判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2003.11.5 兼松男女差別事件
転換制度を設けたことによりコース別人事は、性差別であるが違法ではないとされた事例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2003(平成15)年11月5日判決
[出典] 労働判例867号19頁
[事実の概要]
1985年に総合商社兼松はコース別人事を導入したが、このさい、「一律に男性は一般職(他でいわれているいわゆる総合職に該当)、女性は一般職にされた」のは、女性であることを理由とした賃金差別であって労働基準法4条および民法の公序良俗に違反するとして、原告女性6人が同時期入社の男性との賃金差額3億2000万円を請求した。その後コース別人事の双方向転換の基準は簡素化されてはいる。
[判決の要旨]
男女別雇用の処遇は憲法14条に反するが、労基法3条・4条に直接違反するとは言えないとして、原告の請求を棄却。コース別人事制度については、当時均等法が、努力義務を定めていたので、公序良俗に違反しないとした。
[ひとこと]
野村証券男女差別事件(1−2002.2.20ではコース別人事における「互換性」がないとして、均等法違反としたのに対して、本判決では「もっぱら本人の希望と一定の資格条件を満たせば、(転換試験を)受けられるもので、内容も合理的」としている。しかし、浅倉むつ子教授は「転換制度が合理的であることはきわめて当然のこと。制度見直し以前から男女別に処遇されてきた多くの女性の不利益をいかに是正するかの方が大切」(日経新聞)として、本判決に疑問を投げかけている。