判例
1  離婚原因
1-1 有責配偶者からの離婚請求
1−1−2007.8.31 離婚等請求事件(東京)
有責配偶者である夫からの離婚請求を認容した事例
[裁判所]東京家裁
[年月日]2007(平成19)年8月31日判決
[出典]家月61巻5号55頁
[事実の概要]
 別居期間が12年以上経過し,夫婦間の3人の子はいずれも成年に達している。原告(夫)の母は,障害がある長男を嫌がり,被告(妻)を責め,原告も,長男を邪険に扱った。被告は度重なる手術等を含め長男を苦労して育てたが,原告や原告の母は,健常者である二男だけを可愛がり,あからさまに差別した扱いをした。そのような態度に耐えかね,被告から離婚を求める調停を申し立てたが,原告が謝罪し態度を改めるとしたので,取り下げた。しかし,その後も原告の長男への態度が改まらないため,被告のみ別居した。その後に,長男は高校を中退し,非行事件をおこし少年院に収容された。原告は,少年院に面会も行かず,手紙も出さず、長男が少年院を退院した後も長男を引き取らなかった。やむなく,被告が仕事を辞め,長男を引き取った。原告は被告の求めにかかわらず,生活費を渡さなかった。被告は,結婚した長女のもとで世話になっており,持病があり,仕事はしていない。長男は,その後も問題行動をおこし,所在もわからない状態である。平成17年,被告が原告に対し、婚姻費用の調停を申し立てたところ,原告は被告に対し,離婚調停を申し立てた。離婚調停は不成立となり,原告が離婚を求め提訴した。
[判決の概要]
 別居して既に12年以上経過しており,婚姻関係は破綻しているものとした上,破綻の原因は,長男を冷たく扱ったり,被告の自宅への出入りを許さなかった原告の姿勢にあるとし,原告を有責配偶者と認めた。そして,別居期間が相当長期に及んでおり,長男は問題があるものの,子ら3人はいずれも成人であること,原告から扶養的財産分与,慰謝料の支払いが行われれば,被告に苛酷な状況にはならないとし,原告の離婚請求を認めた。
[ひとこと]
 本判決は,東京高裁( 1−1−2008.05.14)によって,取り消された。
 
TOP BACK