1 職場で
1-1 上司・同僚・取引先による事例
1−1−2012.8.29 G事件(東京)
被告会社の従業員から被告会社の代表者と店長により強姦されたこと等により肉体的精神的苦痛を受けたことにつき会社らに対する損害賠償請求をいずれも棄却した原判決を一部変更し、代表者と会社に対する請求を一部認めた例
[東京高判2012(平24)年8月29日 労働判例1060号22頁]
[事実の概要]
[東京地判2012(平24)年1月31日 労働判例1060号30頁]と同じ事案。
[判決の概要]
被控訴人C,被控訴人Dについての請求は原判決同様退けたが、被控訴人Bとの性交渉については、控訴人が被告会社に内定が決まった学生であったこと、被控訴人Bは人事権を有する代表取締役であったことなどから、控訴人が被控訴人Bの訪問や性交渉の要求を拒絶することは「不可能であったとまではいえないが、心理的に要求を拒絶することが困難な状況にあったものと認められ、控訴人が性行為を受入れたからといって、控訴人の自由な意思に基づく同意があったと認めることはできない。」として、原判決を変更し、被控訴人Bと会社に対し、慰謝料金300万円と弁護士費用30万円を認めた。
なお、控訴人は、うつ病、外傷後ストレス障害と診断されているとして、治療費、逸失利益等も主張したが、診断書が被控訴人Bとの性行為後の1年4か月後に控訴人の供述のみに基づいて作成されたこと、控訴人がその後も一定期間通常通り出勤していたこと、被控訴人Cと性交渉を含む親密な関係を続けていたこと等から、診断書の記載から、控訴人の現在の症状が被控訴人Bとの性交渉によって生じたものとは認められなし、相当因果関係も認めがたいとして、この点の請求は退けた。
[ひとこと]
被控訴人B(地裁では被告B)につき、東京地判2012(平成24)年1月31日と判断が分れた事案。(弁護士打越さく良)