履行1回20万円とした例
[大阪高裁2018(平成30)年3月22日決定 判タ1455号68頁、判時2395号71頁、家庭と法の裁判17号41頁、LEX/DB25562114]
[事実の概要]
父母は2015(平27)年に別居し、母が子(平成25生)を監護してきた。父からの面会交流の申立てにより、2017(平29年)、面会交流につき、当初2ケ月に1回、第三者の立ち会いを認めるとの内容の高裁決定が確定した。母は父による調停申立て以降、一度も子を父に会わせなかった。父から間接強制執行の申立てをした。2018(平30)年、不履行1回5万円とする間接強制金の支払いが命じられ、父が抗告した。原決定後、母は2回程度面会を実施した。母は歯科医、高裁決定では年収約476万円と認定され、父は母に対し、婚姻費用分担金月21万円の支払いを続けている。
[決定の概要]
相手方に面会交流の義務を継続的かつ確実に履行させるためには、相手方の収入や経済状況(抗告人から支払われる婚姻費用を含む)等をふまえるべきとして、月20万円とした。

3−2018.2.13
父から申し立てられた面会交流を認める審判を実施に当たっての諸条件が調っていないと取り消し、申立てを却下した事例
[札幌高裁2018(平成30)年2月13日決定 判例時報2388号37頁、LEX/DB25562050]
[事実の概要]
父と母は別居中の夫婦であり、札幌家庭裁判所で離婚訴訟(本訴、反訴)が係属中である。母が子ら(2006年生、2008年生)を連れて別居した後、父は、母が生活費などのために預金口座から預金を動かしたことについて警察に通報したり(事情聴取で夫婦間のお金のやり取りであることを確認して調査終了)、母の「虚言癖」を証明するために、母と市と銀行を被告として104,000円と遅延損害金の支払いを求める訴えを提起し,その中で、三者が共謀して父が申請していない児童手当を詐取したと主張したりした(2017年6月、札幌簡裁は請求棄却)。母が申し立てた婚姻費用分担申立事件につき父に一定の支払いを命じた審判に、父は抗告、さらに抗告棄却決定に抗告許可申立をした(抗告不許可決定)。にもかかわらず、父は一定期間の婚姻費用の支払いをしていない。
父が面会交流を求めたところ、原審札幌家裁平成29年11月8日審判は、母は父に対し父が子らとそれぞれ2か月に1回程度面会することを許さなければならないとした。母が抗告。
「父母が別居した場合であっても、子が非監護親と面会交流することは、子が非監護親からこれまでと変わらぬ愛情を注がれていることを知り、親子の間の深い結びつきを感じ取る機会となるのみならず、子の養育及び発達について配慮すべき義務を有する非監護親にとっても、子の置かれた状況や心情などを認識し、当該責務をより的確に全うすることにつながるものといえる。そのため、子の利益が害されると認められる特段の事情がない限り、子と非監護親が面会交流をすることを禁止すべきではないのであって、未成年者らが面会交流に対して消極的意向を示しているとしても、子の福祉の観点からは、面会交流を実施する方向で調整して調整を図って実施するのが相当である」。
「原審で試行的面会交流が実施できなかったことにより、面会交流の実現可能性を見極め、面会交流の具体的内容や条件の検討をすることが困難となっており、当事者間の紛争の実情に鑑みると面会交流を実施できるだけの信頼関係と協力関係が形成されているとも言い難く、当事者間で面会交流の実施に向けた具体的協議をすることも困難である。そうすると、現時点で相手方と未成年者らとの面会交流を実施するにあたっての諸条件が調っているとは認められない。」
抗告人が試行的面会交流の実施を拒否したことは遺憾と言わざるを得ないが、その事実を面会交流を実施する方向での一事情とすることは、子らの福祉に照らし相当ではない。
以上より、原審判を取り消し、父の本件申立てを却下した。

3−2017.11.24
事案における諸般の事情に応じて面会交流を否定したり実施要領の策定に必要な配慮をしたりするのが相当であり、この考え方は、いわゆる原則実施論を論難する抗告人の主張と矛盾するものではないとした上で、面会交流の時間、第三者立会い等につき、原審判の一部を変更した事例
[東京高裁2017(平成29)年11月24日決定 判時2365号76頁、家庭の法と裁判23号68頁]
[事実の概要]
父Xと母Yは2009年に婚姻し、長男(2010年生)と二男(2013年生)をもうけた。2014年、Yは子らを連れてXと別居した。Xが申し立てた面会交流の審判につき、原審判(前橋家裁2017(平成29)年8月4日審判判時2365号82頁)は、近時の家裁実務で採用されているといわれる見解(面会交流の実施がかえって子の福祉を害するといえる特段の事情があるときは禁止されるが、特段の事情がなければ実施すべきとする見解)に立脚して、本件には面会交流の実施が直ちに子らの福祉を害するということはできないが、XYが激しい係争関係にあり、信頼関係が構築されていないことから、第三者機関を利用し、時間は当初短く、徐々に延長する等が適切として、@毎月1回、A時間は6回までは1時間、12回目までは2時間、13回目以降は3時間程度から徐々に延長する、B面会場所は12回まで某市内の公共施設内とし、第三者機関が受渡しの支援をし、C13回目以降は戸外面接として某駅で受渡しをする、などを命じた。
[決定の概要]
「父母が別居し、一方の親が子を監護するようになった場合においても、子にとっては非監護親も親であることに変わりは無く、別居等に伴う非監護親との離別が否定的な感情体験となることならすると、子が非監護親との交流を継続することは、非監護親からの愛情を感ずる機会となり、精神的な健康を保ち、心理的・社会的な適応の維持・改善を図り、もってその健全な成長に資するものとして意義があるということができる。
他方、面会交流は、子の福祉の観点から考えられるべきものであり、父母が別居に至った経緯、子が非監護親との関係等の諸般の事情からみて、子と非監護親との面会交流をすることが子の福祉に反する場合がある。
そうすると、面会交流を実施することがかえって子の福祉を害することがないよう、事案における諸般の事情に応じて面会交流を否定したり、その実施要領の策定に必要な配慮をしたりするのが相当である。
抗告人は、いわゆる面会交流原則実施論を論難するが、抗告人の主張の趣旨とするところは、上述した考え方と必ずしも矛盾するものではない。」
抗告審は以上のように述べた上、事実関係に踏み込み、相手方による子らへの虐待の事実は認められないとしつつ(相手方が抗告人を怒鳴ったところを長男は目撃したが、試行的面会交流の状況に照らし、長男がその経験により根深い精神的ダメージを受け、現在もその状況から回復していない等の状態は認められない)、同居中から未成年者ら及び抗告人の心身の状態、心情等に対する理解、配慮を欠く点があったこと、別居後の原審判中にも双方が代理人をつけているのに婚姻費用分担金の送金に際し子らとの面会交流を求めるメッセージを直接抗告人に送るなど、相手方には客観的な状況や抗告人の心情を踏まえないところがあったこと、原審の手続においても抗告人の人格を否定する言葉を用いて非難しいたずらに対立を助長しかねない主張をしたことをあげ、面会交流には要領(ルール)の遵守に加えて、未成年者ら及び抗告人の心情への配慮が求められるが、それができるかは懸念があるとして、その点は面会交流のありかたを検討する上で留意すべきものとした。
その上で、月1回の直接的面会交流を維持しながらも、1年6ヶ月(18回分)は第三者機関による立ち会い援助を要するとし、時間は半年1時間、半年後からの6回は2時間、13回目から一方は時間の変更の協議を申し入れることができる、等と原審判を変更した。
[ひとこと]
判例時報の解説には、平成20年前後頃からいわゆる原則実施論が台頭し始め、最近ではほぼ全国的に家裁実務に行き渡っているが、近時その弊害が指摘されるようになり、見直しが検討されるようになった、本決定は「原則実施論の見直しとも受け取られ、家裁実務に対する影響は小さくないものと思われる」と指摘している。
なお、抗告人Yは、恐怖性不安障害を生じているとの診断を受け、相手方Xの面会交流などの要求により、動悸、めまい、過呼吸などの不安発作が誘発され、面会交流は回避すべきとの診断書を提出していた。

3−2017.4.28
面会を拒否する意思を強固に形成している15歳の子との面会交流につき、父からの間接強制の申立てを却下した事例
[大阪高裁2017(平成29)年4月28日決定 判時2355号52頁]
[事実の概要]
相手方父と抗告人母は、2011(平成23)年に長女(当時9歳)の親権者を母と定めて離婚した。父から面会交流を求め、2013(平成25)年に、面会交流の頻度を隔月1回とする高裁決定が確定した。しかし、父は面会交流を拒絶されたため、間接強制を申し立て、母に対し、不履行1回につき10万円の支払いを命ずる決定がなされた。母は、2014(平成26)年、父に対し面会交流の禁止を求めたが、平成27年に、偶数月に1回の面会交流を認める決定がなされ確定した。これに基づき、父は間接強制の申立をしたのが本件である。他にも当事者間で面会をめぐる裁判が複数あるが、略する。
原審(大阪家決平成29.1.27)は、「面会交流における監護親(抗告人ら。GAL注:母は再婚し再婚相手と子は養子縁組している)の給付内容が特定されているから、特段の事情(例えば、不執行の合意)のない限り、間接強制も許される」として、面会交流の不履行1回につき30万円の支払を命ずる決定をした。
[決定の概要]
「未成年者は、2001(平成13)年(略)生まれであり、2017(平成29)年(略)(当時満15歳3か月)に行われた前記家庭裁判所調査官による意向調査において、相手方との面会交流拒否する意思を明確に表明し、その拒否の程度も強固である。そして、そのような意思は未成年者自身の体験に基づいて形成されたもので、素直な心情の吐露と認められるから、その意思は尊重すべきである(なお、相手方は、未成年者の意思は、頑なに面会交流を拒否する抗告人らの影響を受けており、本心とは評価できないと主張する。しかし、仮に未成年者が面会交流に消極的な抗告人らの意向を聞いているとしても、上記意向調査の結果によれば、未成年者はそれも踏まえて自らの意思で面会交流を拒否していると認められるから、未成年者の意思を本心でないとか、抗告人らの影響を受けたものとしてこれを軽視することは相当でない。」「また、間接強制をするためには、債務者の意思のみによって債務履行することができる場合であることが必要であるが、幼児のような場合であれば、子を面会交流場所に連れて行き非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが、未成年者のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上、未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ、未成年者は2017(平成29)年(略)より高等学校に進学しており、その精神的成熟度を考慮すれば、抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり、却って未成年者の福祉に反するということができる。したがって、本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。」などとして、間接強制の申立てを却下した。

3−2017.3.17
面会交流の実施が子の福祉に反することが明白になったとして、父子の面会交流を定めた前審判を変更し、新たな協議が成立等するまで直接の面会交流を禁止した事例
[名古屋高裁2017(平成29)年3月17日決定 判時2367号58頁、家庭の法と裁判23号95頁]
[事実の概要]
母Xと父Yは2005年に婚姻し、未成年者(2006年生)を設けた。Xは産前休暇からXの実家で生活するようになり、未成年者を出産した後もそのまま実家で生活を続けた。産前産後、YはXに暴力をふるった。2007年2月の授乳中の際にYから頭を叩かれた後、XはYと未成年者との面会交流に応じなくなった。
2007年6月にXYは調停離婚し、同年7月Yは面会交流の調停を申し立てた。同事件はその後審判に移行したが、複数回実施された面会交流の際、未成年者はYに触れられると必ず泣き出した。2008年、名古屋家庭裁判所は、未成年者が満3歳になるころまでは直接の面会交流を行うべきではないと説示して、Yの申立てを却下した。
2009年、Yは面会交流の調停を申し立てた。複数回の試行的面会が実施されたが、Xは試行的面会に起因する未成年者の心身の不安定等を理由に面会交流を当面認めるべきではないと主張した。2010年、調停は審判に移行し、名古屋家庭裁判所は、面会交流が未成年者に心理的な負担となっていること、その心理的な負担についてYの理解が不十分であると説示し、Yの申立てを却下した。
2012年、Yは面会交流の調停を申し立てたが、申立ての趣旨を間接交流に変更したため、Yが未成年者に手紙やプレゼントを贈るなどの間接交流が続けられた。しかし、Yが申立ての趣旨の変更を破棄して再び直接の面会交流を求めるようになったため、同年10月、調停委員会は事件の性質上調停をするのが相当ではないとして審判に移行させることなく「なさず」として調停をしない措置がとった。
2013年、Yが面会交流の調停を申し立て、調査官による未成年者に対する調査が実施されたり、家庭裁判所内の児童室での試行面会が行われたりした。試行面会当日の朝、未成年者に下痢や吐き気があり、実施前にXが児童室を出ようとすると嫌がり、鼻血を出した。2回目の施行時には、チックの症状がでた。3回目の試行面会の際は電子版オセロをしたが、途中で調査官が制止したにもかかわらずYが続け圧勝した。調停委員がYに対し未成年者が悲しそうな表情をしたこと等を伝えても、Yは腑に落ちない様子であった。4回目の試行面会には、Xは未成年者を連れてくることができなかったと述べた。その後審判に移行された後に実施した調査において、未成年者はYとの面会を拒否した。しかし、2014年、名古屋家庭裁判所は、年3回の面会交流を命ずる審判をした。XYともに抗告したが、名古屋高等裁判所はいずれも却下し、審判は確定した。
その後も、Xは審判の定める面会義務を履行しなかった。2015年2月、名古屋家庭裁判所は、不履行1回ごとに12万円の間接強制金を定める決定をした。その後の不履行状況を踏まえ、間接強制金の金額は、24万円(同年4月)、36万円(同年9月)、50万円(2016年3月)に変更する決定がそれぞれ出され、確定した。さらにYは間接強制金の再増額を求める申立てをしたが、名古屋家庭裁判所は更なる増額の申立てを却下した(同年5月)。
2015年、Yは、Xの代理人を不当に面会を妨げた等の違法行為、偽証そそのかしがあるとして、所属弁護士会に懲戒請求をした。
2015年7月22日、Xは2014年審判の定める面会を新たな協議が成立等するまでの間禁止することを求めて審判を申し立てた。原審判は、前審判の定める面会について、Xの立会いを認める期間が2017年3月までとしていた点を2018年7月までに変更するのみで、その余は変更すべき理由は認められないとした。
[決定の概要]
産前産後のXに対するYの暴力をXの手書きのメモ等から事実であると認めた。
未成年者の心理的負担をXによる悪影響であるとのYの主張を斥け、未成年者の心理的負担が生じている現状の受け止め等へのYの理解が乏しいとした。
Yは、間接強制の手続を踏むたびに、Xの所属する県教育委員会や勤務校校長に電話をかけている。聡明な未成年者は嫌がった自分のせいだ、間接強制のお金は自分が払うと言って取り乱したりしたことがある。間接強制金(少なくとも172万円)をXは親族から借りるなどして支払っており、母子の経済生活は逼迫している。
臨床心理学の大学教授が作成した意見書(Xが原審判において提出)は、面会交流を実施することは、未成年者を更に追い詰め、更に重い身体症状等を生じさせ、深刻化しかねないこと、自己肯定感の形成が疎外され、子の福祉に反するとした。また、原審判の調査官調査では、間接強制にまつわる未成年者の尋常でない様子について記したXの陳述書が既に提出され、未成年者も自ら「嫌がらせ」と述べたが、その点を念頭に置いた質問がなされなかった。
試行的面会交流中、及び、その前後の未成年者の心身の症状についても詳細に認定した上で、10回に渡る試行面会を経ても、未成年者のYに対する拒否的態度が寛解することはなく、その後も一層強固なものになっている。未成年者の心身に異常が生じる懸念を押してまで面会交流に臨んだXの努力にYは感謝を示さないどころか、挨拶をしない未成年者に詰問するなど不適切な対応をし、挨拶のしつけもできず監護親として不適格としてXを一方的に非難した。
未成年者の面会交流後の身体症状は、医師の診断によれば、ストレス反応、退行状態と診断され、面会交流を実施することが明らかに危険であるとされている。医師の診断書等の内容は、現に実施した際の弊害状況に合致しており、信用性が高い。それらを否定するYから提出された別の専門家による意見書は、未成年者と会った上でのものではなく、判断の基礎となる事実関係に偏りがあり、採用し難い。
以上より、遅くとも一部面会を実施した2016年12月時点で直接の面会交流の心理学的、医学的弊害が明らかになったとして、同月以降の前審判の面会交流を、Xとの間での新たな協議が成立するか、これを許す審判が確定し又は調停を成立するまでの間、面会交流を禁止すると変更した。他方、間接交流を否定する理由はないとして、XはYから未成年者のために来た手紙や品物を未成年者に渡さなければならないとした。

3−2017.2.8
債務者(夫・同居親)が確定決定に従わず、長女(12歳)との第1回の面会交流に応じず、その後の履行勧告の申立てがあっても確定決定に従わなかったため、債権者(妻・別居親)が申し立てた事案で、間接強制金として不履行1回につき100万円の割合による金員の支払を命じた原審を変更し、1回に月30万円の割合による金員の支払いを命じた事例
[東京高裁2017(平成29)年2月8日決定 判タ1445号132頁 家庭の法と裁判14号75頁 LEX/DB25546484]
[事実の概要]
東京家裁2016(平成28)年10月4日決定判時2323号135頁と同じ。
[決定の概要]
「相手方との面会交流を拒否する未成年者の意向には抗告人の影響が相当程度及んでいることが認められるから、抗告人は自ら積極的にその言動を改善し、未成年者に適切な働き掛けを行って、相手方と未成年者との面会交流を実現すべきであるが、従前の経緯や抗告人の原審及び当審における主張からすると、抗告人に対し少額の間接強制金の支払いを命ずるたけではそれが困難であると回されること、抗告人が年額2640万円の収入を得ていること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件における間接強制金を不履行1回につき30万円と定めるのが相当である(原決定は、本件における間接強制金を不履行1回につき100万円と定めたが、相手方の原決定前の不履行の態様等に照らして、そのような判断にも理由のないものではないものの、その金額は、上記事情を考慮しても余りにも過大であり相当でない)。」

3−2016.12.27
元妻とその再婚相手が、長男との面会交流を妨害したとして、不法行為又は債務不履行に基づき、元夫が損害賠償を請求した事案において、一部認容された事例
[熊本地裁2016(平成28)年12月27日判決 LEX/DB25545072]
[事実の概要]
元夫と元妻は2003年に婚姻し、2004年に長男をもうけたが、2006年に調停離婚した。この調停において、元妻は、元夫に対し、長男との月2回程度の面会交流を認めた。
元妻はAと2012年1月婚姻し、Aは長男と養子縁組した。
2012年5月まで、元夫は長男と定期的に面会交流をしていた。
2012年7月、Aは元夫に対し、元妻と連絡を取らないでほしいことと長男と会わせないと連絡した。元夫は熊本家裁玉谷支部に元妻に対する履行勧告を申し立てたが、面会交流は再開しなかった。そこで、元夫は、同年12月、同家裁に面会交流の調停を申し立てた。2014年1月、年3回の面会交流、事前にAが元夫に対して候補日をメールで連絡すること等を内容とする調停条項が成立した。ところが、Aから面会交流の候補日の連絡がなかったので、元夫は2014年2月、熊本家裁玉谷支部に履行勧告を申し立て、その後同年7月まで、Aとの間でメールのやりとりをしたが、面会交流は実現しなかった。
元夫は、2014年7月から2015年7月まで、7回にわたり、熊本家裁玉谷支部に対し、元妻に対する履行勧告を申し立てたほか、Aに対し電話やメールで連絡したが、元妻とAは元夫に対し、面会交流の日程調整につき連絡しなかった。
2015年8月、元夫は、元妻とAに対し本件訴訟を提起し、同年10月、長男との面会交流が再開した。
[判決の概要]
1 面会交流又はそのための協議を拒否したことが被告B(元妻)の不法行為又は債務不履行に当たるか。
被告Bは、原告(元夫)との間で、原告と長男の面会交流について第1回、第2回調停に従って、面会交流を実施するために日時等の詳細について誠実に協議すべき義務を負う。
2012年7月ころ、原告に対して面会交流をさせない旨伝えた上、第2回調停以降も、原告から被告Aを通して多数の候補日を提示されていたにもかかわらず、実施日を確定することなく、2014年7月、被告Aを通して原告にメールで連絡したのを最後に、原告からの連絡や多数回の履行勧告に応答しなかった。こうした被告Bの行為は、面会交流を実施するための協議を実質的に拒否した物であり、誠実協議義務に違反し、原告の面会交流権を侵害する不法行為に当たる。
被告らは、被告Aと長男の父子関係を確立する必要性や被告Bの出産後の心身の負担があったことを主張したが、それらは正当化するものではない。また、前者について、被告Bは原告に伝えておらず、被告Aと長男の養子縁組後も複数回面会交流が実施されたが、これにより面会交流が継続できない程度に長男が不安を覚えたことをうかがわせる証拠はない。長男は、2013年に実施された2回の調査官調査において、原告に会いたいと素直に述べた。
2 被告Aが原告に対して面会交流のための連絡義務を負っていたか。
被告Aは第2回調停において当事者や利害関係人となっていないものの、期日に出席した上で、被告Bの要望を受けて、面会交流のための連絡を取り合うことを了承した。その内容も連絡すべき時期が特定されるなど具体的である。実際に、被告Aは一定期間原告と連絡を取り合っていた。また、被告Aは長男の親権・監護権を行使すべき立ち場にあった。以上を踏まえると、被告Bの誠実義務とは別に、被告Aは、原告に対して、面会交流のための連絡義務を負っていたと解される。
3 損害及び過失相殺
(1)被告Bの誠実義務違反が継続した期間は、義務違反がなければ面会交流が実施されたとみられる2012年7月ころから面会交流が再開された2015年10月までの約3年3月間から、調停手続において協議されることが予定され、又は実際に協議されていた期間(2012年12月ころから2014年1月9日までの約1年間)を除いた約2年3か月間と認められる。
被告Aの連絡義務違反は、原告と最後に連絡を取り合った2014年7月から2015年10月までの1年3カ月間続いたといえる。
(2)被告らの義務違反は相当長期にわたること、その間、原告は被告らに連絡を取ろうと努めたほか、調停や多数回の履行勧告の申立てなど多大な負担を負った。特に、被告Bは2回にわたり面会交流について調停で合意しながら誠実義務違反に違反しており、原告の妻が面会交流を嫌がるものと考えて同人の妻に連絡したことなどを考えると、被告らの不法行為は、面会交流の実現を妨げる程度が大きい。そのため、原告は、長男が7歳から10歳に成長する約3年5か月間にわたり、面会が出来なかったものであり、原告の精神的苦痛は相当大きい。
原告は一時期養育費の支払を停止したことがあるが、被告Bの面会交流の拒否に誘発されたものであり、第2回調停後に遡って支払われたことから、損害額を大きく減殺する事情とはならない。
その他一切の事情を考慮し、被Bにつき70万円、被告Aにつき30万円の慰謝料が相当とした。
(3)被告らは、原告が養育費の支払いを一時停止したことのほか、長男を原告の妻と会わせたことをもって、過失相殺すべきと主張した。しかし、原告は基本的には長男と原告の妻が会わないように配慮していた。実際に、長男と原告の妻が会ったのも、2、3回に留まる。
本件が被告らの故意による事案であることも踏まえると、過失相殺をするのは相当ではない。
以上より、判決は、被告Bに70万円の賠償責任を、被告Aに30万円の賠償責任を命じた(内30万円の限度で連帯責任)。

3−2016.10.4
債務者(夫・同居親)が確定決定に従わず、長女(12歳)との第1回の面会交流に応じず、その後の履行勧告の申立てがあっても確定決定に従わなかったため、債権者(妻・別居親)が申し立てた事案で、間接強制金として不履行1回につき100万円の割合による金員の支払を命じた事例
[東京家裁2016(平成28)年10月4日決定 判時2323号135頁、LEX/DB25543836]
[事実の概要]
2000年6月妻(A国人)と夫(日本人)は婚姻し、2003年長女が誕生したが、2011年に、2月から6月まで妻子がA国に一時帰国している間に夫は家を出て別居した。妻は同年6月A国から帰国し、その後長女と同居していた。同年7月、夫は小学校から長女を連れ帰った。長女は転校した。同年9月、妻は転校先の小学校から長女を連れ出したが、警察が介入し、長女は夫に引き渡された。夫は転居し、長女を転校させて、現住所を明らかにしていない。同日後、面会交流は実施されていない。
妻は2012年9月、面会交流の調停を申し立てたが、2014年10月、不成立となり、審判に移行した。夫はこの間試行面会及び長女の調査に応じず、面会の拒否を主張し、間接強制になじまない旨主張した。2015年12月、東京家裁は月1回5時間の面会交流等を内容とする審判をした(LEX/DB25543834)。双方が抗告したが、2016年4月14日、東京高裁は、以下の内容の面会を認める決定をし、同決定は同月18日に確定した(LEX/DB25543835)。
「(1)月1回 第1日曜日 午前11時から午後4時まで
(2)債務者は、(1)の面会交流開始時間に、■駅の改札口において、債務者又は債務者の指示を受けた第三者をして債権者に未成年者を引き渡す。
(3)債権者は、(1)の面会交流終了時間に、■駅の改札口において、債務者又は債務者から事前に通知を受けた債務者の指示する第三者に対し未成年者を引き渡す。
(4)当事者や未成年者の病気や未成年者の学校行事等やむを得ない事情により、上記日程を変更する必要が生じたときは、上記事情が生じた当事者が他方当事者に対し、速やかにその理由と共にその旨を電子メールによって通知し、債権者又は債務者は、未成年者の福祉を考慮して代替日を定める。」
夫が第1回の面会交流に応じなかったため、妻は履行勧告の申立てをしたが、夫は従わなかった。
そこで、妻は、間接強制の申立てをした。
[決定の概要]
・債務者は、面会交流を拒絶すると申述し、その理由として、債権者のネグレクト、未成年者の連れ去り、未成年者の拒否を挙げた。
しかし、未成年者の意思については、確定決定が、当時提出された未成年者の手紙によってその意思は認定しえないとした事情が改められていない。他の拒絶する理由も、確定決定で退けられたことの繰り返しである。
・もはや任意の履行を期待することは困難な状態にあり、間接強制の方法によって実現を図る必要及び理由がある。
債務者の資力(2015年の年収は合計2640万円)その他を考慮し、不履行1回につき100万円が相当として、間接強制金の支払を命じた。
[ひとこと]
本件は抗告され、東京高裁2017(平成29)年2月8日決定で間接強制金は不履行1回につき30万円に減額された。

3−2016.8.31
別居中の夫婦間で、夫が妻に対し長女及び長男について面会交流を求めたところ、妻が主張する夫による子らへの性的虐待の存在を基礎付ける具体的事実は認められず面会交流を禁止制限する事由はないとして面会交流を認めた事案
[名古屋家裁2016(平成28)年8月31日審判 LEX/DB25544598]
[事実の概要]
夫と妻は2006年に婚姻し、長女(2010年生)及び長男(2012年生)をもうけた。妻は2013年11月、某市子ども課に夫が子らに暴力を振るっているのではないかと相談した。また同年8月ころから妻はAと交際を開始し、同年11月上記相談の後子らを連れて夫と別居した。
2014年10月、妻は子らの保育園の運動会において父が依頼した探偵が侵入したことを発見し、警察に通報した。
2015年1月、長女が夫を怖いと言い出したとして、妻が心療内科に受診させたところ、医師から司法面接を受けることを勧められた。同年2月、司法面接に関する専門研修を受講した者により、長女について面接が実施された。その上で司法面接実施機関は、長女が夫から性的虐待を受けたこと、被害は1回ではなかった可能性が高いとした(調査嘱託の結果)。
2014年8月、夫は面会交流の調停を申し立てたが、2015年7月不成立となり、審判に移行した。
[審判の概要]
相手方(妻)は、面会交流を禁止制限すべき特段の事情として、申立人(夫)の長女に対する性的虐待等の存在を主張し、司法面接における長女の供述はこれに沿う。しかし、「幼児児童は、一般的に、記憶の正確性に不十分な点がある上、他者から得た情報を自らの体験のように思い込んでしまう被暗示性や大人に対する迎合制が強いことから、その供述の信用性は、慎重に検討する必要がある。」
長女は面接時4歳である上、申立人との別居から1年8か月も経過した時点で行われた司法面接時点における記憶の正確性には疑問がある。面接者の質問が誘導的である等の問題があり、司法面接時の長女の供述の信用性は低い。また1回頭を叩かれたという供述はしつけの範囲を超える身体的虐待とみることもできない。
試行的面会交流時に長女が申立人に身体的接触を求めなかったことや緊張感等がみられたことは、父母の紛争下に置いて久しぶりに非監護親と面会する子どもに通常診られる様子であり、性的虐待等をうかがわせる事情とはいえない。
以上より、面会交流を禁止制限すべき特段の事情は認められず、長女と申立人との間の面会交流を認めるべきである。
申立人は月2回2泊3日の宿泊付き面会交流を求めているが、年齢的に低い子らが長時間の面会には耐え難いこと、交流が途絶えていた機関が長いことから申立人も子らの日ごろの様子を把握できていないことから、ただちに長時間の面会や宿泊を実施することは子の福祉に反することになりかねない。毎月1回の日帰り面会を認めた上、初回及び第2回は午前10時から午後2時までの4時間とし、その後は午前10時から午後5時までとすべきであるとし、詳細な要綱を定めた。また申立人が同居中子らの世話を積極的にしていたことから、同席者は不要であるとしたが、保育園や学校行事への参加は相当ではないとした。

3−2016.8.31
離婚の際に作成した誓約書に相手方が未成年らに二度と会わない旨の合意をし合意を変更しうるのは重大な事情変更の生じた場合等に限られる等との抗告人の主張を斥け、面会交流を認めた原審判を相当とした事例
[大阪高裁2016(平28)年8月31日決定 判タ1435号169頁、家庭の法と裁判11号96頁、LEX/DB25545790]
[事実の概要]
母(国籍・中国)と父(国籍・日本)は1991年に婚姻し、両名の間に、すでに成人である長女・二女・三女と四女(2008年生)、長男(2011年生)がいる(以下、四女と長男を「未成年者ら」という)。
母と父は、2013年、未成年者らの親権者を父と定めて離婚した。離婚の際に中国語で、「父と母は性格不和により離婚する。子と財産は全ていらない、男性側に帰属する。これを証明する」と記載した誓約書を作成した。離婚後父が未成年者らを監護養育し、母は未成年者らとの面会交流を求めたが、実現していない。
その後父は再婚したが離婚し、その後Aと再婚し、Aは未成年者らと養子縁組した。
母は、2014年大阪家裁に父を相手方として面会交流の調停を申し立てたが不成立となり、審判手続に移行した。大阪家裁平成28年3月17日審判判タ1435号170頁は、父に対し、毎月第2日曜日の午前10時から午後5時まで等と定める実施要領の通り未成年者らを母と面会させるよう命じた。
[決定の概要]
1 誓約書について
抗告人(父)は離婚の際の誓約書により相手方(母)が未成年者らに2度と会わない旨合意しているところ、同合意は、他の男性との生活を選んだ相手方が未成年者らと接触することにより未成年者らの健全な成長が阻害されることを防ぐという意味で合理性があり、家庭裁判所が同合意を変更し得るのは、同合意に父母の裁量の逸脱があった場合や重大な事情変更の生じた場合に限られる。そして同合意についてそのような事情は認められないと主張した。
しかし、裁判所は、そもそも誓約書が明確に未成年者らとの面会交流を否定する趣旨の内容のものとは認められないとした。仮に、抗告人主張の合意が成立したとしても、面会交流は子の福祉の観点から認められるものであるから、家庭裁判所が子の福祉に照らして必要と認めるときはその合意を変更することができ、抗告人主張のように限定された場合だけであるとはいえないとして、この点の抗告人の主張を斥けた。
2 養母と新しい家族関係を築いている点について
抗告人は、未成年者らが当事者参加人(抗告審から参加)と養子縁組し、新しい家族関係を築きつつあり、面会交流を行えば、かえって未成年者らに忠誠葛藤を生じさせるなどして、その健全な成長を阻害する危険性が高いと主張した。
この点について、裁判所は、原審の調査結果を踏まえて、離婚後未成年者らが相手方を恋しがる態度を示していたこと、四女は良い思い出をもっていること等から、未成年者らが非監護親である相手方からも愛されていると認識する機会を持つことは未成年者らの健全な成長に資するものである等として、相手方との面会交流を認めることは未成年者らの福祉に適うとした。抗告人や当事者参加人は親権者・監護者として、面会交流を円滑に実施されるように配慮する義務があるとして、抗告人の主張は採用することができないとした。
以上より抗告には理由がないが、養母が抗告審において手続に参加したことを踏まえて主文を「抗告人及び当事者参加人は別紙面会交流実施要領のとおり、相手方に未成年者らと面会させよ」と変更した。実施要領は、若干の表現の修正はあるが、毎月第2日曜の午前10時から午後5時まで等ほぼ原審の実施要領を維持した。

3−2016.5.17
監護親から非監護親に対して子どもと面会するよう求めた事案について申立てを却下した原審判を取り消し、差し戻した事例
[東京高裁2016(平成28)年5月17日決定 判タ1437号127頁、家庭の法と裁判10号89頁、LEX/DB25546368]
[事実の概要]
母と父は2012年に婚姻し、2014年に未成年者が生まれたが、2015年に父が家を出て以来別居中であり、母が未成年者を監護している。父は母からの連絡に一切応じず、実際の住所も明らかにしていない。母は、2015年、水戸家庭裁判所下妻支部に父に未成年者との面会交流を求める申立てをしたが、父が出頭しなかったため、調停の手続は終了し、審判に移行した後、2015年、原審判は母の申立てを却下した。
[決定の概要]
相手方(父)は、調停期日前、水戸家裁下妻支部から書面による意向照会に対し、抗告人(母)が円満に離婚に応ずることが面会交流の条件であるとした上、円満に解決を望むならば、第三者機関を利用した面会交流の実施も検討できるとし、保育園と連絡を取ったが、未成年者と会わせることは難しいと伝えられた旨回答した。
面会交流は、未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要であり、未成年者ができるだけ速やかに父親である相手方と定期的な面会交流の実施が望まれる。
面会交流が非常に重要であり、未成年者の利益を最も優先して考慮して実施すべきものであり、監護親・非監護親はその実施に向けて互いに協力すべきである。本件において、監護親である抗告人は面会交流の実施を強く望んでおり、非監護親である相手方も面会交流の実施自体には必ずしも否定的ではなく、第三者機関を利用した方法による実現の可能性も考えられる。調査官の調査等を通じて、合意形成を目指して両当事者間の調整を試みた上で、面会交流の実施の当否や条件等を判断する必要がある。
申立てを却下した原審判は相当でないとして取り消した上、水戸家裁下妻支部に差し戻した。
[ひとこと]
面会交流事件は、一般的には面会交流事案は非監護親が監護親に対して求める事案だが、本件は、監護親が非監護親に自己の監護下にある子どもと面会交流するよう求めている事案である。家庭と法の裁判10号によれば、調停段階では、審判に移行すれば却下される可能性が高いとして、取り下げを勧告していたとのことである。非監護親が監護親を拒絶する姿勢に鑑み申立てを却下した原審判は性急であり、調査官調査等を通じて当事者に丁寧に働きかけを行うべきであったということだろう。

3−2016.4.26
面会交流の方法について、時間を最初は比較的短時間に設定し、回数を重ねながら段階的に伸ばしていく方法をとるのが相当とした事例
[東京高裁2016(平成28)年4月26日決定 判タ1434号131頁]
[事実の概要]
母と父は2003年に婚姻し、長女(11歳)と二女(8歳)をもうけたが、2009年に父が入院したのを機に母は子らを連れて実家で生活し、父が2010年に職場復帰した後も別居を継続した。父と子らとの交流も途絶えたが、父が退院した後も入院中であるから会えないと子らは説明されてきた。父は2013年に円満調整調停事件及び面会交流調停事件を申立てたが、いずれも不成立となり、面会交流事件は審判手続に移行した。
原審(東京家庭裁判所)においては、調査官による子らの状況(心情を含む)の調査が実施され、子らは父の退院を喜んでおり、会うことを望んでいることが確認された。試行的面会交流は、母が家裁児童室での実施に反対したことから、母と双方の代理人の立ち合いの下、レストランで1時間会食するという方法で実施された。約5年5月ぶりの対面であり、双方非常に緊張し打ち解けた状態には至らなかったが、子の福祉に害するような事情は生じなかった。
その後の期日で2回目の面会交流の実施が合意されたが、実施予定日の前日、母は子らの拒絶を理由に実施を断った。母は、父母、父方母方双方の祖父母、子らの8人で定期的に会食する方法による面会を提案したが、父は、父と子らのみで月1回8時間の面会交流を行うことを求めた。
なお、父母は、2015年中の原審審理終結前に、子らの親権者を母と定めて協議離婚した。
原審(東京家審2015年11月12日判タ1434号135頁)は、母の提案する方法は、「極めて制限的であり相当ではない」、離婚した当事者が互いの両親をも同席の上子らと会食するという方法は子らにとって緊張を強いられる経験になるおそれがある、母の審問結果によれば、試行的面会交流後の子らの反応は父を拒否する明確な意思があるとまでは言いがたい等として、毎月第2土曜日6時間、母方の最寄り駅の改札付近での引渡しと特定した方法での面会交流を命じた。
[決定の概要]
久々に対面した試行的面会交流では、子らが気遣いして疲れてしまったりして、面会交流に消極的な気持ちを抱くことはありうるが、それは面会交流を重ねていき双方の心理的距離を縮めていくことで解消しうるのであり、面会交流を妨げる事情ではない。
しかし、試行的面会交流が1時間という設定で双方が緊張して打ち解けないままに終わり、実施前は面会交流に積極的だった子らが消極的な気持ちに転じてしまった心情等に配慮する必要があり、最初は時間を比較的短時間に設定し、回数を重ねながら、段階的に面会交流時間を伸ばしていくことが望ましいとした。
また、子らが父との面会交流に消極的な気持ちを有しており、当初不安を覚えることも予想されることから、初回及び2回目までは母の立会いを許すべきとした。
以上より、原審判を以下の通り変更した。
・抗告人(母)は、相手方(父)に対し、相手方と子らを以下のとおりの方法により、面会交流させなければならない。
1 頻度 月1回(毎月第2土曜日)
2 時間 平成28年7月まで 午前11時から午後1時まで
     同年8月から同年11月まで 午前11時から午後3時まで
     同年12月以降 午前11時から午後5時まで
3 抗告人は、初回及び第2回の面会交流に立ち会うことができ
 る。
4 抗告人は、午前11時にA駅(抗告人の最寄り駅)改札付近にお
 いて、子らを相手方に引き渡し、相手方は、前期2の各面会交流終了時刻に同改札付近において、子らを抗告人に引き渡す。

3−2016.2.5
審判未確定の段階における面会交流権侵害に基づく損害賠償請求を斥け、面会交流審判の記録中プライバシー関係部分を第三者に配布等したことの人権侵害と認め、同文書の配布等の差止請求を認めた事例
[東京地裁立川支部2016(平成28)年2月5日判決 判時2323号130頁]
[事実の概要]
父と母は2005年に婚姻し、2008年に子どもAが生まれたが、2014年にAの親権者を母と定めて調停離婚した。離婚調停において、父とAとの面会交流についても協議されたが合意には至らず、調停条項には面会交流の取り決めはなされなかった。父は2015年再婚した(再婚相手との間に2014年に子が生まれた)。
2014年父はAとの面会交流を求める調停を申立てたが、2015年不成立となり、審判手続に移行した。同年、東京家裁は、2ヶ月に1回、土曜日又は日曜日に、初回1時間、2回目以降3時間、第三者機関立ち合いの下の面会交流を命じた。父が、毎月2回の宿泊を伴う面会や長期休暇期間の5泊6日の宿泊を伴う面会等を求めて即時抗告し、係属中である。
父は、面会交流審判記録中の医師意見書その他をAが通学する小学校の担任教諭宛に郵送したほか、小学校にも主張書面等の記録を郵送し、母の親戚に対しても、審判の記録を郵送した。
母及びAは、上記配布等の行為はプライバシー侵害だとして差止の仮処分決定を得た。
父が、母に対し、父とAとの面会交流に応じないなどとして、不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用550万円及び遅延損害金の支払いを求めて本件訴訟を提起した(第1事件)。
母とAは、父に対し、面会交流審判事件の記録等を第三者に開示することの禁止を求めるとともに、第1事件請求が不当訴訟である、第三者への開示がプライバシー権侵害や名誉毀損に該当する、父には調停審判における誠実義務違反があるなどとして、不法行為に基づき慰謝料及び弁護士費用合計330万円のうち100万円及び遅延損害金の支払いを求めた(第2事件)。
[判決の概要]
1 被告(母)の不法行為の成否(第1事件)
原告(父)は、被告(母)が別居以降約3年の間に裁判所における試行面会を除き面会交流を1回しか認めていないことについて、子どもの権利条約9条3項の親子不分離原則に反する状態である等と主張した。
判決は、本件のように面会交流の審判が未確定であるうちは、面会交流の権利や義務は抽象的なものに留まる等として、面会交流ができなかったからといって直ちに不法行為を構成するということはできないとした上で、本件は原告の即時抗告により面会交流の審判は未確定であり、原告の面会交流の権利が具体的に決定されたものとは認められない。また、毎月2回の宿泊や長期休暇期間の5泊6日の宿泊を伴う面会交流など過大な要求を原告がしていることが、面会交流が実現していない原因の一つになっていることからして、面会交流が実施されないことにつき、原告にも相応の責任が認められる。原告の求める面会交流の内容を見る限り、面会交流が一次的には子の福祉のためにあることについての配慮が十分なされているとは考えにくい。原告が根拠とする学術資料や意見書が本件事案に適切か極めて疑問である。「面会交流ができないことの責任をすべて被告に転嫁するような原告の態度が許容されるものではない」。
以上より、被告に不法行為は成立しない。
2 第1事件訴訟の不当性
第1事件訴訟の不当性を理由とする被告の損害賠償請求は斥けた。
3 原告によるプライバシー侵害及び名誉毀損について
被告による第三者への記録の開示については、正当な理由なく、プライバシー権の侵害を構成するとした。
原告は、いずれも公開されている上、送付された相手方もそれぞれに守秘義務を負っているから、プライバシー権の侵害にあたらないと主張したが、判決は、「家事事件は非公開であり(家事事件手続法33条)、極めてプライベートな問題を取り扱うことから、事件記録の謄写は、当事者又は利害関係を疎明した第三者に限られ、事件関係人である未成年者の利益を害するおそれがある場合などには謄写が認められないこともるなど(同法47条4項)、安易に第三者に公開することは予定されていないし、守秘義務を負う者であっても、その開示により、当事者や当該第三者との信頼関係に影響し、当事者に精神的苦痛を与えるなど、様々な弊害が想定されることからすれば、到底正当化されるものではない」。
また、本件送付記録等に添付された書簡には、「Aが虐待寸前の不適切な養育環境におかれて、過酷なストレスに曝されている可能性がある」、「将来、Aが、自傷行為、不登校、摂食障害、非行、引きこもりなどに陥るのではないかと、私は危惧しております」などの記述があり、被告の社会的評価を著しく低下させるものであり、被告の名誉を毀損することは明らかである。
損害額については、慰謝料30万円及び弁護士費用3万円の33万円をもって相当とした。
4 誠実義務違反について
誠実義務(家事事件手続法2条)は訓示規定であり、その違反により直ちに法的効力が生じるものではない、等として、被告の主張には理由がないとした。
5 人格権に基づいて差止請求権について
原告の行為は被告に対するプライバシー権の侵害及び名誉毀損を構成するとともに、Aのプライバシー権をも侵害する。こうした行為により、被告とAに平穏な生活の維持に関して著しい損害を生じるおそれが否定できないところ、原告は、被告から抗議を受けた後も、仮処分決定がなされるまで、自己の行為を正当化して継続したのであるから、法的に禁止されない限り、行為を継続するおそれは大きいとして、被告らの人格権に基づく差止請求を認容した。

3−2016.2.1
未成年者が面会交流と知り自宅を出るのを嫌がったために実施されなかった事例で、債務者が未成年者に適切な指導助言することによりその福祉を害することなく義務を履行することが可能であるとして間接強制金の支払を定めた事例
[大阪家裁2016(平成28)年2月1日決定 判タ1430号250頁]
[事実の概要]
大阪家裁は、2015年、債権者と債務者に対し、長男C(2008年生)と債権者の面会交流に関し、月2回の面会交流を履行すること等を命じる審判をした。上記審判に双方が即時抗告したが、大阪高裁は抗告を棄却し、上記審判は確定した。
上記審判に先立つ調停手続において、大阪家裁で試行的面会交流が問題なく実施され、審判手続において、調査官は長男に面接した上、父子関係に問題なく、面会交流を実施することが望ましい旨記載した調査報告書を提出した。
審判の確定後、2015年の○月○日及び○日に面会交流が実施されることとなり、債務者が上記審判で定められた引渡場所に長男を連れて自宅を出ようとしたが、長男が嫌がったために、連れて行くことができなかった(会話録音テープが提出されている)。
2015年、債権者は間接強制の申立てをした。
[決定の概要]
・「債務者は、面会交流の実現のために誠実に対応しているが、現実に未成年者を引渡場所まで連れて行くことさえ困難な状態にある旨主張する。」
・「しかし、約2年前にはなるが、平成26年○月○日に実施された債務者と未成年者との試行的面会交流におうて、未成年者は楽しそうに問題なく債権者と面会交流ができており、約1年前の平成27年○月○日に家庭裁判所調査官が未成年者と面接した上で、早期に面会交流を実施することが望ましいとする調査報告書を提出していることからすると、未成年者を監護する親としては、現在7歳である未成年者に対し適切な指導、助言をすることによって、未成年者の福祉を害することなく義務を履行することが可能であると考える。」
・「(なお、現在の未成年者の状況等から前件審判で定められた面会交流の方法が適切でない場合には、債務者において申立てを予定している面会交流の調停事件等の手続において、より適切な方法を検討すべきである)。」
債務者は年収72万円、債権者が債務者に支払う婚姻費用分担金月額金15万円であることを考慮し、不履行1回につき4万円が相当として、間接強制金の支払を定めた。

3−2016.1.20
面会交流に関する協議の連絡方法をメールではなく専ら書面郵送を用いることにしたことにつき、夫から妻とその代理人に対する損害賠償請求を認容した原判決の敗訴部分を取消し、夫の請求をいずれも棄却した事例。3−2015.3.27の控訴審。
[福岡高裁2016(平成28)年1月20日判決 判時2291号68頁]
[事実の概要]
熊本地裁2015(平成27)年3月27日判決(判時2260号85頁)と同じ。
夫も妻も控訴した。
[判決の概要]
判決は、原判決と同様に、第1調停事件調停成立前の不法行為に基づく慰謝料請求は退けた。
第1調停事件成立以降の不法行為について、原判決と同様に、「面会交流が子の福祉のために重要な役割を果たすことに鑑みれば、当事者は、本件調停に従って面会交流を実施するため日時等の詳細について誠実に協議すべき条理上の注意義務(誠実協議義務)を負担すると解するのが相当である。そして一方当事者が、正当な理由なく一切の協議を拒否した場合や、相手方当事者が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申入れに対する回答を著しく遅滞するなどして社会通念に照らし事実上協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に違反し、相手方当事者のいわゆる面会交流権を侵害するものとして、相手方当事者に対する不法行為を構成するというべきである」とした。
そして、9月末までの間は誠実協議義務違反があったとは認められないとした上で、原判決が不法行為が成立するとした10月以降についても、9月以前にY2がY2の事務所で子の受渡しをする面会交流案を提示したがXが受け入れず、自らも具体的な面会条件の提案をしなかったことも早期の実現ができなかった一因と認められること、感情的対立等により協議自体がますます困難になっていたこと(Xからのメールも激越な内容になる等協議の前提となる信頼感が失われたこと)、合意には至らなかったものの10月21日まで面会交流の協議がなされていたこと、Y側から12月にも面会交流の提案をしたがY1の父親の同行をめぐって実施されなかったこと(面会が実施されなかったのは、XがY1の父親の同行の許否に固執したことも一因であること)等に照らし、Y2にはその手法に不適切なところはあったものの、不法行為責任を生じさせるような誠実協議義務違反があったと認めることはできない。
メールによる方法は便宜であるが、「書面郵送による連絡方法を採ることが、面会交流の実質的拒否に匹敵するほどの遅延を招くものとは通常は考えにくい。」面会交流が実施されなかった原因は感情的対立等から協議が困難になったことによるもので、書面郵送による連絡方法をとったことによるものではない。また、慎重さを期すために書面による方法が適切な場合もある。本件も回答の可否の判断および内容を直ちに回答することが困難な事項も含まれていた。
Xは控訴審でY1が二男を連れ去ったこと等を不法行為とする主張を追加したが、判決は斥けた。

3−2015.10.1
原告X(男)が内縁関係にあった被告Y1(女)とY1と婚姻した被告Y2(男)に対し、XとY1間の長女A及びY1とY2間の長女Bとの面会交流を妨害され精神的苦痛を受けたとして、共同不法行為に基づき連帯して損害賠償金の支払いを求め、請求が一部認容された事例
[東京地裁立川支部2015(平成27)年10月1日判決 LEX/DB25541417]
[事実の概要]
(1)Y1は、2002年にZ(男)と婚姻し、同年長女Bをもうけたが、2005年4月にBの親権者をY1と定めて協議離婚した。Y1は2005年3月頃から、X宅でXと同居を開始し、同年長女Aが出生した。ZとAとの親子関係不存在確認の審判後、原告はAを認知した。XとY1は、婚姻届けは提出しなかったが、夫婦としてA及びBとともにX宅で生活していた。
(2)2007年4月、Y1は、A及びBを連れてX宅を出て、Y2と同居を開始した。
XとY1は、別居後に話し合いをした結果、A及びBをXの実家に一時預けることとなった。Xは、2007年7月、Y1の了解なく、A及びBをXの実家からX宅に引き取り、養育するようになった。
(3)Y1は、2007年9月、Xを拘束者として、A及びBの引渡しを求める人身保護請求を申立て、審問期日にA及びBを出頭させることを命じる等の人身保護命令が発令された。
XとY1は、2007年10月「Y1は、Xから面会交流の申し入れを受けたときは、その日時場所方法を誠実に協議するものとする。」との条項を含むA及びBの引渡しに関する合意書(本件合意書)を作成した。Xは2007年10月、Y1に対し、A及びBを引渡し、Y1は人身保護請求の申立てを取り下げた。
(4)Y2は、2007年10月、Y1と婚姻し、A及びBと養子縁組をした。
(5)XはY1とY2に対し、@Y1が本件合意書及び審判の内容に違反し、2度も面会交流の機会を奪われたこと、A本件合意書によって予定された話し合いのための調停手続を無視した行為は、Xの面会交流を妨害する違法なものであること、BY1らは、Y2がAと養子縁組した後、自らの都合で面会交流を度々妨害し、2013年からは養子縁組を背景に不履行を正当化していることからすると、同養子縁組及びY1の代諾行為は、Xの親としての地位をあえて失わせる目的として悪用されたものであり、交流妨害の一環としてなされたものであることから、これらの行為はXの面会交流を妨害する不法行為に当たるとして、連帯して慰謝料300万円、2回の面会交流の不履行による交通費とY1らが欠席した調停期日等の交通費2万1140円、弁護士費用15万7500円を請求した。
[判決の概要]
@ Aとの面会交流に係る不履行について
Y1らは、平成25年7月15日及び同年〇月〇日の2回、Xに対し、Aと面会交流をさせなかったことが認められる。これに対して、Y1らは、上記2回の面会交流を実施できなかったのは、Xが、A及びBが拒否しているにもかかわらず、Bらの住居地に近いi駅にこだわり、Y1らが代替案を出しても全く譲らなかったことから、引渡場所について合意に至らなかったためであり、面会交流を行わなかったことには正当な理由があると主張する。しかし、いずれの面会交流についてもこれを行わなかったことについて正当な理由があるとは認められない。
A Bとの面会交流に係る不履行について
XとBとの間には父子関係は存在しないものの、本件においては、「BがAと共に原告と面会交流をすることを希望するときは、Y1らは、Xに対し、XがBと面会交流することを妨げてはならない」との審判がなされている。そのため、Y1らがかかる審判に反する行為、例えば、Y1らが、Bに対しXとの面会交流を求めないように積極的に働きかけたり、BがXと面会交流を希望しているにもかかわらずY1らがこれを妨害していると認められる場合には、Xに対する不法行為を構成すると解するのが相当である。しかしながら、Y1らにそのような事実は認められず、他にXの主張する不法行為を認めるに足る証拠はない。
B 養子縁組行為及び代諾行為について
XとAが、平成25年7月15日及び同年〇月〇日の2回を除いては、面会交流が履行されていることからすれば、AとY2との養子縁組行為及びY1の代諾行為自体が、Xの面会交流権を侵害するためになされたものとは認められない。
C 以上より、XのY1らに対する請求は、慰謝料20万円、交通費4200円、弁護士費用2万円の限度で認められる。

3−2015.8.7
離婚後父が母が監護する長女との面会交流を求めた事案において、父母相互の不信感は相当深刻であり、父が母や長女の心身の状況等に配慮した面会交流を期待することもできない等として、申立てを却下した事例
[仙台家裁2015(平成27)年8月7日審判 判時2273号111頁]
[事実の概要]
父と母は2001年に婚姻の届け出をし、同年に長男を、2007年に長女をもうけた。父は母に対してたびたび暴言を言ったり暴力をふるったりし(長男にも暴力をふるった)、母は警察等に相談しながら別居の準備をし、2011年、子らを連れて自宅を出て、以後子らを監護養育している。2012年に母が申し立てた保護命令が発令されたが、発令期間中も父は母や子らにたびたび接触し、同年、再度の、2013年に再再度の保護命令が発令された。2014年、大阪家庭裁判所は母が申し立てた離婚等請求を認容した(子らの親権者は母、慰謝料200万円)。
離婚訴訟係属中の2014年ころから父は長女との面会交流を求め、母が約束を破ったら「罰則」として金員を支払うように述べることもあった。同年実施した面会交流中、父は母の養育を非難するようなことを述べた。面会交流後、長女は車内で嘔吐した。父は母に直接接触したり電子メールを送信するなどして長女との面会交流を強く求め、母の代理人弁護士にも強い口調で迫ったり、長女の通う保育所や小学校へも電話することがあった。面会交流調停申立て後も、父は母の自宅付近にあらわれて長女に話しかけたり、約束なく母の代理人事務所に赴き、インターホン越しに強い口調で問いただしたりした。また裁判所への提出書面に、母のことを「異常者」「児童虐待者」と書いたり、母の代理人に、長女の待ち伏せやつきまとい等を予告するような書面を出したりもした。
父は、毎週末午前10時から午後5時まで、隔週で宿泊付き面会交流、三連休中の大型連休の時は2泊3日以上、春休みと夏休みには2泊3日以上を2回、夏休みには2泊3日以上を毎週実施することなどを求めた。母は、離婚に至る経緯や長女の健康状態等には慎重な配慮が必要であるが、父が考慮しないこと、長男に対する暴力や心情にも配慮しない言動を繰り返していること等から、長女との直接の面会交流には応じられないとの意向である。 母はうつ病と診断され投薬治療を受けており、生活保護を受給している。長女はてんかん及び精神運動発達遅滞との診断を受けており、運動能力、精神能力ともに3歳レベルの発達段階である。
[審判の概要]
一般的には子の福祉の観点からすれば、非監護親との適切な面会交流は望ましいが、実施することがかえって子の福祉を害する特段の事情があるときは、禁止・制限されなければならない。
本件は父母間の紛争が長期間にわたり強い緊張状態が続いている。父は母の心情を慮ることなく強い言辞で非難し続けたり、母の意に反すると認識しながら再三にわたって母や長女に話しかけたりしてきた。母はこれまでの経緯等から精神的に疲弊しており、父に強い不信感を抱いている。面会交流の実施には監護親と非監護親の協力関係が必要不可欠であるが、本件ではその関係を築くことが期待できない。また、長女が葛藤に陥りやすい。父のこれまでの言動等から、第三者機関の関与があっても円滑な面会交流の実施は期待できない。また、母が父において面会交流のルール等を遵守しないのではないかとの疑いを抱くのも不自然不合理ではない。他方、父は自分の言動が母子に与える影響を認識してはおらず、母の監護を尊重し、母と長女の心身の状態等に配慮した面会交流を期待することもできない。
以上より、本件申立ては相当ではないとして却下した。
[ひとこと]
特段の事情があるときに限り面会交流は禁止制限されるべきであるとの家裁実務の考え方にならった上で、事案の個別事情を丁寧に認定して申立てを却下した判断である。

3−2015.6.12
監護親がDVを原因とするPTSDを発症しており、非監護親と子らの面会を控えることが望ましいとする意見書が提出されている場合に、面会交流への協力で監護親の負担を増大させることが子らへ悪影響を及ぼすことを考慮して、直接交流を認めず、間接的な交流に止めた事例
[東京高裁2015(平成27)年6月12日決定 判時2266号54頁]
[事実の概要]
父母は2007年に婚姻し、同年長男を、2010年二男をもうけたが、2011年に母が二子を連れて家を出て、以後別居している。父は母との口論の際に、立腹してガラスのコップを割る、携帯電話を投げつけて壊すなど物に当たることがあり、長男が割れたコップの破片で怪我をしたこともあった。父は、母に対し、2011年、約1週間の安静等を要する右大体打撲の怪我を負わせた。母が家を出たのはその翌日である。
2011年、母は、離婚調停(後に不成立)と婚姻費用分担調停(後に審判に移行し、父が即時抗告、東京高裁は抗告を棄却した)を申し立てた。同年、父は、監護者指定の審判と審判前の保全処分、子らの引渡しを求める審判(保全処分以外は後に調停に付され、再び審判に移行した後、父は各申立てを取り下げた。保全処分も後に取り下げた)、面会交流調停を申立てた。同年、母が申立てた保護命令(被害者及び両親に対する接近禁止等)が発令された。面会交流調停申立事件が係属していたことから、母は子に対する接近禁止命令の申立てを取り下げた。父は保護命令に抗告したが、2012年、東京高裁は抗告を棄却した。
2012年、母は離婚請求訴訟を提起し、2013年、父が反訴を提起した。
面会交流の調停の際に作成された調査報告書には、「第三者機関の支援が必要な事案と思われる」としながらも、「面会交流を控えなければならないような未成年者の事情はうかがえなかった」と記載された。
母は、心的外傷後ストレス障害により通院加療中である。その原因は、DVや暴言など、父の言動を想起させる裁判が継続していることにある。
子らに対し2回にわたり面会した精神科医師Aは、子らについて心因反応(不安、抑うつ状態)と診断し、その原因は、安心して生活できる環境と母の精神的安定が、父の言動により保証できなかったことにあるとし、面会交流は控えることが望ましいとの意見書を作成した。精神科医師Bは、長男について心因反応(情動不安定状態)、二男については心因反応(不安状態)と診断し、面会は控えることが望ましいと判断する意見書を作成した。
医師Cは、長男と二男は情緒障害であり、外来通院を要すると診断している。
原審の審判手続において、母は間接交流の実施を提案しつつ、その前提として、子らに対し、父が物に当たったり、大声を出したことがよくないことであり、父として反省している旨手紙にして渡してほしいと要望した。これに対し、父は子らの前で大声を出した事実を否認し、手紙を出す意義が理解できないなどと、激しく母を非難する姿勢を崩さなかった。
原審(東京家審平成27年3月27日判時2266号58頁)は、直接交流を認めず、間接交流に止めるものとした。父が抗告。
[決定の概要]
「面会交流は、子の福祉の観点から決せられるべきであり、子の福祉に反すると認められる特段の事情のある場合には、認められるべきではないことが明らかであり、かつ、上記特段の事情の有無は、裁判官の主観的な判断ではなく、客観的で合理的な判断によって決せられるのであるから、裁判官が子の福祉を口実にどのようにでも介入できるということにはならない。また、共同親権者であるからといって、子の福祉の観点から子との面会交流が制限されるということはできない」。なお、決定時点ではすでに父母は裁判離婚し、母が単独親権者であった。
相手方(母)がPTSDであること、長男は同居中の父の暴力や暴言によって引き起こされた不安もある程度記憶として残っているものと考えられ、これに相手方の状況も間近に見ることによって心因反応を発症するようになったものと推認される。「このような相手方、未成年者らの状況を踏まえると、将来の良好な父子関係を構築するためには、相手方の負担を増大させてまで直接交流を行うことは、かえって未成年者らの抗告人に対するイメージを悪化させる可能性があるため相当ではない」。
調査官の調査報告書の「面会交流を控えなければならないような未成年者ら側の事情がないという意見は、上記複数の精神科医の診断結果を左右するものではない」。
「抗告人(父)が、直ちに、未成年者らの福祉に沿うために、相手方に対する暴力や暴言について謝罪し、相手方との関係の改善を図ろうとする姿勢に転ずることは期待することができないので、間接交流によって相手方の負担を増大させることで、未成年者らに悪影響を及ぼすような事態を生じさせることは避けなければならない」。
母に、2か月に1回父からの未成年者らへの手紙を速やかに渡すこと、4か月に1回、未成年者らの写真2枚(顔及び全身を写したもの各1枚)の送付を命じた(原審は写真の送付のみだったので、一部変更)。
[ひとこと]
家裁では面会交流原則実施論が強化されているといわれるが、本決定は改めて、面会交流は子の福祉の観点から決せられるものであり、子の福祉に反すると認められる特別の事情がある場合には、面会交流は認められるべきではないと明言した。そして、子らと1回面会した調査官の意見があるも、複数の精神科医が子らを複数回診察した意見をより重視して判断したものとしても、参考になる。

3−2015.3.27
面会交流に関する協議の連絡方法をメールではなく専ら書面郵送を用いることにしたことにつき、「意図的な遅延行為」であると推認されるとして、夫から妻とその代理人に対する損害賠償請求を認容した事例
[熊本地裁2015(平成27)年3月27日判決 判時2260号85頁]
[事実の概要]
原告X(夫)は被告Y1(妻)に対し、2007年の婚姻直後から暴力をふるうことがあり、Y1は2008年9月ないし10月から2009年まで実家に帰り別居状態が続いた。Xが暴力をふるわないと約束したこともあり、XとY1は同居を再開し、その後長男(2010年生)、二男(2012年生)が出生した。しかし、Y1は二男を連れて実家に帰り、別居状態となった。
2012年、Y1は夫婦関係調整調停事件(離婚)を申し立てた(第1調停事件)。なお、当時Y1は代理人を選任していなかった。2013年4月、第1調停事件につき、XY1が当分の間別居すること、婚姻解消等の間まで長男の監護者をX、二男の監護者をY1とすること、互いに月2回の面会交流を内容とする調停が成立した(なお、面会交流の連絡方法については取り決めはない)。
同年4月中旬及び6月に面会交流が行われたが、7月6日に予定されていた面会交流はY1が断り、実施されなかった。その前日の7月5日にY1がXにY1の両親を同行する旨伝えたが、XはY1の父が4月に長男に対して「守ってやれんでごめんな」と発言したこと等を暴言として、暴言を反省し改善することを約束する旨の動画をメールに添付して送信することを要求し、それをY1が断ったという経緯がある。また、6月の面会交流の際には、Y1と長男の後ろを、二男を抱いたXが歩いて行った。
同年8月、Y1は弁護士である被告Y2を代理人として、夫婦関係調整(離婚)調停の申立てをした(第2調停事件)。
同月12日までに、Xは第1調停に基づく面会交流を実施するよう履行勧告の申立てをし、同月25日までにその旨の勧告がされた。
同月9日、Y2はXに電話し、Y1の体調不良により同月10日の面会交流はできないことを伝えた。その後、Y2はXに対するメールにおいて、第2調停事件の期日にて面会交流の方法について話し合いたい旨申し入れた。
同年9月24日、XはY2に対し、面会交流を実施するよう求めるメールを送信した。同月30日、Y2は、Xに対し、実施を了承するが、@A市内(Y1と二男が居住する市。Xと長男が居住するB市まで休憩も含めて片道4時間半かかる)で実施すること、AY1とXが直接顔を合わせないようY2の事務所で子の引渡しをすることを提案するメールを送信した。Xはこの提案に直接答えず、Y2が7月6日以降面会交流が実施されていないことについて関与しているのかどうかを質問するメールを送信した。Y2は、面会交流について改めて書面で提案するというメールを送信し、以後メールのやりとりを打ち切り、専ら書面郵送の方法でXと連絡するようになった。
Xは、Y1とY2が不当に面会交流を拒否したなどと主張して、慰謝料500万円及び遅延損害金を請求する本件訴訟を提起した。
なお、本件訴訟提起後の2014年2月、B市内で面会交流が実施された。
[判決の概要]
判決は、第1調停事件調停成立前の不法行為に基づく慰謝料請求は退けた。
他方、第1調停事件成立により、「当事者は、本件調停に従って面会交流を実施するため日時等の詳細について誠実に協議すべき条理上の注意義務(誠実協議義務)を負担すると解するのが相当である。そして一方当事者が、正当な理由なく一切の協議を拒否した場合や、相手方当事者が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申入れに対する回答を著しく遅滞するなどして社会通念に照らし事実上協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に違反し、相手方当事者のいわゆる面会交流権を侵害するものとして、相手方当事者に対する不法行為を構成するというべきである」とした。
そして、9月末までの間は誠実協議義務違反があったとは認められないとしたが、10月以降、Y2がメールでなく書面郵送方法により連絡したことについて、Y2がその理由を「意見の対立がみられるため、争点を明確化し、適格に解決すべく」とX宛の書面で説明しているが、「あえて時間のかかる書面郵送を用いることにつき、合理的な理由はない」とし、書面郵送の方法によるとしたことの理由は、「第2調停事件において調停期日が指定されるまで面会交流を行わない目的をもってする意図的な遅延行為であることが推認され、これを覆すに足りる客観的証拠はない」。
この行為につき、「弁護士の専門家としての裁量の範囲を考慮しても、なお社会通念上の相当性を欠くものとして誠実協議義務の違反があり、不法行為を構成」する。Y1についてもY2の不法行為につき主観的関連共同性があり、共同不法行為責任を負う。
以上より、20万円の限度で慰謝料を認容した。
[ひとこと]
代理人弁護士が面会交流の方法を提案するなどしているにもかかわらず、連絡方法をメールではなく書面の郵送にしたことで遅延行為として不法行為責任を認められたことは、驚きをもって受け止められた。
片道4時間半かかる遠隔地に居住する父母間での月2回の面会交流の合意は、幼い子どもの負担を考慮しないものであり、調停を成立させるときに調停委員会も注意すべきではなかったか(母は当時代理人をつけていない)、DVもあった案件で母の父母を同席させることや母が立ち会わないで済む方法を母側が提案したが父が無理な条件を要求したり提案に回答しなかった経緯も考慮されるべきではないのか等疑問がある。
掲載した判例時報にも、判決について批判的な論稿(法の苑・日本加除出版19以下、渡辺義弘「高葛藤事案における代理人弁護士の任務」判時2260号19頁)が紹介されている。
なお、本件の控訴審が福岡高等裁判所に係属中である(2015年9月記)。

3−2015.3.13
DNA鑑定で生物学上の父でないことが明らかであるが、子からの親子関係不存在確認の訴えを却下した最一小平成26年7月17日判決2014.7.17−1、2により法律上の父と認められた夫からの面会交流の申立てを却下した事例
[大阪家裁2015(平成27)年3月13日審判 家庭の法律と裁判6号89頁]
[事実の概要]
最一小平成26年7月17日判決2014.7.17−1、2参照。
法律上の父は最高裁判決後の2014年8月、が母に対して子との面会交流を求めて調停を申立てたが、母が拒み、同年12月、調停は不成立となり、審判に移行した。
[審判の概要]
2011年から、子(2009年生)と母は、血縁上の父A宅で、A、Aと前妻との間の子2人の合計5人で暮らしている。子は、Aの姓を名乗り、Aを父、Aの2人の子を兄と認識して生活している。
「一般的に言えば、子がその成長過程において、一方の親のみではなく、両親から愛情を注がれて育つことは、子の健全な成長、人格形成のために重要であり、面会交流の実現が子の福祉を害するような事情がない限り、非監護親と子との面会交流を実施することが望ましいといえる。
もっとも、本件は、未成年者の父として、法律上の父である申立人と生物学上の父であるAがいるという希有な事案であり、前記一般論から直ちに結論を導き出すことができるものではない。」
「面会交流は、法律上の父又は母の権利として認められるものではなく、前記のとおり、子の利益を最優先して決められなければならないものである。すなわち、面会交流は、嫡出推定制度という身分法上の原則に関わる問題ではなく、法律上の父と子の面会交流が子の利益にかなうかという観点から個別具体的に検討されるべき問題である。」
この観点から本件を検討すると、「血縁上の父の下で平穏に暮らしている未成年者に対し、申立人との面会交流を認め、法律上の父がいることを未成年者に明らかにすることは、子の利益を最優先にしなければならない面会交流の趣旨からすると、相当性を欠くと思われる。すなわち、家庭裁判所において未成年者が申立人と定期的に面会交流することを認めると、まだ5歳である未成年者に対し、申立人が誰であるかを示すことが必要になると考えられるが、未成年者にとっては法律上の父がいかなる者であるかをおよそ理解できないのに、血縁上の父の他にもう1人の父がいることを教えることは、未成年者を混乱させ、精神的に不安定にさせるおそれがあり、申立人と相手方との紛争に未成年者を巻き込む可能性も否定できない。申立人と未成年者との面会交流は、未成年者が成長して自ら考える力がついた時点で、検討すべき課題と考えるのが相当であるように思われる。」
申立人は、親権者が再婚した場合、非親権者が子と面会交流することは一般的にあり、子が2人の父と接する事例も無数に存在し、様々な家庭があり、子が血縁のない育ての親と愛情や絆で結ばれている例は少なくないと主張したが、これに対して、審判は、再婚相手と子が養子縁組し2人の父が存在する事例は数多く存在し、離婚を子が理解することもさほど困難ではないが、本件は、父母の婚姻関係が破綻し、嫡出推定規定による法律上の父の下を出て、血縁上の父と生活して新たな養育環境が形成されている場合に、法律上の父との面会交流を認めることが子の利益にかなうかという事案であり、再婚事案とは本質的に異なる、子が法律上の父と同居していたのは、2歳4、5か月までであり、子にとって、申立人によって育てられたとの認識はなく、子と申立人が愛情によって結ばれているという事案でもなく、この点でも、面会を認める必要があるとは言えない。
以上より、申立てを却下した。

3−2014.12.4
親権者(監護親)に調停条項に基づく面会交流債務の不履行がある場合において監護親に監護権を留保しつつ非監護親への親権者変更を認めた事例・面会が履行されなかった月の養育費の支払い義務を免除する旨の調停条項を間接強制決定類似の給付命令に変更した事例・面会交流債務の内容を一部緩和した事例
[福岡家裁2014(平成26)年12月4日審判 判時2260号92頁]
[事実の概要]
相手方(母)は、2008年6月、長男(2007年生)を連れて転居し、申立人(父)と別居した。同年7月、父が申し立てた離婚調停事件の期日において、長男の監護を原則として一週間ごとに交替して行うこととなり、同月より交替監護を開始した。母は同年8月、長男の監護者を母と指定するよう求める審判及び保全処分を申し立てた。東京家裁調査官による監護状況調査の結果、当事者双方の監護状況は「甲乙つけ難いほど、ほぼ十分な監護環境が提供されている」と確認され、父母双方と長男の関係はいずれも良好と観察されたが、育児休暇の取得等により、父より母のほうが長男の監護養育に長く関わってきたことを理由として、監護者として母が相当とした上、監護者にあわせて面会交流も合意することが望ましいとの意見を示した。
父は代理人を通じて、離婚の条件として、親権と監護権を分属させ、親権を父に帰属させることを希望するが、十分な面会交流が確保されるのであれば、親権を譲歩する意向を示した。
父母は、2009年1月、離婚調停事件期日において、長男の監護者を当分の間母と定めること、月3回の面会交流、交替監護の取りやめを内容とする暫定的な合意に至った。母は、審判前の保全処分を取り下げ、子の監護者指定審判申立事件は調停に付され、離婚調停事件と同時に進行することになった。
東日本大震災後、母は東京での生活に不安を感じ、2011年4月中旬、長男を連れて福岡に転居した。その結果暫定的合意中の月3回の面会交流の実施は不可能になった。
同年7月、母を長男の親権者とする離婚調停が成立した。面会交流については、1か月に1回とし、2泊を限度とする宿泊を伴う面会交流を行う、毎年8月は1週間を限度とした宿泊付きの面会交流を行う、毎年冬休み、春休み、ゴールデンウィーク等の長期休暇期間のうちいずれか1回分については5泊を限度とした宿泊付の面会を1回行う、引渡し場所、面会交流の開始及び終了時刻、交通費の分担、第三者機関の利用等詳細を定めた上、面会交流が実現できなった月には原則として養育費の支払いを免除する旨の条項も盛り込んだ。
同年8月以降、父は第三者機関を利用したり、履行勧告の手続を執るなどしたが、長男の拒否により引き渡しが失敗するなどした。
2012年7月、父が、母に対して、余命宣告を受けた父方祖父に長男を会わせたいと申し出たところ、母は、離婚調停における財産分与に関する不満を理由としてその申し出を拒否した。
同年9月、父は福岡家裁に親権者変更、子の引渡しの申立て及び保全の申立てをした。同月、母は長男を伴って、父方祖父の入院先を訪問した。同年10月、父は、福岡家裁に、面会交流の調停を申し立てた。福岡家裁は、上記保全処分について保全の必要性はないとし、親権者変更と子の引渡し事件を調停に付した。
2013年3月に1回目の、同年5月に2回目の試行的面会交流が実施された。1回目は開始当初長男は父を拒否したものの、後半は円滑な面会交流が実現した。しかし、母が迎えに来た途端に長男は態度を一変させた。母は長男に「ママ見てたよ」と声をかけた。帰宅後、長男は荒れた。2回目には、長男は父を一貫して拒絶した上、終盤に突然、3歳のころ、父が入浴中に自分の性器を触ったと述べた。なお、母からは、2011年4月と同年6月の面会交流後、長男から、父の性器を触ったとの話を聴いた旨のメールが提出された。
2013年12月、各事件の調停は不成立となり、審判手続に移行した(保全事件の申立ては取下げ)。
[審判の概要]
1 性的虐待の疑いについて
相手方(母)は、性的虐待の疑いがあるので、頻度は1カ月に1回というわけにいかないし、宿泊を伴う面会は避けるべきと主張した。しかし、メールの内容(長男が申立人(父)の性器を触った)と2回目の試行面会時の発言(申立人が長男の性器を触った)では変遷がある上、メール時(3歳)と試行面会時(5歳)の長男の年齢、メール直後に宿泊付きの面会交流を含める内容の調停に合意したこと等から、性的虐待の事実は認められないとした。
2 長男の強い拒絶について
経緯を詳細に認定した上、長男が申立人を強く拒絶するに至った主な原因は相手方の言動にあるとした。
3 親権者変更について
面会交流を確保する意義、相手方を親権者と指定された前提が損なわれていること、親権者変更以外に面会交流が実現しない現状を改善する手段が見当たらないこと、原則は親権と監護権とを分属させないことが子の福祉にかなうが、本件においては、分属させ、「当事者双方が長男の養育のために協力すべき枠組みを設定することにより、相手方の態度変化を促すとともに、子を葛藤状態から解放する必要があること、(略)」からすると、分属させることが子の福祉にかなうといえる特段の事情が認められるとして、監護者を相手方に指定することを前提として、親権者を相手方から申立人に変更する必要が認められるとした。
4 子の引渡しについて
監護者を相手方と指定すべきであるとして、申立てには理由がないとした。
5 面会交流の条件変更について
面会交流が実現しなかった月の養育費の支払い義務を免除する旨の調停条項の趣旨を維持することが、面会交流の実施を確保するために必要であるとして、民法766条3項及び家事審判規則53条(家事法154条2項)に基づき、調停条項4項を、面会交流が実施されなかった月に2万円を支払うよう命じる給付命令に変更した。
また、3年以上にわたり面会交流が実現していないことから、離婚調停時に合意された詳細な債務の履行を期待できないことは明らかであるとして、毎月1回という頻度は維持しつつ、1回あたりの時間を3時間に短縮し、宿泊を伴う面会交流の定めをいったん取り消すなど、その内容を緩和した。
[ひとこと]
本審判は、即時抗告されることなく、確定した。

3−2014.3.13
面会交流の不履行に対する間接強制申立てについて、引き渡し方法の不特定を理由として却下した原決定を取消し、申立てを認容した例
[東京高裁2014(平成26)年3月13日決定 判時2232号26頁]
[事実の概要]
X、Yは、長男(12歳)及び長女(10歳)の親権者を母Yとして裁判離婚した元夫婦である。Xは、Yが2カ月に1回2時間の子らとの面会交流を命ずる審判(以下「本件審判」とする。)に基づく債務を履行しなかったため、Yに対し、不履行1回につき25万円の支払いを求める間接強制を申し立てた。
原審は、本件審判の内容は、子の引渡し方法が明示されているとは言えないため、間接強制をすることができない、として本件申立てを却下した。Xが抗告した。
[決定の概要]
「子の引渡しの方法等については、本件審判の主文(3)では、○○県○○市内において面会を実施し、面会交流を支援する第三者を立ち会わせることができるとされているが、未成年者らの引渡場所等は、その記載上は具体的に特定されてはいない。しかしながら、他方で本件審判の主文(2)には、相手方が抗告人又は抗告人が予め指定した者に対し未成年者らを引き渡すことが明記されており、しかも」「抗告人が予め指定した者とはFPIC甲の職員であり、相手方が同職員に未成年者らを引き渡すことが当事者双方の共通認識になっていたことが認められる。」
「本件審判では、実質的に、未成年者らの引渡方法等についても具体的な定めがあるものとみることができ、本件審判の主文は、監護親である相手方がなすべき給付の特定にかけるところはないと認めるのが相当である」として、不履行1回につき2万円の支払いを命じた。金額の算定にあたり、養育費月1人5万円(合計10万円)であること、相手方が薬剤師の資格を有しており年収400万円程度と推測されること、未成年者らの現在の父親像に歪みがみられ面会交流の実施について相当の反発も予想されること等が総合的に勘案されている。
[ひとこと]
面会交流を命じた審判の主文を、形式的な文理解釈ではなく、審判時の当事者の合理的意思等を補充して実質的に判断し、その引渡方法等についての特定性を認めたものである。

3−2014.2.4
同居期間中の非監護親と未成年者との関係、これまでの面会交流の状況、未成年者の年齢や生活状況等を考慮し、面会交流の頻度や内容等を具体的に定めた事例
[京都2014(平成26)年2月4日審判 判時2255号105頁]
[事実の概要]
申立人母(X)は、相手方父(Y)との離婚後、離婚時にYと未成年者との面会交流につて合意した。その内容は、「土曜日曜祝日も基本的にはXが未成年者をみるが、Yが会いたければこれに応じる(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始は相談)、その際、Xとの先約があった場合、そちらを優先する」というものであった。2013年×月までは面会交流が実施されていたが、同年、Xは、YがXと未成年者の生活に支障が生じるような内容の面会交流を求めてくるとして、面会交流の適正な内容や方法を定める旨の調停を申し立てた(本件調停)。本件調停の期日間に、日帰りでのYと未成年者との面会交流が実施された。
面会交流の回数や付随条件について調整がつかず、本件調停は不成立となり審判に移行した。
[審判の概要]
面会交流の回数や内容に関して、それぞれの主張は以下の通り。
@面会交流の回数
Yの主張 1か月に2回、うち1回は宿泊付き。大型連休の際には別に何度か求めたい。
Xの主張 基本的に3か月に1回日帰り。理由として、XYの居所を頻繁に往復するのは、未成年者の年齢や健康状態から負担が大きいこと、Yは婚姻中、未成年者と遊んでいるときも、携帯電話を使用したり、テレビを見たりしていたこと、宿泊先となるYの実家にはYの両親を含む6人の兄弟等がいて、落ち着ける環境にないこと、低出生体重児として生まれた未成年者は心室中隔欠損症の手術経過観察中で体調を崩した場合常に心内膜炎を発症する危険があること、を挙げた。
Aその他
Yの主張 保育園の運動会などの行事への参加、誕生日やクリスマスなどにプレゼントを渡すことを希望。
Xの主張 保育園の行事への参加は、保育園側の規定により、人数制限等があり、約束できない。ただし、就学後、未成年者の意思によりYの参加を希望した場合は認める。
審判は、「面会交流の頻度や内容等は、同居期間中の未成年者との関係、これまでの相手方と未成年者との面会交流の状況、未成年者の年齢や生活状況、申立人と相手方双方の生活状況等を考慮して決定すべきである。」とした上で、本件では以下の要領の通り定めるのが相当とした。
「一 面会日、面会時間
(1)毎月1回、日曜日の午前9時から午後5時まで
(2)(1)とは別に、毎年@7月20日から8月31日までの間、A12月26日から1月7日までの間に、それぞれ2泊3日程度の宿泊を伴う面会交流
(3)(1)の面会実施日は、前月末日までに母と父が協議して定めるが、協議が調わない場合は、第三日曜日とする。
(4)(2)の面会日は、@では7月19日まで、Aでは12月25日までに父母が協議して定めるが、協議が調わない場合には、@については8月1日から3日まで、Aについては12月27日から29日までとし、待ち合わせ場所及び方法は、2項の通りとする。
二 待ち合わせ場所及び方法
(1)待ち合わせ場所 ○○駅改札口を出た広場付近
(2)待ち合わせ方法 (略)
三 面会場所の制限
父は、一(1)の第1回及び第2回面会日に限り、未成年者との面会は○○市内で行うこととする。
四 父の保育園行事への参加について
(1)母は、保育園の意向に反しない限り、父が(略)保育園行事に参加することを認め、父と母は、父が参加できる学校行事について別途協議して定める。
(2)母は、保育園から行事日程の連絡を受けたときは、速やかに父に連絡する。
五 誕生日、クリスマスなどの未成年者へのプレゼントの渡し方
父と母が協議して決めるが、協議が調うまでは、誕生日やクリスマスに近接する面接日に父が直接未成年者に手渡すこととする。
六 面会日等の変更 (略)
七 連絡方法等 父と母の連絡方法は、原則としてメールによる。
八 その他 (略)」
[ひとこと]
調査官調査を実施した形跡はない。この点、判時の解説には、過去に宿泊付き面会交流が支障なく行われたこと等をあげ、問題ないとしているが、過去に行われていたとしても問題が生じたからこそ調停審判に至っているのであるし、間接強制をも念頭にした実施要領を定める以上、調査を踏まえるべきではなかったか、疑問が残る。
判時の解説には、詳細な実施要領は、最一決平25・3・28民集67巻3号864頁に照らし、間接強制を念頭にしたものとの指摘もされているが、他方で、上記最高裁決定は、間接強制の可否の判断に先立ち「子の利益が最も優先して考慮されるべきであり、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい」と述べていることからしても、一般的には、硬直的な条項にするのは望ましくない。水野有子・中野晴行「第6回面会交流の調停・審判事件の審理」法曹時報第66巻第3号(34頁)も、最高裁の基本的な考え方は従来の実務の在り方と一致しており、「間接強制を視野に入れた審判が増えるという関係にはないと考えられる」と指摘している。本件では、当初、柔軟な合意がなされていたが、円滑にいかなかったので、詳細な要領を定めたものと考えられる。

3−2013.7.3
面会交流審判について、頻度等、時間、受渡場所、受渡方法について審理不尽であるとして、原審に差し戻した事例
[東京高裁2013(平成25)年7月3日決定 判タ1393号233頁]
[事実の概要]
妻と夫は、2001年婚姻し、2005年7月離婚したが同月再婚した夫婦である。同年8月、長女が誕生した。妻は、2012年3月、長女を連れて自宅を出、以後夫とは別居している。妻は、自宅を出た理由につき、夫から奴隷のように扱われていたこと、度々理不尽な暴力を振るわれたこと等であると主張している。夫と妻の間には妻が申し立てた夫婦関係調整調停事件が係属している。
2012年10月、夫は長女との面会交流を求めて調停を申立てたが、不調となり、審判に移行した。原審(新潟家庭裁判所2013(平成25)年4月25日審判)は、次の内容の面会交流をするよう妻に命じた。「(1)頻度等 月1回 第3日曜日 (2)時間 午前10時から午後2時 (3)受渡場所 当事者間で協議して定める。協議が調わないときは、JRA駅B口1階改札付近とする。(4)妻は開始時間に受渡場所において夫に未成年者を受け渡し、夫は終了時間に受渡場所において妻に未成年者を受け渡す。」
妻が夫の面会交流の申立てを却下することを求めて抗告した。
[決定の概要]
本決定は、以下の理由のもと、原審判を取り消し、新潟家庭裁判所に差し戻した。
「夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状況を回復刺させ、健全な成長を図るために、未成年者の福祉を害する等面会交流を制限すべき特段の事由がない限り、面会交流を実施していくのが相当である。」
「調査官による調査によっても、未成年者が相手方を拒絶していることが窺える事情が認められず、未成年者が同居中の両親との良好な思い出を有しているといえる本件においては、原審が説示するとおり、面会交流を実施していくことが必要かつ相当である。」
しかし、未成年者は、両親に対する忠誠葛藤を抱えている。このような状況で、「いかにして両親が適切な対応をすべきか、すなわち、どのようにして相手方との面会交流を実施し、継続していくかは、子の福祉から重要な問題である。父母、子三者の情緒的人間関係が色濃く現れる面会交流においては、これら相互の間において、相手に対する独立した人格の認識とその意思への理解、尊重の念が不可欠である。特に父母の間において愛憎葛藤により離別した感情と親子間の感情の分離がある程度できる段階にならないと、一般的に面会交流の実施には困難が伴うというほかない。殊に、子が幼少である場合の面会交流においては、父母間に十分な信頼関係が構築されていないことを念頭に置きながら、詳細かつ周到な面会交流の実施要領をもって行わなければ、面会交流の円滑な実施は困難であり、仮に実施したとしても、継続性を欠いたり、両親の間で板挟みになる子に不要なストレスを与える等、子の福祉の観点からは却って有害なものとなりうるおそれが大である。」
本件は、離婚調停が係属しており、父母間の愛憎葛藤の感情と親子間の感情とを分離することが困難な状況にある。「したがって、未成年者及び当事者の現状を踏まえた上で、具体的な実施要領を定めることにより、円滑な面会交流の実施を図ることが相当である。」そして、未成年者が忠誠葛藤を抱えることによれば、「実施要領の策定に当たっては、両親である当事者が未成年者の現状を理解した上で、これに対応するための条項として、面会交流時や、普段時における禁止条項や遵守条項を盛り込むことが考えられる。このことは、双方の不信感や抗告人の相手方に対する恐怖心などを軽減するのみならず、条項の内容についての検討を通じて、共に親権者である当事者双方が、未成年者の現在の状況についての認識を共通のものとし、監護親、非監護親それぞれの立場における未成年者に対する接し方を考えることにも繋がり、未成年者の福祉の観点からも必要な過程であるといえる。」
しかし、原審判が定めた面会交流のうち、頻度等、受渡し場所・方法は、「その根拠となる情報等が一件記録からは窺えず、その相当性について判断することができないばかりか、これらについて当事者間で主張を交わす等をして検討がされた形跡も認められない。殊に、抗告人が、同居中に行われた相手方の暴力や言動を理由に、相手方に対する恐怖心を強く主張している本件において、未成年者の送迎時に相手方と顔を合わせるような受渡方法は、かなり無理があるというべきである。また、相手方が抗告人に対する暴力の事実を否定していない本件においては、第三者機関の利用等を検討することがまず考えられるべきであるし、その場合、仲介費用等の面で問題があれば、未成年者が一人でも行くことができる受渡場所の設定を検討したり、未成年者が信頼できる第三者を介したりすることも考えられる。」
また、未成年者の現状についての調査も、最初の調査は調査の目的や調査官であることを秘したままの調査であり、最後の調査では、未成年者の態度が大きく異なり、十分な面接時間が取れなくなったりして、両親に未成年者の現状を理解してもらうという趣旨からは十分な内容ではなかった。未成年者との面接にこだわらず、幼稚園や小学校を調査して、父母の葛藤下の影響を更に具体的に検証することも考えられる。
「原審は、審理不尽であったといわざるを得ず、子の福祉に思いをいたし、もう少し慎重かつ丁寧な事件処理が望まれるところである。」
[ひとこと]
民法766条に面会交流の規定が明文化されたが、単に面会交流を認めればよいのではなく、子の福祉に照らしてどのような条件の下で面会交流を認めればよいのが相当か、慎重に審理を尽くさなければ、実現が難しい場合もある。慎重な審理を促す決定内容は示唆に富む。

3−2013.6.25
離婚紛争中の父母間に信頼関係が失われている状況において、父と子の面会交流を第三者機関の立会いという方法により、回数を控えめにして面会交流を開始するのが相当であるとした事例
[東京高裁2013(平成25)年6月25日決定 家月65巻7号182頁]
[事実の概要]
父母は2001年婚姻し、父母の間に2004年に子が出生したが、2011年、母が子を連れて家を出て別居した。母は、同居中父が帰ってくる時間帯になると、ドアの鍵が開く音で動悸が激しくなるなどし、別居後はそのような症状はなくなったが、なお同居中のことがよぎって涙が止まらなくなることがある。母はPTSD症状を伴う適応障害と診断されている。
母は、2011年、父に対し、モラルハラスメントを受けてきたとして離婚調停と婚姻費用分担調停を申立てたが、いずれも不成立となり、離婚訴訟を提起した。
父は、2012年、面会交流を求める調停を申立てたが、調停不成立となり、審判に移行した。
父は以下の通り面会交流させることを求めた。
「(1)未成年者が申立人と、週に1回土曜日に行われる〇〇塾の空手の稽古に参加すること(略)、
(2)未成年者が申立人と、月に1回日曜日に行われる〇〇塾の論語の勉強会に参加すること
(3)未成年者が申立人と、〇〇塾のイベントに参加すること(合宿等)
(4)未成年者の学校の行事に関して、相手方が申立人に連絡し、申立人が参加すること(授業参観、運動会、学芸会等)
(5)未成年者のサッカー等の大会やイベント等がある場合、相手方が申立人に連絡し、申立人と未成年者との間で参加の有無の相談をさせ、参加すると合意した場合、申立人が未成年者と一緒に参加すること
(6)未成年者の長期の休み期間中に、3日以上の宿泊を伴う面会をさせること
(7)未成年者と月に1回以上、宿泊を伴う面会をさせること
(8)その他、夏祭り、プール、スキー等、未成年者と申立人が合意したイベントに参加させること」
原審(東京家裁2013(H25)年3月28日審判家月65巻7号190頁)は、第三者機関の立会の下で2か月に1回日帰りでの面会交流、父母とも第三者機関の職員の指示に従うこと、第三者機関への費用を折半で負担することを内容とした。父母の双方が即時抗告をした。
[決定の概要]
原審相手方(母)の抗告に基づき、原審が「1日日帰り」の面会交流を認めた部分を、「本決定確定後、2か月に1回、午前10時から午後6時までの時間枠内で、初回は1時間、2回目以降は4時間を限度として、公益社団法人〇〇等の第三者機関の立会いの下、面会交流を行うことを認めなければならない」と変更し、父の抗告を棄却した。
原審申立人(父)は、子の教育上、〇〇塾における学習に参加できるよう面会交流を実施すべきと主張したが、子に対する教育方法は、親権者である両親の合意に基づき決定すべきものであるところ、原審相手方(母)は同意していない。そこで、原審申立人(父)の求める方法を決定することは相当ではない。
原審相手方(母)が連れ去りの危険性を指摘し面会交流の開始を不相当と主張する一方、原審申立人(父)は第三者機関の立会を要することは不要等と主張した。本決定は、原審申立人(父)が連れ去りを行う意思がないと言明していることに照らして原審相手方(母)の主張を退ける一方、以下の理由で、原審申立人(父)の主張を退けた。面会交流を子の福祉に適うかたちで継続するためには、当事者間に信頼関係が形成されていることが必要である。本件では離婚訴訟が係属しており、精神的虐待や連れ去りの懸念が主張される等、当事者間の信頼関係が失われている状況にある。そのような状況を考慮すると、面会交流を早期に開始し正常化していくためには、当初は、原審相手方(母)の懸念に配慮して、第三者機関の立会いという方法で、回数も控えめにして面会交流を開始するのが相当である。円満に面会交流を実施していくことで、原審相手方の不安が解消されるなどして、面会の方法や回数を拡大していくのが、子の福祉に適うものであり、性急に方法や範囲を拡大することは、相当ではない。
もっとも、原審判における「日帰り」とする定めは、解釈に無用な紛議を生ずるおそれがあるので、明確化するのが適当であるとし、上記の内容を定めた。

3−2013.3.28
面会交流を定めた調停調書に基づく間接強制の申立てが認容されなかった事例
[最高裁2013(平成25)年3月28日第一小法廷決定 判時2191号46頁、判タ1391号126頁]
[事実の概要]
抗告人と相手方の間に、長男(2002年生)と二男(2006年生)がいる。2012年2月高知家庭裁判所において、相手方に対し、抗告人と長男及び二男が、月2回、1回につき6時間面会交流することを許さなければならないとの審判が出された(確定)。同年3月、抗告人と長男・次男との面会交流が2回行われたが、同年4月以降は行われていない。
同年5月、抗告人は、高知家庭裁判所に基づき、相手方に対し本件審判の通り面会交流することを許さなければならないと命ずるとともに、その義務を履行しないときは相手方が一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申し立てをした。
原審は、本件審判は相手方の履行すべき義務内容が具体的に特定されていないとして、間接強制決定をすることはできないとした。
[決定の概要]
監護親と非監護親との間で面会交流について定める場合、「子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審判法15条)。監護親に対し、非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般的であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」
本件審判においては、「相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえない」として、抗告を棄却した。

3−2013.3.28
面会交流を定めた調停調書に基づく間接強制の申立てが認容された事例
[最高裁2013(平成25)年3月28日第一小法廷決定 民集67巻3号864頁、家月65巻6号96頁、判時2191号39頁]
[事実の概要]
2010年、抗告人(母)と相手方(父)が離婚し、長女(2006年生)の親権者を抗告人とする判決が確定した。2012年5月、札幌家庭裁判所において、抗告人に対し、面会交流要領(@月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで、場所は長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所、A長女の受渡場所は抗告人自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が整わないときは、JR甲駅乙口改札付近とすること、抗告人は、面会交流終了時に、受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと、抗告人は、長女を引き渡す場面のほかには相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと、B長女の病気などやむを得ない事情により@の日程で実施できない場合は、相手方と抗告人は長女の福祉を考慮して代替日を決めること、C抗告人は、相手方が長女の入学式等の学校行事(参観日を除く。)に参列することを妨げてはならないことなど)のとおり相手方が長女と面会交流をすることを許さなければならないとする審判がされた(確定)。
2012年6月、相手方は面会交流を求めたが、抗告人は応じなかった。
2012年7月、相手方は、札幌家庭裁判所に、本件審判に基づき、抗告人に対し要領のとおり面会交流を許さなければならないと命ずるとともに、その義務を履行しないときは相手方が一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申し立てをした。
原審は、申立てを認め、不履行1回につき5万円の割合による金員を相手方に支払うようよう命ずる間接強制決定をすべきものとした。
[決定の概要]
監護親と非監護親との間で面会交流について定める場合、「子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審判法15条)。監護親に対し、非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般的であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」
「子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、これをもって、上記審判時とは異なる状況が生じたときは上記審判に係る面会交流を禁止し、又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることは格別、上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となり得るものではない。」
本件審判においては、抗告人がすべき給付の特定に欠けるところはないといえるから、本件審判に基づき間接強制決定をすることができるとして、抗告を棄却した。

3−2013.3.28
面会交流を定めた調停調書に基づく間接強制の申立てが認容されなかった事例
[最高裁2013(平成25)年3月28日第一小法廷決定 判時2191号48頁、判タ1391号128頁]
[事実の概要]
抗告人(父)と相手方(母)は、2007年3月別居し、以後相手方が長男(2001年生)と二男(2005年生)を監護養育している。2009年12月、福島家庭裁判所郡山支部にて、抗告人と相手方との間で抗告人と長男・二男との面会交流について調停が成立した。その内容の概要は、以下の通りである。@相手方は抗告人に対し、長男と2か月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)面接することを認める。ただし、最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。A相手方は、面会の開始時に、a市b通りの喫茶店前で長男を抗告人に会わせ、抗告人は終了時間に同場所において長男を相手方に引き渡すことを当面の原則とする。ただし、面会交流の具体的な日時場所方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間で協議して定める。B抗告人と相手方は、@に基づく1回目の面会交流を、2010年1月末日までに行う。C抗告人と相手方は、二男については、将来的に長男と同様の面会交流ができるようになることを目標として、面会交流の是非、方向等について協議する。
2010年1月、抗告人は長男と面会交流したが、その後、面会交流は実現していない。
2010年12月、抗告人と相手方は、仙台高等裁判所において、訴訟における和解により離婚し、長男及び二男の親権者を相手方と定める一方、面会交流の調停の合意内容が実現されていないことを確認し、子の福祉を慎重に配慮しつつ、合意内容が早期に実現されるよう努力することを約束する旨の合意をした。
2011年3月、抗告人は、相手方に対し、長男との面会交流の再開及び二男との面会交流に関する協議の申し入れをしたが、いずれも実現しなかった。
2012年4月、抗告人は、福島家庭裁判所郡山支部に対し、調停調書に基づき、相手方に対し長男との面会交流を許さなければならないと命ずるとともに、その義務を履行しないときは相手方が一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申し立てをした。
原審は、調停条項が「認める」という文言を使用していることに照らし、間接強制決定をすることはできないとした。
[決定の概要]
監護親と非監護親との間で面会交流について定める場合、「子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、給付の意思が示された調停調書の記載は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審判法21条1項但書、15条)。監護親と非監護親との間における非監護親と子との面会交流についての定めは、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般的であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。そして、調停調書において、監護親の給付の特定に欠けることがないといえるときは、通常、監護親の給付の意思が表示されていると解するのが相当である。したがって、非監護親と監護親との間で非監護親と子と面会交流をすることを定める調停が成立した場合において、調停調書に面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合は、上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」
本件調停条の「『認める』との文言の使用によって直ちに相手方の給付の意思が表示されていないとするのは相当ではないが」、本件調停調書は、「抗告人と長男との面会交流の大枠を定め、その具体的な内容は、抗告人と相手方との協議で定めることを予定しているものといえる。」本件調停調書においては、「相手方がすべき給付が十分に特定されているとはいえないから、本件調停調書に基づき間接強制決定をすることはできない。」
以上より、抗告を棄却した。

3−2013.3.28
調停において合意した面会交流実施義務の不履行を一部認め、監護親に対し慰謝料50万円の支払いを命じた例
[東京地裁2013(平成25)年3月28日判決 LEX/DB25511741]
[事実の概要]
夫婦は2007(平成19)年より別居し、妻(被告)が、長女(約6歳)及び長男(約3歳)と暮らし、監護している。
同年、原告と被告との間で、平日週1回の面会、月1回の宿泊面会及び長期休暇の宿泊面会を認める面会交流に関する調停が成立した。
2009(平成21)年頃から、長女や長男の生活状況の変化等を理由として、面会交流が実施されないことが増えた。そこで、原告は、被告に対し、面会交流妨害行為や面会交流実施義務違反等を理由として慰謝料500万円の支払を求めた。
[判決の概要]
(1)面接交渉実施義務の不履行について
「原告代理人が…被告に対し、本件面接実施のための連絡を求めたにもかかわらずこれに対応したと認めるに足りる証拠がないことからすると…宿泊面接及び長期休暇面接の不実施の全てが子の意思、生活上の都合、病気その他の心身の状況によるものとは認められず、被告が本件調停に基づく義務に違反したものと認められる。」
(2)面接実施の連絡義務違反について
「調停において、本件面接の実施について原告及び被告の誠実な協議を定めていることからすると、被告は、本件調停委基づき、原告が被告に連絡を取ることが可能な状態にしておく義務を負うものと認められる。」
「調停成立時において、原告及び被告が互いの携帯電話のメールで連絡を取っていたこと、被告が…原告からのメール受信を拒否し、…今後メール以外での連絡を求める旨通知していないことからすれば、被告は…上記義務に違反したものと認められる。」
(3)損害について
「被告の債務不履行の態様、本件面接が実施できなかった回数のほか、本件調停が…多数の面接交渉の機会を定めており、被告が本件調停を完全に遵守することは困難であったことを考慮すると、50万円の慰謝料を認めるのが相当である。」
[ひとこと]
本判決は、慰謝料を一部認めたものの、子らの生活状況の変化に配慮し、調停通りの面会交流の実施が困難であったことにつき、面会交流及び面会交流変更調停事件においてなされた家庭裁判所調査官による子らの意向調査を踏まえ、一定の理解を示している。

3−2012.12.19
面会交流申立事件において、面会交流のための多額の交通費の負担につき判断した例
[最高裁第二小法廷2012(平成24)年12月19日決定 判時2206号20頁 原審札幌高決平成24.10.3]
[事実の概要]
夫婦は2007年に婚姻した。妻は子(約2歳)を連れて仙台市の自宅を出て実家(釧路市)に戻り、その後、妻と子は札幌市に転居した。夫は、札幌家裁に面会交流調停を申立て、不成立に終わり審判に移行した。
[決定の概要]
原々審(札幌家裁)は、「面会交流を実施するに当たっては、監護親であるY(妻)の協力なしでは実施できないところ、X(夫)とYの間には信頼関係がなく、感情的対立があることもうかがわれるから、XとA(子)との交流がしばらく途絶えている本件においては、直接的な面会交流を実現させるためには、面会交流の時間、回数を段階的に増加させ、また、第三者機関や監護親の立会いを介して、非監護親であるXがAに対する素直な愛情の気持ちを伝えることができるような態勢を構築する必要があるというべきである。
また、面会交流がAの居住先から遠隔の地で行われるとなると、長距離を移動することによる肉体的精神的負担をAに強いることになるから、面会交流の場所を仙台市にすることは相当ではない。そして、その費用については、面会交流は子の福祉のために実施するものであって、面会交流に係る費用については、面会交流実現のためにそれぞれの親が支出したものについては、支出した者が負担すべき筋合いのものといえよう。
Xは、仙台市に居住するXと札幌市に居住するYとでは、費用負担が公平ではないと主張するが、非監護親と未成年者との面会交流は、親と子の双方にとって親子間の自然な情愛に基づくものであり、未成年者の安定的で健全、幸福な成長を促すために実現されるものであるから、面会交流に係る費用は各自の負担とするのが公平である。また、Xは、従前の仙台市での生活環境から一方的にAを動かしたのはYであるから、面会交流に係る費用はYが負担すべきであると主張する。しかしながら、Yは生活費をめぐり口論等が続くXとの生活に耐えられずに、釧路市に戻ってXと別居するに至ったこと、主としてYが出生後からAの身の回りの世話をしてきたこと、Aは別居当時二歳であったことなどからすると、YがAを連れて別居したことを一方的な連れ去りと評価することはできない。」とした。
即ち、夫が自宅のある仙台市から面会交流場所として指定された札幌市まで移動する旅費は、夫負担とした。これに対し、夫が高裁に抗告し、さらに最高裁に抗告許可を申立てた。最決は、原審の判断を正当として是認し、抗告を棄却した。

3−2012.6.29
非親権者と施設に入所中の未成年者らとの面会交流について定めた事例
[東京家裁2012(平成24)年6月29日審判 家月65巻3号52頁]
[事実の概要]
父(申立人)と母(相手方)は、2000年に婚姻し、長男(9歳)、長女(8歳)、二女(7歳)をもうけたが、2008年、子らの親権者を母と定めて協議離婚した。離婚後、母は父と子らの面会交流を認め、同年中に内縁の夫と交際するようになってからも、面会交流は滞りなく行われ、2009年中は数か月父が子らを引き取ることもあった。
同年、父は親権者変更の調停を申し立てたが、取り下げた。
2010年、内縁の夫の子らに対する身体的虐待が判明したとして、子らは児童相談所に一時保護された。長男は情緒障害児短期治療施設への入所措置が、長女二女については児童養護施設への入所措置がとられた。父は、施設近くのファミリーレストランで食事をするなど、子らと交流した。母は、父が親権変更の意向を述べるようになってから、面会交流について難色を示すようになり、そのころから、父は、各施設から、親権者である母の承諾を得られないとの理由で、面会交流を断られるようになった。以後、父は手紙やプレゼントを送るなどの間接的な交流しかできていない。
父が子らと相当な面会交流を行うことを求めて調停を申し立てたが、不成立となり審判に移行した。
[決定の概要]
「父母が離婚する際に一方の親が親権者又は監護権者と定められ、単独で子を監護養育することになった場合、他方の非監護親の子に対する面会交流は、基本的には、子の健全な育成に有益なものということができるから、これにより子の福祉を害するおそれがあるなど特段の事情がある場合を除き、原則として認められるべきものと解される。」
本件では、特段の事情は認められない。むしろ、本件の事情からすると、「原則通り、申立人と未成年者らとの面会交流を認めなければならないことが一層明らかである。」
もっとも、相手方が面会交流に難色を示していた背景には、「未成年者らの親権者変更をめぐる当事者双方の見解の対立があったことがうかがえる。」「このような対立を子に悟られるような言動に至ったり、一方当事者に対する否定的な言動や誹謗中傷を子の面前で行うなど、子の健全な育成を阻害することが厳に控えられるべきことは自明である。」
施設に入所中における面会交流は、施設の指導方針を尊重しながら行われる必要がある(退所する事態になった場合の面会交流については、当事者が協議の上柔軟に定めるよう配慮することを期待するとも付記)。
主文では、入所中、父は施設と面会方法等につき協議の上子らと面会交流することができるとし、母はそれを妨げてはならないとした。

3−2012.3.29
面会を拒む意思を強固に形成している長女と父との面会は母の意思のみによって実現することは不可能であるとして原判決を取り消して間接強制の申立てを却下した事例
[大阪高裁2012(平成24)年3月29日決定 判時2288号36頁]
[事実の概要]
父(1974年生)と母(1973年生)は2001年に婚姻し、長女(2002年生)と長男(2004年生)をもうけたが、2009年7月、母が子らを連れて実家に戻り、以来父とは別居している。
2009年8月、父は子らと面会交流を終えた後、一旦車両で子らを母の実家まで送り届けたが、その際に長男が父と一緒に帰る旨述べたことをきっかけとして、長男を自宅に連れて帰った。母は父が長男の引渡しに応じなかったことから、同年9月、子らの監護者を母と定め、長男の引渡しを求める調停を申し立て、さらに、同年10月、長男の監護者を母と定め、長男の引渡しを求め、父の父母に対して長男の引取りを妨害してはならないことを求める審判事件及び審判前の保全処分事件を申し立てた(上記各調停事件は取下げ)。
2009年12月、神戸家庭裁判所は、長男の監護者を母と定め、父に対し、長男を母に引き渡すよう命じ、父の父母に対する長男の引取を妨害しないように求める申立てを却下する本案の審判、同様の審判前の保全処分の審判をした。父は、本案、審判前の保全処分の各審判中、長男の監護者を母と定め、父に対し、長男を母に引き渡すよう命じた部分について、即時抗告した。2010年1月、審判前の保全処分事件の審判に基づく長男の仮の引渡しの強制執行のために、執行官が父の実家を訪れたが、父の父母が執行官の住宅への立入りを拒んだため、執行は不能となった。同日、母は、本案の審判中、父の父母に対する長男の引取を妨害しないように求める申立てを却下する部分について、即時抗告した。
2010年2月、大阪高等裁判所は、引渡し審判事件に係る即時抗告をいずれも棄却する決定をした。父はこれに対し、許可抗告及び特別抗告を申し立てたが、いずれについても許可しない決定ないし棄却決定がされた。
しかし、その後も父が長男を引き渡さなかったことから、同年3月、母は人身保護請求を申し立て、同年4月、神戸地方裁判所は、父に対して、長男を母に引き渡すよう命じ、同日、母は長男の引渡しを受けた。
同年5月、父は、母に対し、子らとの面会交流を求める調停事件を申し立てた。同年10月、各調停事件は不成立となり、審判手続に移行した。2011年2月、神戸家裁は、面会交流を命じる審判をした。同年5月、抗告審の大阪高裁は、毎月1回第3日曜日に3時間ないし6時間の面会交流を命じる決定をした。母は、高裁決定がなされて以降、父と長男との面会交流を実施し、継続しているが、長女に働きかけても、長女が頑なに拒否していることから、実現していない。
父は、2011年10月、面会交流の不履行1回につき2万円の支払いを求める間接強制の申し立てをしたところ、原審の神戸家裁平成24年2月16日決定は、上記面会交流の決定はその内容が具体的に特定されているものであるから、母は上記決定により長女と父との面会交流をさせる義務を負い、間接強制はやむを得ないとして、間接強制金については、不履行1回につき8,000円とした。母が執行抗告をした。
なお、2010年、父が離婚等請求訴訟を提起し、2011年、母が反訴を提起した(係属中)。 審判に基づき、父は母に婚姻費用分担金月15万円を支払っている。
[決定の概要]
「間接強制命令を発するためには、債務者の意思のみによって実現できる債務であることが必要である。」
「本件において、抗告人は、未成年者に面会交流を働きかけているものの、未成年者がこれを頑なに拒否しているため、面会が実現していない」
「未成年者はすでに10歳であり、面会交流を拒む意思を強固に形成している場合、抗告人が面会に応じることを働きかけても限界があるといわざるを得ない。本件の事情に照らせば、抗告人に対し、未成年者と相手方の面会を実現させるためにさらなる努力を強いることは相当とはいえないし、かかる努力を強いても、それが奏功する見込みがあるとはいえないというべきである。」
「そうすると、本件債務名義は、抗告人の意思のみによって実現することが不可能な債務というべきであるから、間接強制命令を発することはできないし、これを発してみても面会交流の実現に資することはない。」
以上より、相手方の申立てを認めた原決定を取り消した上で、相手方の申立てを却下した。
[ひとこと]
本決定の後の最一判平成25年3月28日民集67・3・864は、母が7歳の長女が父との面会を拒否していると主張したのに対し、面会交流審判は子の心情等を踏まえてなされているから、審判がなされた以上、子が面会交流を拒否する意思を示していることは、間接強制の妨げとなるものではないと判示した。そうすると、本決定が最高裁判決により否定されるかが問題となるが、判例時報2288号には、「一般的に10歳前後に子の意思能力が備わるという見解に従えば、最高裁決定は10歳未満の子についてはたとえ拒絶の意思を示していても、その意思表示は完全な意思能力下のものではないから、それに従う必要はないとしたもので、その射程距離は10歳未満の子についてのみ妥当すると解する余地があろう」として、本決定と最高裁判決は両立しうる、あるいは、本件の義務者は自己の努力で可能な債務は全部履行しているので、そもそも債務不履行はないと解する余地もある、との解説が付されている。

3−2012.1.12
10歳男子と母との面会交流につき、監護親の父が立ち会ったことが子の忠誠葛藤を強めたこと等を指摘しつつ、子がPTSDであり面会は避けるべきとの診断書が存在しても、面会交流を命じ、間接強制の申立てを認容し、不履行1回につき金8万円の支払いを命じた事例
[東京高決2012(平24)年1月12日 家月64巻8号60頁]
[事実の概要]
父母は、父の実家で父の両親、長男と同居していた。父は、自分の実家で長女を出産した母が自宅に戻ることを拒否し、離婚を申し出た。父は長男と、母は長女と別居して生活。父が長男との面会を拒否したため、母が面会交流の調停を申立てた。その結果、父は母に対し、毎月1回2時間、長男を母又はその指定する代理人(未成年者と面識のある者又は本件の相手方代理人に限る。と主文で限定)に引き渡す方法で面会交流を許さなければならないとする高裁決定が確定した(本件決定という)。しかし、父は、当初は面会交流に立ち会った。しかし、後には約10歳(高決時)の長男が面会交流を強く拒絶していること、「面会交流不可」などの診断書が出たことを理由に面会交流を一切拒絶した。そこで、母が間接強制を申立てたところ、原審はこれを認め、不履行1回について8万円の支払いを命じた。そこで、父が抗告。
[決定の概要]
「債務名義である本件決定は、未成年者が、相手方とは会いたくない旨の意向を表明している事実を前提として、未成年者の年齢、発達段階、忠誠葛藤も見られるその心情を慎重に検討した上、相手方との面会交流をしないことは、中長期的に見ても、未成年者の健全な成長を図るという観点からも相当とはいえず、面会交流を制限しなければ、未成年者の福祉が害されるとはいえないことなどの理由から、抗告人に対し、このような意向を表明している未成年者の心身の負担が過大とならない時間間隔と環境下で、本件決定の定める方法によって未成年者と相手方の面会交流を行うことを命じたものである。そして、(本件決定後の:GALによる注)第1回ないし第3回の面会交流は、抗告人が未成年者に付き添い面会交流中に言葉をかけるなどしており、本件決定の定めた方法によって実施されたものとは認められない上、抗告人が付き添う方法を採ることで、本件決定が懸念した未成年者の忠誠葛藤をさらに進行させた可能性も否定できないものというべきである。」その上、かかりつけの医師による「面会交流不可」、精神科医による「PTSDにより、面会交流を避けることが望ましい」との診断書の記載も、「診断の前提とされた面会交流の実施方法等の事実関係や診断の具体的根拠を明らかにするに足りる資料ではないのである。以上判示の点を総合すると、・・・抗告人の主張する上記の事情から直ちに本件決定に表示された債務が抗告人の意思で履行することができない債務であるとか、その履行の強制が許されないとまでは認められず、また、本件申立てが権利濫用に当たるとも認めるに足りず、他に本件申立てを却下すべき事由を認めるに足りる資料はない。」
[ひとこと]
約10歳の子の面会交流の拒絶の意思や、かかりつけ医による「交流不可」の診断書などが問題とされた事案であるが、決定は、監護親の面会交流実施へ向けた努力不足、面会交流に監護親が立ち会ったことが子の忠誠葛藤を強めた等を指摘し、原審と同様に間接強制を認めた。本決定確定後の面会交流の実施状況、子の状況が気になる事案である。当初の東京高決平成22.10.28(家月64-8-72)が、面会交流の際の子の引渡し相手として、母本人のほかに代理人弁護士を指定している点も特徴的である。
本件の評釈・民商147-4・5-111(野村秀敏)は、債務名義決定後の新たな事情(子の拒絶)は、請求異議の訴えで主張すべきではないか。間接強制決定に先立つ債務者審尋の手続きにおける審理・判断の対象となるかを論じている(通説は対象となることを否定)。

3−2010.7.23
面会交流につき頻度及び面会時間を段階的に増加させる内容を定めた事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2010(平成22)年7月23日決定
[出典]家月63巻3号81頁
[事実の概要]
父と母は,2006年結婚し,2007年子が生まれたが,婚姻当初から不仲で,母は同年,子を連れて実家へ戻り,以後父と別居した。別居後に父と子は3,4回1時間半程度,母と3人で面会したが,険悪な状態であった。2007年に父が子の様子を知りたいと母の実家に赴いたところ,警察に通報され追い返された。その後も,父は子との面会交流を求め,2007年には調停を申し立てるが,母に拒否され,面会が出来ていない。母は,離婚を求め調停を申立て,その後訴訟を提起し,2008年母を子の親権者とする和解離婚が成立した。
面会交流の調停は審判に移行し,原審判(京都家裁2010(平成22)年4月27日審判)は,面会交流の頻度や時間を段階的に増やす等の詳細な面会交流の要領を定めた。父,母,双方が抗告。
[決定の概要]
長期間にわたり父との面会交流が実現しなかったこと,子の年齢,円満な面会交流実施の可能性等を踏まえて,面会交流の頻度や時間を段階的に増加させる原審判は相当であるとした上で,母に,別紙面会要領記載の内容で,子を父と面会させる義務があるとした。
 別紙面会要領
「1 面会交流の日時
 ア 平成22年8月,10月,12月,平成23年2月の各第2日曜日の午前10時
  から午前11時
 イ 平成23年4月以降平成24年2月までの偶数月の各第2日曜日の午前10
  時から午後零時
 ウ 平成24年3月以降平成25年2月までの各月の第2日曜日の午前10時か
  ら午後2時
 エ 平成25年3月以降毎年各月の第2日曜日の午前10時から午後4時
2 面会交流の方法
 ア 母又はその指定する親族等は,面会交流の開始時刻に○○駅改札
  口付近において,子を父に引き渡す。
 イ 父は,面会交流の終了時刻に同所において,子を父又はその指定す
  る親族等に引き渡す。
 ウ 母又はその指定する親族等は,子が小学校に入学するまでの間,子
  と父との面会交流に立ち合うことができる。
3 予定の変更
子の病気その他やむを得ない事情により上記1のアないしエの日時を変更するときは,当該事情が生じた者は,他方に対して速やかに連絡して,双方協議の上,振替日時を定める。ただし,振替日時は,原則として,予定日の1週間後の同時刻とする。
4,5(略)」
[ひとこと]
別紙面会要領は原審とほぼ同じ(原審が第2土曜日であったのを第2日曜日へ修正した程度。)高葛藤の父母の間でも何とか父子の面会交流を実現しようと,段階的に頻度時間を増やす等詳細を定め,裁判所の苦心がうかがわれる。しかし,決定後の実現は高葛藤の父母の努力に委ねるほかなく,険悪なものとならないか,懸念がある。父母を長期的にサポートし調整する機関が必要と思われる。

3−2009.7.8
調停における面会交流の合意を正当な理由なく拒絶したとして、監護親に対し債務不履行に基づき70万円の損害賠償を認めた事例
[裁判所]横浜地裁
[年月日]2009(平成21)年7月8日判決
[出典]家月63巻3号95頁
[事実の概要]
原告と被告は婚姻し、その間に長女(平成7年生)が生まれた。しかし、被告は長女を連れて家を出て原告と別居した。その後離婚訴訟において、離婚及び長女の親権者を被告とする判決が確定し、平成19年原告と被告は離婚した。離婚前の面会交流における調停で、被告は原告が長女と月1回以上面会することを認める、原告の長女の学校行事への参加や長女との旅行については、将来、前向きにその都度話し合いをして決する、という内容の調停合意が平成15年に成立した。本件合意に基づく面接交渉は平成17年×月までほぼ実現されていたが、それ以降は、原告と被告との間で予め日時を決めた上で行われる態様の面会交流は、実施されていない。原告は、被告が面会交流に係る調停合意を遵守せず、原告の面会交流権を侵害したとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償として300万円を請求する訴えを提起した。本件訴訟のなかで、被告が面会交流に応じないことに相当な理由があるかが争われた。
[判決の概要]
原告による面会交流の頻度や態様等に係る要求や学校行事への参加が被告の心理的な負担となり、あるいは、その感情を害したことが契機となって被告が面会交流を拒否するに至った経過があるとしても、その行為が調停合意に反するものとはいえず、子が面会交流について消極的意向を有していなかったなどの事情の下では、被告が平成17年×月以降面会交流を拒絶したことについて、正当な理由があったとはいえず、原告は被告に対し、債務不履行に基づき70万円の損害賠償責任を負う。
被告が本件合意に係る面会交流を拒絶した行為は、原告の面会交流権の侵害として不法行為を構成する。しかし、面会交流権の侵害の観点からみても、前記債務不履行に基づく損害を上回る損害の発生を認めることはできない。
(なお、原告にも面会交流を継続交渉する協力相手である被告に対して配慮不足があったことは否定できないと判決は付記している。)
[ひとこと]
面会交流の拒絶について、不法行為責任が認められた事例はあるが、本件では債務不履行責任についても認められている点で参考になる。なお、原告が控訴したが、棄却されている(東高判平22.3.3家月63巻3号116頁)。

3−2009.1.16
未成年者の心情の成長にとって重要であるとして、非監護親との直接の面接交渉を認めた事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2009(平成21)年1月16日決定
[出典]家月61巻11号70頁
[事実の概要]
父(外国籍)は,母と平成13年に婚姻し,同月長男が出生したが,平成14年には別居し,同年長男の親権者を母と定めて協議離婚した。同年,父は面接交渉を求める調停を申立てたが,審判に移行し,平成16年,父と長男が面接交渉する時期,方法等を定めることを求めた主位的申立てが却下され,母に対し,「父に長男の写真を送付すること,父が長男にクリスマス及び誕生日にカード及びプレゼントを送付することを妨げてはならない」との審判がなされ,確定した。
父は,母と離婚後に在留期間が満了し,不法残留となり,平成18年に在留特別許可を求めて入国管理局に出頭したが,同年,収容され,退去強制令書が発せられた。父は,平成19年に退去強制令書等の取消しを求める訴えを提起し,その理由の一つに,退去強制となれば,事実上長男と面接交渉することはほぼ不可能であり,長男と父にとって回復不可能な損害となることを挙げた。しかし,平成20年,大阪地裁は,父の請求を棄却した。
父は,審判確定後収容されるまで,長男にクリスマス及び誕生日にカード及びプレゼントを送付したほか,養育費も送金した。
父は,仮放免された直後の平成19年×月に,奈良家庭裁判所に面接交渉の調停を再度申し立てたが,平成20年に不成立となり,同年,「直接の面接交渉を認めず,母は父と長男との間の手紙のやりとりを妨げてはならない」との原審判がなされた。父は直接の面接交渉を認めなかった原審判は不当である等として,抗告した。
[決定の概要]
面接交渉が制限されるのは,面接交渉することが子の福祉を害すると認められるような例外的な場合に限られる。母は,父が長男との面接交渉を求める動機を疑問視し,仮に未成年者が抗告人と馴染んだ後に抗告人が退去強制された場合に長男に与える影響をも懸念して面接交渉に反対している。しかし,父が在留許可を取得するために面接交渉を利用しているとまでは認められない。また,長男が父を知らないまま成長するのに比べて,父を認識し,母だけではなく,父からも愛されてきたことを知るには,長男の心情にとって重要な糧となる。父が退去強制となった場合にも,手紙等の交流は可能である。長男の福祉を図るためには,現時点で父と長男との面接交渉を開始する必要性が認められる。
その上で,大阪高裁は,長男が父を知らなかったこと,相手方の生活状況等にかんがみて,面接交渉の頻度は3か月に1回とし,開始時間は午後0時とし,初回は1時間,2回目以降は2時間とし,母が付き添うこととし,待ち合わせの場所や実施日の変更の方法等,詳細な内容の決定をした。
[ひとこと]
家裁月報に,原審判(奈良家裁)は掲載されておらず,原審判の内容の詳細は不明であるが,高裁決定のように詳細に事実認定をしたり,父子交流の意義を考慮したりしなかったように見受けられる。本件は,母は自身が立ち会う可能性も示唆していたのであるから,調整次第では和解も可能だったのではなかろうか。

3−2008.9.18
面接交渉事件の執行力ある債務名義の正本に基づき、不履行1回につき5万円の間接強制金の支払が命じられた事例
[裁判所]岡山家裁津山支部
[年月日]2008(平成20)年9月18日決定
[出典]家月61巻7号69頁
[事実の概要]
債権者(東京在住)と債務者(岡山在住)は、平成11年に婚姻し、2人の間には未成年者(上記決定時、約9歳、7歳、3歳、性別不明)がいる。なお、いずれが父母であるかは家裁月報からは不明である。平成18年、債務者から離婚の提訴をしたが、平成20年に上告審で離婚請求棄却が確定している。平成18年に債権者は面接交渉の審判を申立て、平成19年に面接交渉を認める家裁決定、平成20年に内容は一部変更したが面接交渉を認める広島高裁岡山支部決定が出た。その決定内容は、@回数は3ヶ月に1回、A場所は、岡山県の債務者が指定する場所、B時間は午後1:30〜4:00、C日時場所の指定方法も指定、という具体的なものであった。しかし、債務者は弁護士を通じて面接交渉を拒否し、履行勧告にも応じる姿勢を見せなかった。そこで、債権者は平成20年の広島高裁決定に基づき、面接の履行及び求める履行期限以降履行時まで1日5万円の支払いを求めた。
[決定の概要]
面接交渉が実現していないことにつき、債務者の拒否的な姿勢のみならず、債権者の態度(子の年齢や親子の関係を度外視したいわば形式的対当(ママ)の主張、定期的経済給付の不履行、必要とはいい難い物品を着払いで送りつけるなど)にも起因するところがあるといわざるをえないとし、「債務者の拒否的な姿勢のみを重視するのではなく、債務者の現在置かれている経済的状況や1回あたりの面接交渉が不履行の場合に債権者に生じると予測される交通費等の経済的損失などを中心に算定するのが相当である」として、債務者が未就労で公的援助や親族からの援助等で生計を立てていることや、面接に際し債権者が負担する1回当たりの交通費は、往復3、4万円であること等を考慮し、不履行1回につき5万円の間接強制金の支払いを命じた。
[ひとこと]
父母間に非常に強い葛藤のある事案であるが、裁判所は、強い態度で面接交渉の実現の方向を打ち出した決定である。面接交渉の決定や調停条項が「債務名義」として評価されるには、どの程度の具体性が必要であるかの参考にもなる事案である。

3−2007.11.7
面接交渉の申立てを却下した原審判に対する抗告審において、抗告審における試行的面接交渉の結果や相手方の意向等を考慮して、夫及び夫の指定する第三者の立ち合いのもとで、3カ月に1回、1時間程度の面接交渉を認めた事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年11月7日決定
[出典]家月60巻11号83頁
[事実の概要]
A(妻)とB(夫)は平成13年に婚姻し、平成14年に第1子(女)、平成15年に第2子(女)、第3子(女)が出生した。その後、AとBは不仲となり、平成16年から別居している。AがBに対して、Bが監護している未成年者らとの面接交渉を行う時期、方法などを求めた。原審は、面接交渉によって、未成年者らに悪影響を及ぼす可能性があることを理由に、Aの申し立てを却下した。そこで、Aが抗告した。
[決定の概要]
別居中の妻から夫に対する両名の子らとの面接交渉の申立てを却下した審判の抗告審において、過去に妻による子らの監護に不適切な面があったが既に相当期間が経過し、その事情が現在まで子らの情緒面に悪影響を及ぼしているとは考えられないこと、妻と子らとの面接交渉が子らの健全な発達のために有意義であるとして、原審判を取り消し、面接交渉を認めるとともに、妻が子らと最後に会ってから2年以上が経過し、その後1回試行的面接交渉が行われたにすぎないこと、夫婦間に十分な信頼関係が形成されているとは言い難いこと、妻に精神的に安定していない面があることなどにかんがみ、面接交渉の方法を、夫及び夫の指定する第三者の立会いを認めた上で、3か月に1回、1時間程度と定めた。
[ひとこと]
原審で面接交渉に拒否的であった夫が抗告審で協力的になった背景には、抗告審における試行的面接交渉の実施など家庭裁判所の努力が大きく影響したと思われる事案である。

3−2007.8.22
未成年者の福祉を害するおそれが高いとして、面接交渉を認めた原審判を取消し、面接交渉の申立てを却下した事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年8月22日決定
[出典]家月60巻2号137頁
[事実の概要]
母(昭46年生)と父(昭42年生)は、平成6年に婚姻し、平成7年と平成9年に二子を(高裁決定時、11〜12歳、9〜10歳)もうけた。母は平成13年に単身帰省して別居を開始し、平成14年に二子を通園先から連れ帰り、以後監護養育した。それ以来、母と父は交流が途絶え、父は二子の居所さえ知らされていない。母が提起した離婚訴訟において、平成16年、親権者を母と定める離婚判決が確定した。
父は、平成17年、面接交渉の審判を申立て、平成19年、原審の東京家裁は「夏季休暇に1回2時間」の面接交渉を命じた。母が抗告。
[決定の概要]
二子は、現在父とは面接したくないことを明確に述べており、その基礎には、面接交渉の調停係属中に父が二子に位置情報確認装置を潜ませたラジコンを送ったことがあること、母は、父が位置情報確認装置を潜ませたり二子の居所の探索のため母の親類や恩師に対して脅迫的言辞を用いたことなどにより、父が二子を連れ去るのではないかとの恐怖心を抱いていることから、面接交渉は、二子に父に対する不信感に伴うストレスを生じさせ、二子を父と母との間の複雑な忠誠葛藤の場面にさらすことになり、その結果、心情の安定を害するなど、その福祉を害する恐れが高いので、これを認めるのは相当でない。
[ひとこと]
暴力行為以外の、面接交渉申立人の不相当な言動を理由とする却下事例の1つである。 ただし、原審が、未成年者が将来的には父との面接交渉を受け入れる意向も示し完全に拒絶してはいないことなどを理由に、「未成年者らの福祉に合致した面接が可能となるようその回数や方法等を工夫することが望ましい」として年1回の面接を認める判断をしたことの価値も評価したい。

3−2007.7.19
子の親権者の側から面接交渉を求め、手紙送付という方法が命じられた事例
[裁判所]さいたま家裁
[年月日]2007(平成19)年7月19日審判
[出典]家月60巻2号149頁
[事実の概要]
申立人(母)と相手方(父)は、平成9年に婚姻し、平成10年に長女(審判時は9歳くらい)をもうけた。申立人は相手方の不貞を疑い、相手方の職場の上司に抗議するなど、申立人と相手方の感情的対立が激しくなった。平成12年、調停離婚が成立し、申立人が長女の親権者となり、相手方には養育費の支払いが認められたが、面接交渉についての条項は定められなかった。相手方は、平成14年に再婚し、平成16年に長男をもうけた。離婚後も、申立人と相手方との間には感情的対立が続いている。長女は、相手方に対して、手紙を送付したり、電話をかけたりしており、相手方に会いたいと考えている。申立人は相手方が暴力をふるい、また、不貞関係にあった女性と婚姻していることを主張し、相手方に強い憎しみをいまだに抱き続けており、心理的清算ができていないことが窺われるが、長女の気持ちを尊重し、申立人から相手方に面接交渉を求めている。一方、相手方は、面接交渉によって、申立人との紛争が再燃することをおそれている。
[審判の概要]
父母の離婚から6年以上を経ているものの、家庭内の不和が生じてから離婚に至るまで及びその後の過程における葛藤は根深いものがあり、面接交渉の早急な実施は父母双方にとって精神的負担を負わせることになり、未成年者の心情に必ずしも良い影響を与えられるとは言い切れないことから、将来的に完全に面接交渉を禁止すべき事情は窺われないものであるにしても、直接の面接交渉を実施することには消極的にならざるを得ず、当分の間、間接的に手紙のやり取りを通じて交流を図るのが相当である。
[ひとこと]
両親の葛藤が根深い事案であるが、直接の面接交渉が困難であっても、間接的に手紙のやりとりなどで親子の交流が認められた例である。子は父に会いたいと考えているが、本件では、離婚時に子は2歳になったばかりで、父親の記憶がなく、父に会いたいという思いは、抽象的な父親像にとどまっていること、離婚についての正確な情報を伝えられていないことなども考慮され、直接の面接交渉の実施のためには、周辺の環境を整えることが必要とされた。

3−2007.6.7
面会交流を定めた調停調書に基づく間接強制の申立てが認容された事例
[大阪高裁2007(平成19)年6月7日決定 判タ1276号338頁]
[事実の概要]
母(抗告人)は父(相手方)との間で,2006年,長男(2005年生)の親権者を母と定めて協議離婚する,父は母に対し長男の養育費を支払うことのほか,面会交流の条項も含む調停を成立させた。なお,調停中に,父と長男の面会が数回実施された。面会交流に関する条項は,以下の通りであった。@母は,父が長男と毎週1回10時間程度,面会することを認める。ただし,2007年5月以降,宿泊を伴う面会交流については,長男の福祉に配慮して,当事者間で協議する。A原則として,土曜日又は日曜日とする。B面会日における引渡しについては,当分の間,開始時に,父が母方において長男を引き取り,終了時に父が母方において長男を引き渡す。C引渡しについては,父母自身に支障がある場合には,その両親又は代理人が行うことができる。
ところが,調停成立後,父が母に申し入れても,さらには家庭裁判所に対して履行勧告の申立てをしても,面会交流は実現しなかった。
父が間接強制の申立てをしたところ,原審判(京都家裁2007(平成19)年1月30日審判未公表)は申立てを認容して間接強制を命じた。母が執行抗告。
[決定の概要]
長男がようやく2歳になったばかりであること等から,面会交流が実現しないのは,抗告人の意思に基づくものと認められ,抗告人はこれからも面会交流を実現する義務を怠る可能性が高い。
抗告人が長男の福祉を妨げるとして主張する内容(長男の情緒的混乱が生じた,おむつが汚れたとして2時間ほどで相手方が長男を送り届けてきた,面会交流後長男が急に風呂を怖がるようになった,など)は,調停成立前の面会交流時の事情であるなど,「面会交流を拒否し得る阻害事由に該当するものではない」。
「面接することを認める」という調停条項の記載につき給付条項ではないとの主張については,「本件調停条項の面接交渉に関する調停条項を全体としてみれば,面接の頻度,時間,面接日,面接の方法について具体的かつ明確に規定されており,給付条項として合意されたものであることは明らかである。また,その給付内容は,幅のあるものであるが,原審判発令までの経緯に照らせば,上記調停条項に従って,原審判主文のとおり間接強制を命じるのに問題はない」。
執行抗告棄却。
[ひとこと]
本決定は,調停条項が相当程度に特定されていることを踏まえ,「認める」との文言にこだわらず間接強制を認めた。

3−2006.8.7
面接交渉を認めた判決主文のある条項について、親権者と親権者ではない親との間の具体的な権利義務を特定しないため、給付条項性が認められず、その条項に基づき間接強制を求めた債権者の申立てが認められなかった例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2006(平成18)年8月7日決定
[出典]判タ1268号268頁
[事実の概要]
AとBとの間には、長男と次男の2人の子どもがいる。AB間で離婚訴訟がなされ、その判決において「AはBに対し、Bが長男及び次男と月2回程度の面接をすることを許さなければならず、A及びBは、その具体的日時、場所、方法について、事前に協議しなければならない。」との裁判(以下、「本判決」という。)がなされた。その後、Aが面接交渉を履行しないとして、Bが間接強制の申し立てをした。原審がこれを却下したため、Bが執行抗告をした。
[決定の概要]
本判決は、回数自体、未だ確定されておらず、面接の具体的日時、場所、方法(1回あたりの時間、開始時刻・終了時刻、子らの引き取り、引き渡しの場所、宿泊を伴うか否かを含む)など面接交渉を実施するために決定しておくことが必要な事項の詳細は特定されていないとし、本判決は強制執行の債務名義になるものではない、と判示した。
[ひとこと]
面接交渉の条項を定める際に、具体的な条項を定めることが適さない事例も多く、その場合、面接の回数を定め、後は当事者間の協議に委ねることが多い。しかし、本決定によると、面接の日時、場所、方法などが特定されていないと、強制執行の債務名義にならない可能性がある。面接交渉の条項を詳細にすると、逆に、柔軟性がなくなる面もあり、面接交渉の条項の定め方について考えさせられる裁判例である。

3−2006.7.31
面接交渉の実施につき、第三者を介在させることを命じた事例
[裁判所]東京家裁
[年月日]2006(平成18)年7月31日審判
[出典]家月59巻3号73頁
[審判の概要]
面接交渉について合意したものの、その後、紛争が生じたために、未成年者を養育している申立人から、面接交渉の相当な時期及び方法等を定めることを求めた事案において、申立人と相手方との間には面接交渉についての信頼関係が十分に形成されているとは言えず、申立人と相手方が直接対面することを未成年者が嫌がるなどの事情があり、当事者双方が家庭問題を専門的に扱う第三者を介して面接交渉を行うことに同意していることから、面接交渉を円満かつ安定的なものとして長期的に継続するために第三者の立会いのもとに面接交渉を実施すること及び面接交渉の方法等については、その指示に従うことを命じた。
主文は以下のとおり。
 1 申立人は、相手方に対し、本審判確定後1か月半に1回の割合で、
  社団法人○○の職員又はその指定する者の立ち会いのもと、相手
  方が未成年者Cと面接交渉を行うことを許さなければならない。
 2 当事者双方は、前記面接交渉の日時、場所、方法、同交渉の際の
  留意事項、禁止事項について、社団法人○○の職員の指示に従わ
  なければならない。
 3 上記面接交渉に関し、社団法人○○に支払うべき費用は、当事者
  双方が折半して負担するものとする。

3−2006.3.31
親権者である実父及び養母と同居している未成年者と実母との間の面接交渉について現段階での直接の面接を否定したものの、将来の面接を円滑にできるようにするため写真等の送付を命じた事例
[裁判所]京都家裁
[年月日]2006(平成18)年3月31日審判
[出典]家月58巻11号37頁
[事実の概要] 未成年者の実母が、親権者である実父及び養母と生活している未成年者との面接交渉を求めた事案
[審判の概要] 未成年者を取り巻く保護環境が乱れるおそれがあることなどを考慮し、現時点での面接や電話での会話は相当ではないが、将来の面接を円滑にできるようにするため、未成年者の写真及び通知票を送付することを命じた。

3−2006.3.9
面接交渉を定めた調停条項を変更し、面接交渉を全面的に禁止した事例
[裁判所]横浜家裁相模原支部
[年月日]2006(平成18)年3月9日審判
[出典]家月58巻11号38頁
[事実の概要] 離婚後、相手方との間で毎月1回の面接交渉を認める旨の調停が成立したが、相手方が調停条項を遵守せず、勝手に子と面接するなどしたことから、申立人が面接交渉の取りやめを求めた事案
[審判の概要] 相手方は本件係属中にもかかわらず子を待ち伏せしたり、無断で会いに行くなどし、さらには申立人に無断で子を連れ回したことにより逮捕されるなどの背信的行動を重ねたことから、今後ルールを守って子と面接交渉をしたり、子の心情や生活状況に配慮した適切な面接交渉の実施を期待することは困難であり、こうした状況のもとで相手方の面接交渉を許容することは子の福祉に適合しないとして、面接交渉を定めた調停条項を変更し、面接交渉の全面的に禁止した。

3−2006.2.3
面接交渉を認容した原審判に対する抗告審において、原審判後に生じた事情の変化を考慮して、面接交渉の内容を変更した事例
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2006(平成18)年2月3日判決
[出典]家月58巻11号37頁
[事実の概要]
原審判で実母と未成年者らとの宿泊付きの面接交渉が認容された後、父が再婚し、その再婚相手と未成年者らとが養子縁組をしている事案。
[判決の概要]
父及び養母がその共同親権の下で未成年者らとの新しい家族関係を確立する途中にあることに鑑み、生活感覚やしつけの違いから未成年者らの心情や精神的安定に悪影響を及ぼす危惧が否定できない宿泊付き面接交渉は避けるのが相当であるなどとして、原審判の面接交渉の内容を変更した。

3−2006.1.31
父が3名の未成年者との面接交渉を求めた事案において、2名については面接交渉を認めるべきではないが、1名については面接交渉を認めるべきであるとした事例
[裁判所]東京家裁八王子支部
[年月日]2006(平成18)年1月31日審判
[出典]家月58巻11号38頁
[事実の概要]
父が3名の未成年者(12歳、9歳、6歳)との面接交渉を求めた事案。
[審判の概要]
9歳、6歳の未成年者については母の協力なしに面接交渉を実現することが困難であり、それでもなお面接交渉を実現しようとすれば、父母間の紛争が再燃して未成年者の福祉を害するおそれがあるから面接交渉を認めるべきでないが、12歳の未成年者については、父に対して強い拒否感がなく、両親との関係について理解し、自身で父との面接の可否について自立的に判断できる能力を有しており、単独で父と面接交渉をすることが可能であるとして、面接交渉を認めるべきであるとした。
また、父との面接交渉を認めるべき未成年者につき、未成年者自身が父と手紙等で連絡を取り合い、その希望に沿った面接交渉の日時、場所及び方法を定めるのが相当であるとして、母に対し、その連絡及び面接交渉の妨害を禁止した。

3−2005.8.24
子の親権者を父と定めて協議離婚したが、離婚後、面接交渉が拒否され、非監護親である母が父に対して面接交渉を求めた事例
[裁判所]京都家裁
[年月日]2005(平成17)年8月24日審判
[出典]家月58巻11号56頁
[事実の概要]
A(申立人:未成年者らの母)とB(相手方:未成年者らの父)は、平成15年に未成年者らの親権者をいずれもBと定めて協議離婚した。離婚に際し、BはAに対し、未成年者らと面接交渉をすることを認めており、現実に面接交渉(宿泊付き面接交渉を含む)が行われていたが、平成16年に面接交渉が行われて以降、Bは面接交渉を拒否するようになった。Bが面接交渉を拒否するようになった要因は、面接交渉のときに、未成年者が「帰らない。」と言っていたところ、Bが連れ帰ろうとした際、Aが別れ際に未成年者らに対し「お母さんに会えへんようになるよ。」などと言ってしまったことにあった。
なお、審判の途中で試行的面接交渉が行われている。
[審判の要旨]
1相手方は、申立人に対し、次のような方法で申立人と未成年者らが面接交渉することを許さなければならない。
(1)面接日 @毎年の3月と7月を除くその余の月の第4日曜日
       A毎年の3月と7月の第4土曜日から第4日曜日
       Bただし、未成年者らの事情により不都合が生じた場合には、
        それぞれ翌週の同じ曜日とする。
(2)面接の時間 前項@については、午前11時から同日午後4時の間
          前項Aについては、土曜日の午後2時から日曜日の午後2
          時の間
(3)なお、上記の日時に未成年者らの事情により不都合が生じた場合には、
 申立人と相手方は、代替の面接日又は面接時間を協議によって定めるも
 のとする。
(4)受渡し方法
 相手方又は相手方の指定する相手方の親族(内縁の妻を含む)は、@につ
 いては面接の日の午前11時に、Aについては、同午後2時に京都府○○
 市△△所在の「□□」駐車場において、申立人に未成年者らを引き渡
 し、申立人は、上記面接交渉終了時刻に、同所において、未成年者らを
 相手方又は相手方の指定する相手方の親族(内縁の妻を含む)に引き渡
 すものとする。
 ただし、申立人と相手方との協議により、引き渡し場所を変更すること
 ができる。
2相手方は、申立人が未成年者らとの面接交渉の際に、誕生日やクリスマス
 にプレゼントを渡すのを認めなければならない。ただし、プレゼントは1人に
 つき1万円(1回分)以内とする。
3申立人は、未成年者らの保育園や小学校の行事に参加したりするなど、
 前項以外の行動をとることは差し控えなければならない。
[ひとこと]
相手方が消極的ではあるものの、面接交渉を条件付きで認めるようになってきたことや、申立人と未成年者らの面接交渉において、ことさら未成年者らの福祉を害するようなことは全く見られないこと等から、原則的に面接交渉が認められている。

3−2004.8.13
面接交渉の不当な拒否につき200万円の慰謝料を認めた例
[裁判所]横浜地裁横須賀支部
[年月日]2004(平成16)年8月13日判決
[出典]未公表
[事実の概要]
離婚調停において、月1回程度父と子が面接交渉することを認める合意をしたが、6回の面接交渉が行われた後、元妻が正当な理由なく面接交渉を拒否したことにより原告である元夫が精神的苦痛を蒙ったとして、金400万円の慰謝料請求を求めた。判決時、子は12歳(男子)。原告は養育費月4万円を送り続けている。
[判決の要旨]
「被告の面接交渉拒絶が正当かつ合理的な理由に基づくものとは到底言えず、被告の拒否が違法であることは否定すべくもない。慰謝料の金額について検討するに、被告の面接交渉拒絶は約3年半に及び、単純に回数に換算しても40回を超えること、原告は、この間、きちんと養育料の支払を履行しているのみならず、面接交渉の実施を求めて、2度の履行勧告を申し立て、さらに面接交渉を求める調停を申し立てた上で、本訴を提起したこと、被告の拒否の理由は薄弱であり、乙第3号証の手紙の文面に見られるように、原被告間の争いにことさら子供を巻き込むなど真に子供の利益に適っているとは評価できないこと、被告には経済的なゆとりはないようであるが、慰謝料の金額は被告に対する間接強制の意味を有することを総合して、200万円が相当と判断する。」
[ひとこと]
面接交渉拒否による損害賠償を認めた判例で公表されたものは数少ないので、非公表判例だが掲載した。

3−2003.11.28
3−2003.9.29の抗告審
毎月1回の面接交渉を認める旨の調停が成立したが,事情変更があるとして,当面の間父による面接交渉を認めないものとした原審判に対する即時抗告を棄却した事例
[裁判所]福岡高裁那覇支部
[年月日]2003(平成15)年11月28日決定
[出典]家月56巻8号50頁
[事実の概要]
那覇家裁沖縄支部3−2003.9.29審判を参照。
[決定の要旨]
本決定は,抗告人(父)は調停で定められた面接交渉の内容,回数等に反し,不規則かつ不適切な態様による面接交渉を繰り返してきたとし,全体として面接交渉が円満に行われてきた等の抗告人の主張を退けた。その上で,抗告人は,母の監護教育方針に不適切なところがあるわけでもないのに,母の監護教育方針を自己のそれに沿うようにさせようとして介入し,専らそのための手段として面接交渉を求めている傾向がうかがえることなどから,抗告人と子らとの面接交渉を認めると,母による監護教育に支障が生じ,子らの精神的安定に害を及ぼすおそれが強いというべきであるとし,子らの福祉のために,当分の間は面接交渉を認めないこととするのが相当であるとして,原審判に対する即時抗告を棄却した。

3−2003.9.29
毎月1回の面接交渉を認める旨の調停が成立したが,事情変更があるとして,当面の間父による面接交渉を認めないものとした事例
[裁判所]那覇家裁沖縄支部
[年月日]2003(平成15)年9月29日審判
[出典]家月56巻8号55頁
[事実の概要]
協議離婚後,親権者となった母が,父に対し,長男(14歳)長女(11歳)につき月1回の面接交渉を認める旨の調停が成立したが,父がこれを遵守せずにバス停で待ち伏せるなど不規則な面接交渉を行うとともに,成績が下がったこと等を厳しく叱責するなど,主として長男の養育方針に介入しようとした。そこで,母が,面接交渉について子らの意向を踏まえて調停条項を見直したいとして,調停を申し立てた。調停不成立となり,審判へ移行した。
[審判の要旨]
申立人と相手方の間の感情的対立が深刻であること,相手方は,もっぱら,申立人の監護方針を自己の方針に沿うように是正させるために面接交渉を求めていると認められること,本件調停等の手続中においても,調査官から指摘等があるにもかかわらず,自己の感情の赴くままに不適切な面接交渉を繰り返していること,相手方は,面接交渉が子の福祉を図るためのものであるという,面接交渉を理解する上で最も重要な視点に欠けていると言わざるを得ないことなどの諸点に照らせば,子らの福祉のためには,前回の調停の調停条項を変更して,当面の間面接交渉を認めないこととするのが相当である。そして,平成16年3月末日までは,面接交渉を一切認めないものとし,同年4月以降も,子らから相手方に対して面接を希望する旨の連絡があった場合に限り,面接交渉を認めることとするべきである。面接にあたっては,事前に,その具体的方法等を当事者間で協議して決めるのが相当である。申立人は,子らが相手方に対して連絡することを妨げてはならない。
[ひとこと]
父が不適切な面接交渉を繰り返したため,一定期間面接交渉を一切認めないとしたもの。理由中,父に対し,面接交渉の趣旨を十分に理解し,子の福祉に配慮するといった態度を望むと強調している。

3−2002.11.15
間接強制を命じた原審判を取り消し、間接強制の申立てを却下した事例
[高松高裁2002(平成14)年11月15日決定 家月55巻4号66頁]
*家月55巻4号66頁には高松高裁2002年(平成14)年6月25日決定とあるが、日付が誤っている。6月25日は原審判の日付。
[事案の概要]
母(相手方)が父(抗告人)を相手方として親権者指定、面会交流の調停を申し立てたところ、2001年9月に、長男(1999年生)の親権者を父と定めることのほか、父は、母に対し、母が長男と毎月2回面接することを認め、その方法、場所等については、母において良識にかなった面接方法を選択することができることとし、特に制限をしないとの条項を含む調停が成立した。
2001年10月に面会交流が実施されたが、それ以降は、父は調停の合意に反して母に長男を会わせなかった。そこで、母は履行勧告の申出をし、調査官による履行勧告がなされたが、父は応じなかった。そこで、母は、2002年3月、上記調停条項を債務名義として、@父は母に対し月2回面会交流をさせよ、A父が@の債務を履行しないときは、1回につき金10万円を支払え、との裁判を求める旨の間接強制を申し立てた。
原審(高松家審2002年6月25日家月55巻4号69頁)は、月2回の面会交流と、それを履行しないときは、1回につき金5万円を支払えとの審判を下した。
なお、父は、面会交流に応じない理由として、母に会わせると長男が「ますます感情的になり長男のためにならない」ことのほか、調停成立直前などに数回にわたり父母が性的関係をもったため2001年10月に母が妊娠し、産みという母と中絶してくれという父との間で激しく葛藤し対立しているということをあげていた。
[決定の概要]
「調停条項のうち、債務名義として執行力を有するのは、当事者の一方が他方に対し、特定の給付をなすことを合意の内容とする給付条項のみであり、特定の権利者若しくは法律関係の存在又は不存在を確認する旨の合意を内容とする確認条項については、債務名義にならない。そして、ある調停条項が、当事者の給付意思を表現した給付条項であるか、権利義務の確認にとどまる確認条項であるかは、当事者の内心の意思によって決まるものではなく、調停条項全体の記載内容をも参酌しつつ、当該調停条項の文言から客観的に判断すべきものである」。
「毎月2回面接することを認め」との調停条項の文言から「直ちに抗告人が特定の給付をなすことを合意したことを読み取ることはできない。かえって、同調停条項で使用されている『認め』との表現は、裁判所において調停条項や和解条項が作成される場合に確認条項を表示する場合の常套文言であり、仮に給付条項とするのであれば当然『面接させる』等の給付意思を明確にした表現がされるべきものであるから、特段の事情がない限り、上記調停条項第2項は給付条項ではなく確認条項にとどまると解される。」
本件の調停条項については、「面接の方法、場所等について相手方に選択する権利があるといっても、現実に未成年者と面接を行うに当たっては、事前の連絡、調整等が当然に必要になるものであること」等から、確認条項ではなく、給付条項と解することはできない。 以上より、調停調書を執行力ある債務名義であることを前提にして間接強制を命じた原審判を取り消し、抗告人の間接強制の申立てを却下した。
[コメント]
任意に履行されるものと信じた非監護親が、面会交流の調停を成立させる際に、「面会交流をさせよ」と「面会交流を認める」との文言の違いを理解し、強制執行可能性を意識して、「させよ」を選ぶことの方が少ないのではないだろうか。特に、母が面会交流を認められると信じたからこそ親権を譲った可能性がある本件のような場合に、文言の相違に注視して、不履行を救済しないこと適切であるとは思われない。
本決定は、あくまで強制執行を求めるのであれば、「あらためて面会交流の調停又は審判を申し立て、給付条項を含む調停を成立させるか給付を命じる審判を求めるほかはない」と付記するが、それではあまりに当事者に負担をかける上、その成立まで非監護親と子の交流が閉ざされることは子の福祉に適わない。
なお、同様に「認める」という文言が用いられた調停条項につき、
大阪高裁2002(平成14)年1月15日決定(家月56巻2号142頁)は、面会交流の間接強制を可能と判断し、最高裁 2013年3月28日第一小法廷決定も、「『認める』との文言の使用によって直ちに相手 方の給付の意思が表示されていないとするのは相当ではない」とした。

3−2002.10.31
離婚訴訟係属中で保護命令が発令されており嫡出否認調停を申立てている父からの面会交流の申立てが却下された事例
[東京家裁2002(平成14)年10月31日審判 家月55巻5号165頁]
[事案の概要]
2000年5月、母は子を出産し、同月、父母は婚姻した。父は母に大声で怒鳴りつけ、暴力をふるうことがあり、子の養育にも非協力的であった。2001年6月ころ父母は別居したが、その後も父は母に大声をあげ暴力をふるった。
同年、母が申し立てた離婚調停が不成立となり、同年中に母は離婚訴訟を提起した。2002年3月、離婚を認め親権者を母とする判決が言い渡されたが、父が控訴した。同年6月控訴棄却後、父は上告した。
同年5月、母が申し立てた保護命令が発令され、同年8月、父の抗告は棄却された。
同年6月、父は面会交流の調停と嫡出否認の調停を申し立てた。面会交流は第1回で不成立となり、審判に移行した。
父は、2001年から2002年にかけて、10数回、事前の連絡なしに、子に面会するため保育園を訪れた。
[審判の概要]
「一般に、父母が別居中の場合も、未成熟子が別居中の親と面接・交流の機会を持ち、親からの愛情を注がれることは、子の健全な成長、人格形成のために必要なことであり、面接交渉の実施が子の福祉を害する等の事情がない限り、面接交渉を行うことが望ましい。 しかし、真に子の福祉に資するような面接交渉を実施するためには、父母の間の信頼・協力関係が必要である。」
本件では、相手方(母)が申立人(父)の暴力等を理由にした離婚訴訟が係属しているだけでなく、保護命令が発令されており、極めて深刻な対立状態にあり、その対立状態が早期に解消される見込みはない。面会交流を行えば、まだ2歳の幼児である子に精神的な動揺を与えることは避けられず、子の福祉を害する。
現実に申立人が面会を強要した態様は配慮に欠け、子が精神的に不安定になった。
さらに、嫡出否認調停事件を申し立てていることから、「父親としての純粋な愛情に基づく面接交渉の実施を期待できるのか疑念を抱かざるをえない」。
以上より、父の申立てを却下した。
[コメント]
一般論としては面会交流を行うことが望ましいとした上で、本件の様々な事情を斟酌して、申立てを却下した。

3−2002.8.12
間接強制申立却下に対する執行抗告の受差戻審にて申立てが認められた事例
[神戸家裁2002(平成14)年8月12日決定 家月56巻2号147頁]
[事案の概要]
大阪高裁2002(平成14)年1月15日決定 家月56巻2号142頁と同じ。
なお,債務者である母が提起した離婚訴訟は,2002(平成14)年2月,請求棄却判決が言い渡され,母が控訴し,本件決定当時,大阪高等裁判所に係属中であった。
[決定の概要]
受戻審は抗告審決定に拘束されるので(裁判所法4条),面会交流義務を負う債務者が「正当の理由がないのに」義務の履行をしない場合には,「特別の事情がない限り」,債務者に対し,間接強制として相当な金銭を債権者に支払うべき旨命じることになる。
「正当の理由」とは,「例えば,監護している子が面接交渉権利者である実親に対し,その従前の養育態度などに起因する強い拒否的感情を抱いていて,面接交渉が,子に情緒的混乱を生じさせ,子と監護者実親との生活関係に悪影響を及ぼすなど,子の福祉を害する恐れがあるといった,主として子及び監護親実親の側における,間接強制を不相当とすべき諸事情」をいう。
「特別の事情」とは,「例えば,非監護親実親の面接交渉が,もっぱら監護親実親に対する復縁を目的とするものであるとか,その方法,手段が不適当であるなど,面接交渉が権利の濫用に当たるといった,主として非監護親実親の間における,間接強制を不相当とすべき諸事情」をいう。
債権者が債務者に頻繁に送信したファックスの文面は,「債権者の特異な性格を如実に表す」もので,「情緒不安定」にある債務者が,債権者に対してより一層の恐怖心,嫌悪感を抱くこと,債権者と子の面会交流につき否定的拒否的感情を抱くことは容易に想像できる。そして,面接条項に基づく債権者と2人きりの面会交流を負担に感じてきた子が,「債務者に対する忠誠葛藤」等から,2001年4月の3回目の面会交流を拒むに至ったものと認められる。
しかし,調査官の子に対する心理テストの結果から,子が債権者に対し否定的拒否的感情を抱いておらず,逆に債権者にもっと構ってほしいという気持ちを有していることが認められる。そうすると,「正当の理由」は存しない。
債権者の送信したファックスの内容は,面会交流の障害の原因となったが,それは,債権者の性格,病的症状に起因するものであることが窺われること等から,本件申立てが権利の濫用にあたるとするのは相当ではない。債権者が子に手紙を書かせたことも面会交流の方法として不適切な行為ではあるが,それをもって本件申立てが許されないとするのも相当ではない。よって,「特別の事情」は認められない。
以上より,本決定の告知を受けた日以後に期日が到来する面会交流義務につき,債務者が開業医として相当額の収入を得ていることから,不履行1回につき申立ての通り20万円が相当であるとして,間接強制による強制執行を命じた。
[コメント]
債務者は,これに対し執行抗告を申し立てたが,大阪高裁2003(平成15)年3月25日決定(家月56巻2号158頁)は棄却した。債務者はなお許可抗告を求めたが,棄却され,不履行1回につき金20万円の間接強制金を認めた受差戻審決定が確定した(最高(三小)2003(平成15)年8月6日決定・家月56巻2号160頁)。
なお,本神戸家裁決定も,執行抗告審である上記大阪高裁決定も,調停成立後の事情の変更により,面会交流が子の福祉に反すると主張するならば,調停条項の変更ないし取消しを求める調停審判の申立てをするなど適宜の手続をすべきである旨書き添えている。

3−2002.5.21
暴力を原因として離婚した夫からの面接交渉の申立を却下した例
[裁判所]東京家裁
[年月日]2002(平成14)年5月21日審判
[出典]家月54巻11号76頁
[事案の概要]
未成年者の父母は97年婚姻。00年3月に裁判上の和解をして協議離婚。親権者を母とし当分面接交渉を求めないと離婚時に合意した。
未成年者は審判時3歳9ヶ月の女子と母の前夫との間の子の2人(年齢不明)。「当事者間の離婚の原因は、申立人の暴力にあり、申立人がいわゆるDV加害者であったことは、申立人自身そのための治療を受けるなどしていることからも明らかである。そして、申立人は、相手方に対する暴力を反省しており、治療も受けているので、面接交渉に支障はない旨主張している。しかし、現在でも申立人に加害者としての自覚は乏しく相手方を対等な存在として認め、その立場や痛みを思いやる視点に欠け、また、事件本人(注 子どものこと)について、情緒的なイメージを働かせた反応を示すこともない。他方、相手方は、平成12年1月にPTSDと診断され、安定剤等の投与を受けてきたほか、心理的にも手当が必要な状況にあり、さらに、母子3人の生活を立て直し、自立するために努力しているところであって、申立人と事件本人の面接交渉の円滑な実現に向けて、申立人と対等の立場で協力し合うことはできない状況にある。現時点で申立人と事件本人の面接交渉を実現させ、あるいは間接的にも申立人との接触のを強いることは、相手方に大きな心理的負担を与えることになり、その結果、母子3人の生活の安定を害し、事件本人の福祉を著しく害する虞が大きいといわざるをえない。従って、現時点で申立人と事件本人との面接交渉を認めることは相当でない」として父からの面接の申立を却下した。
[コメント]
DVのケースで面接交渉申立を却下する審判があいつでいる。
この件では、まだDV防止法の成立していなかった離婚時に「当分求めない」と合意しており、いずれは面接をという期待が別居親に生じているが、反省が乏しいので却下という判断は非常に明確でわかりやすい。

3−2002.1.16
暴力を原因として離婚した夫からの面接交渉の申立を却下した例
[裁判所]横浜家裁
[年月日]2002(平成14)年1月16日審判
[出典]家月54巻8号48頁
[事案の概要]
未成年者である子の父母は10年間の同棲後19 91年婚姻。01年に離婚裁判が確定し夫には500万円の慰謝料支払いが命じられた母が親権者となった。未成年者は審判時7歳の女子。「申立人は相手方に対し、繰り返し、暴力をふるい、骨折を伴うような重大な障害を与えていること、そのため、相手方は、申立て人に対し、強い恐怖感を抱いており、所在を知られることによって、再び暴行を受けるかもしれないという危惧感をいだいており、そのような感情を抱くことが不自然、不相当ということはできないこと、これに対し、申立人において、例え暴力をふるったことに理由があるとしても、その暴力について反省し、相手方の恐怖感を和らげるような行動が十分にとられているとは認めがたいこと(平成13年6月に到達した申立人の相手方代理人宛の書面によると、申立人は相手方が嘘をついているとして相手方に対し詫びを求めており、また、人の心をわからない人には天罰が降りてもおかしくないなどの記載がある)、相手方及び未成年者は、現在は、暴力を受けることなく、安定した状態で生活をしていること、前記認定のような暴力が過去にあり、未成年者は積極的に申立人との接触を求めてはいないことなどが認められ、これに本件記録に現れた一切の事情を総合すると、申立人が未成年者に愛情を抱いている事実があるとしても、現時点において、申立人が求める面接交渉を認めることが子の最上の利益に合致するとは認められない。反対に、もし、これを認めると、未成年者が再び両親の抗争に巻き込まれ、子の福祉が害される危険がある。」として父からの面接の申立を却下した。

3−2002.1.15
面会交流の間接強制の申立ても認められるべきとしながら決定をするには相手方の審尋が必要であるとして、却下した原決定を取り消し、差し戻した事例
[大阪高決2002(平成14)年1月15日 家月56巻2号142頁]
[事案の概要]
抗告人と相手方(どちらが父母かは決定からは不明。)は、1986年に婚姻し、1992年に長男が生まれた。相手方が申し立てたこの監護に関する処分調停申立事件において、2001年3月、長男の監護及び抗告人の面会交流について調停が成立した。調停の内容は、相手方は、抗告人が長男と毎月少なくとも月2回面接することを認め、その具体的方法も定めるものであった。同年5月、相手方は、離婚訴訟を提起し、同月以降、抗告人に長男を面接させていない。抗告人は、2回履行勧告の申立てをしたが、面会できていない。
原審(神戸家龍野支部平成13年12月7日決定)は、面接交渉の義務については、一切強制執行が許されないとして、抗告人の間接強制の申立てを却下した。
[決定の概要]
「家庭裁判所の調停又は審判によって、面接交渉権の行使方法が具体的に定められたのに、面接交渉義務を負う者が、正当の理由がないのに義務の履行をしない場合には、面接交渉権を行使できる者は、特別の事情がない限り、間接強制により、権利の実現を図ることができるというべきである(家事審判法15条、21条但書参照)。」
本事案については、抗告人が間接強制の申立てをすることは許されるというべきであるとして、原決定を取り消した上、間接強制の申立てに対する決定をするには、相手方の審尋が必要であるとして(民事執行法172条)、原審裁判所に差し戻した。
[ひとこと]
家事審判法15条、21条但書きは、家事事件手続法75条、268条1項に継承されている。

3−2001.6.5
面接交渉の申立を認めなかった例
[裁判所]東京家裁
[年月日]2001(平成13)年6月5日審判
[出典]家月54巻1号79頁
[事案の概要]
父が、母方にいる4歳、6歳の子との面接交渉を求めた。父母の対立・不和は今なお厳しく現時点における面接交渉は未成年者らに弊害を招きかねず子の福祉に合致しないとして、申立を却下。破綻の原因が父の暴力。母の勤務先や母子の寄宿先を繰り返し探知し、面会を求め、待ち伏せ、子を奪おうとし、接見禁止の仮処分命令が下されている(DV法施行以前)。子は父への嫌悪感を明確にしている。
[コメント]
夫に暴力やストーカー行為があると、離婚後も妻の恐怖心は消えず養育している子との面接を拒否することが多い。そうした場合に面接が認められなかった事例であり、DV法も施行された今、参考になる事案である。

3−2000.10.20
具体的な面接方法を定めるのは困難なため面接交渉の指針を主文で示した例
[裁判所]浦和家裁
[年月日]2000(平成12)年10月20日審判
[出典]家月53巻3号93頁
[事案の概要]
ドイツ在住の母が、日本に住む子との面接交渉を求めたが、ドイツ在住であることから具体的方法を決めるのは困難であること、子の年齢(判例から年齢は不明)に照らし自立心が強く父の意思で面接させることのできる時期は過ぎている等として、下記のような主文にとどめた。
「申立人が事件本人と、直接的な面接交渉又は手紙、電話等の通信手段を介する等の間接的な面接交渉をすることを妨げてはならない。
事件本人が成人に達するまでの間、事件本人の意思に反しない限り、事件本人の学校の各学期の終了ごとに、事件本人の近況を示す写真を送付し、事件本人の成育状況や学校での成績を知らせるなどして、事件本人の成育状況を知らせなければならない。」

3−2000.5.1
父母別居中の面会交流について家庭裁判所が相当な処分を命ずることができるとした事例
[最高裁2000(平成12)年5月1日第一小法廷決定 民集54巻5号1607頁]
[事実の概要]
抗告人(妻)と相手方(夫)は、1987年に婚姻し、1989年に長男が生まれた。夫の不貞を主たる原因として、婚姻関係は破たんし、1996年に妻は長男を連れて家を出て、以来、夫婦は別居している。妻は、1997年、離婚訴訟を提起し、1998年、離婚認容、長男の親権者を妻とし、財産分与と慰謝料を認容する一審判決が出されたが、双方が控訴し、控訴審が係属中であった。
訴訟外の合意に基づき、1996年5月まで、特に問題なく月2回、夫と長男の面会交流が継続していたが、同月の離婚訴訟の和解協議にて、夫が妻の和解案を拒否したことから、妻が面会交流を拒否するようになった。同年9月、夫が家庭裁判所に面会交流を求める調停を申し立てたが、不成立となり、1997年に審判に移行した。家裁、高裁とも、毎月1回、土曜日の午後1時から5時まで、夫と長男との面会交流を認めるよう命じた。妻が特別抗告した。
[決定の概要]
「婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容であるということができる。…父母の間で協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号により、面接交渉について相当な処分を命ずることができるとするのが相当である。」
[ひとこと]
家事審判法9条1項乙類4号は、家事事件手続法39条別表第二3号に当たる。
両親の離婚後に子との面会交流を求める審判の申立ては、「子の監護についての必要な事項」または「子の監護についての相当な処分」として家事審判事項に属するとして(民法766条、家事審判法9条1項乙類4号)、面会交流を命じうることは定着していたところ(最決昭和59.7.6花月37巻5号35頁)、離婚前の面会交流についても同様に認めうるとしてきた下級審の実務を承認し定着させたのが本決定である。杉浦則彦最高裁判所調査官(当時)による解説(ジュリスト1199号86頁等)参照。民法766条の改正(2012年4月施行)により、子どもの監護について協議により又は審判により解決すべき事項として、養育費と面会交流が明記されるに至った。

3−1999.12.21
面接を拒否する頑なな母親に500万円の慰謝料支払が命じられた例
[裁判所]静岡地裁浜松支部
[年月日]1999(平成11)年12月21日判決
[出典]判時1713号92頁
[事案の概要]
離婚調停において母を親権者とし、月1回、2時間程度の面接を合意したが、その後母がこれに応じず、家庭裁判所から履行勧告がなされたがこれにも応じなかったため、父から母に対し損害賠償請求がなされ、500万円という異例の高額慰謝料が認められた
[コメント]
子の人格形成における父母双方の役割を強調している点、暴力等特筆すべき理由もないのに面接を拒否する親権者に対する警笛となっている点は高く評価できるが、幼児の人格形成につき「このことを担う役割は生みの母親をおいて他には求められない」としたり、社会的法則の遵守等を父性原理、思いやり等を母性原理として分け、父親役割・母親役割を説いている点は、固定的性別役割分業観そのものであり問題。

3−1999.11.11
面接交渉の申立を認めなかった例
[裁判所]長野家裁上田支部
[年月日]1999(平成11)年11月11日審判
[出典]家月52巻4号30頁
[事案の概要]
子の実父が、祖父母かつ養父母である相手方に対し面接交渉を求めたが、離婚にまつわる紛争が子の精神に悪影響を及ぼしていると推測されること、当事者双方において未成年の福祉を最優先に考えて冷静に面接交渉を検討する心構えができていないことなどから、申立を認容すると申立人が相手方らの監護方針に干渉し子が精神的に傷つけられ混乱し、相手方が適切な監護ができなくなるおそれがある等、子の福祉に合致しないとして却下した。

3−1996.4.30
面接交渉を認めた例
[裁判所]横浜家裁
[年月日]1996(平成8)年4月30日審判
[出典]家月49巻3号75頁
[事案の概要]
父母間の対立が激しく、親権者である親が非親権者である親による面接交渉に強く反対している場合においては、特別の事情が存在しない限り面接交渉を回避するのが相当であるが、子の年齢等から子が単独で非親権者と面接することが可能であるときは、親権者が反対であっても原則として面接交渉を認めることができるとして、毎年1回の中学2年の子との面接交渉を認めた事例

3−1984.7.6
非親権者の親と子の面接交渉を認めるかどうかは、特別抗告の理由である憲法違反等の問題(本件では憲法13条違反の問題)にあたらないとした事例
[最高裁1984(昭和59)年7月6日第二小法廷決定、家月37巻5号35頁、判タ539号325頁]
[事案の概要]
父(抗告人)は、協議離婚の際に長女(決定からは年齢不明)の親権者とされなかったところ、親権者である母を相手方として、面接交渉の審判を申し立てたが、原審判(長野家裁諏訪支審昭和57年12月15日)は、申立てを退け、原即時抗告審裁判所(東京高決昭和58年3月30日)は、父の抗告を棄却した。
[決定の概要]
「所論は、協議上の離婚をした際に長女の親権者とされなかった同女の父である抗告人に同女と面接交渉させることは、同女の福祉に適合しないとして面接交渉を認めなかつた(原文ママ)原決定は、憲法13条に違反すると主張するが、その実質は、家庭裁判所の審判事項とされている子の監護処分に関する処分について定める民法766条1項又は2項の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、民訴法419条ノ2所定の場合にあたらないと認められる」として、抗告を却下した。
[ひとこと]
抗告人の主張の実質をとらえて、民法766条1項又は2項の解釈適用の誤りをいうものにすぎないと退け、面会交流を認めるかどうかは憲法問題ではないとするにとどまる判断である。面会交流の法的性質などには踏み込んでいないが、面会交流の法的性質、憲法13条との関係などにつき、多くの議論をよんだ判例。

3−1977.12.9
親権者の意思に反して第三者(祖父母)を監護者に指定することの可否とその要件を示し、祖父母から実父への子の引渡し、引渡しのための特段の配慮として引渡しまでの父との4回以上の面会交流及び引渡し後の祖父母との1回の面会交流(理由中では「2ヶ月以内に少なくとも1回以上」)を命じた事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]1977(昭和52)年12月9日決定
[出典]家月30巻8号42頁、判時885号127頁
[事案の概要]
父母、子ら2名(決定時11歳、9歳)、母の祖父母(母の養父母)が同居していたところ、子らの母は出産直後に死亡し、父が単独親権者となった。その後、再婚を巡り父と祖父母との仲が険悪になり、父は子らをおいて家を出て祖父母が監護していた。父は子らを後日引き取るつもりで子らとの接触を続けていたが、祖父母は引渡しに応ぜず、約一年後に父から祖父母に対して子らの引渡し請求を、祖父母から父に対して監護者の指定を求めた。子らは祖父母になつき、父に引き取られることに反対していた。原審は、父の申立てを認め、祖父母の申立てを却下したので祖父母が抗告した。
[決定の概要]
1 監護者指定について
原審、抗告審共に、家庭裁判所が親権者の意思に反して第三者を監護者と定めることが許されるのは、親権者が親権をその本来の趣旨に沿って行使するのに欠けるところがあり、親権者にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害すると認められるような特段の事情がある場合に限られるとした。そして、本件については、父は子に対し父としての愛情を十分に抱いており、親権者として欠けるところがあることを示す特段の事情は認められないとした。事件本人らが祖父母になついており、状態の変更がその福祉に悪影響を及ぼすとの祖父母の主張については、父が親権者として欠けるところがない以上、影響は一時的現象に留まるとして採用しなかった。
2 幼児引渡しについて (面接交流の時期・態様につき原審変更)
子の引渡しについては、環境の変化により子どもが受ける影響を考慮して、その具体的方法につき特段の配慮を施すことが相当との一般論を述べた。
本件については、まず祖父母が事件本人らを、少なくとも4度の面会交流の後に父に引渡すこと命じ、父に対しては、引渡しを受けた後2か月以内に一度、事件本人らを祖父母方に宿泊させて面会交流させることを命じた。引渡後に祖父母との面会交流を命じる理由は、父に引渡された事件本人らが、父の家が「真実の住居であることを自ら納得し自らの意思で相手方(担当者注:父宅)に帰宅するようにするため」であると述べている。
[ひとこと]
本決定では、第三者を親権者の意思に反して監護権として指定する要件が、「親権者不適格」及び「子の福祉を不当に阻害」という極めて厳しいものであることを示した。子どもは多くの人間に育まれて成長するが、親権者による監護が最も子の利益にかなうとの考えを前提に、親権者と第三者の優先順位を明確にした。ただし、意思能力のある子の意思の尊重、主たる監護者による監護の継続の重要性などの視点からは、親子関係の再構築がなぜそれほど重要であるかもう少し説得力をもって語られてもよかったのではないかとも思われる。
面会交流については、引渡前の父との面会交流のみを命じた原審と異なり、(決定が挙げた理由は分かりにくいが)子の利益の観点から、引渡後に祖父母との面会交流を行わせることを命じている点に特色がある。
しかし、決定は、祖父母との面会交流につき、「(引渡し後)2か月以内に一度」とし、2カ月後以降について何も命令しない。2か月目以降はどうすべきか、これがかえって紛争の火種を残すことにならないか、との疑問が残る。また、「事件本人らが父の家を真実の住居であると認めて帰宅するようにするため」という理由は、「それまで共に生活し主たる監護者であった祖父母との交流が続くことが子の精神的安定、成長にとって望ましいから」とすべきであったように思われる。祖父母による面会交流を認めた珍しい公表例である。

 
TOP BACK