5 敗訴の事例
5-1 職場で
5-1-2005.06.07 郵便局員の女性から男性への事件控訴審(大阪)
女性管理職のセクシュアル・ハラスメント行為と、被害申告を受けた総務課長Y男の事情聴取等の対応にセクシュアル・ハラスメント防止義務違反(二次セクハラ)を認めて郵政公社に15万円の支払いを命じた原審が、取り消された事例
[裁判所] 大阪高裁
[年月日] 2005(平17)年6月7日判決 ≪確定≫
[出典] 労働判例908号72頁
[上訴等] 原審:1-4-2004.09.03
[事実の概要] 原審参照
[原告の請求] 約4,427万円
[判決の概要] 原判決中、郵政公社敗訴部分を取り消す。「本件浴室の扉を開けた際のX女の行為は、国家賠償法上違法又は雇用契約上の義務違反と評価すべきセクシュアル・ハラスメントに当たる行為とはいえず、また…本件郵便局又は近畿郵政局の職員の対応にも、国家賠償法上違法又は雇用契約上の義務違反といえるような二次セクハラに当たる行為は認められない」。「A男の主張…は、不自然であり、これを採用することができない」。「たしかに、職務の一環であったとはいえ、女性であるX女が、男性用浴室の扉をノックもしないで開けたことは、礼儀に反する不用意な行動であるといえる。浴室内に人がいないと考えていたとしても相当であるとはいえないであろう。また、そのときの言葉遣いに必ずしも適切でない部分があった可能性がなくはない」。「しかし…X女の行為は、職務上の正当な目的のために、その目的に沿って必要な範囲で、かつ、基本的には相当な方法において行われた行為であるというべきであって、これを国家賠償法上違法であるとか、雇用契約上の義務違反といえるセクシュアル・ハラスメントに当たるというような評価をすることはできない」。
 総務課長Y男の対応の違法性については、「基本的な部分で双方の主張が全く食い違うような場合には、事実関係の把握に当たって…慎重な対応がされ、その結果、A男からの事情聴取がやや遅れたとしても、やむを得ない」。「総務課長Y男らの対応をあえて違法とすべきほどの根拠は見当たらないというべきである」。
[ひとこと] 原審が認定した女性から男性へのセクシュアル・ハラスメントは、A男の誇張、拡大、脚色の疑いがあり、X女の職務(防犯パトロール)として正当なものとされた。通常の勤務時間中にA男が時間休をとって入浴していたことを知らず、パトロール目的で浴室扉を開けたX女の行為を違法とできるかという限界事例。