判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2003.12.24 住友電工事件
[裁判所]大阪高裁
[年月日]2003(平成15)年12月24日和解
[出典]
[事実の概要]1−2000.7.31に同じ。左記の控訴審
[和解内容]
会社側は原告の女性二をそれぞれ主席(課長級)、主査(係長級)に昇格させ、1人500万円の解決金を支払う。また国は雇用方法が実質的に性別による管理になっていないかにつき、厚労相は注意を払い、必要な施策を推進する、また均等法の調停制度を積極的に活用することを約束する。
[裁判所の和解勧告全文]
和解勧告
国際社会においては、国際連合を中心として、男女平等の実現に向けた取組みが着実に進められており、女性がその性により差別されることなく、その才能及び能力を自己の充足と社会全体のために発展させ、男性と女性が共に力を合わせて社会を発展させていける社会こそが真に求められている平等社会であることは、既に世界の共通認識となっているというべきである。
日本国憲法は、個人の尊厳と法の下の平等を宣言しており、わが国においても、国際的潮流と連動しつつ、その精神を社会に定着させるため、女性差別撤廃条約の批准(昭和60年)、男女共同参画社会基本法の制定(平成11年)など、着実な取組みが進められているが、他方、一部に根強く残っている性的役割分担意識等が、男女間の平等を達成するための大きな障害となっている現実もある。
就業の場面においては、昭和60年に制定された「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(旧均等法)が平成9年に改正され(平成11年4月施行、改正均等法)、事業主は、労働者の募集及び採用について女性に対し男性と均等な機会を与えなければならず、配置、昇進等においても差別的取扱いが禁止されるに至っている。
 このような改革は、男女差別の根絶を目指す運動の中で一歩一歩前進してきたものであり、すべての女性がその成果を享受する権利を有するものであって、過去の社会意識を前提とする差別の残滓を容認することは社会の進歩に背を向ける結果となることに留意されなければならない。そして現在においては、直接的な差別のみならず、間接的な差別に対しても十分な配慮が求められている。
 当裁判所は、上記事件について、審理の結果を踏まえ、かつ、上述したとおり、男女差別の撤廃に向けた国際的な取組みと、男女共同参画社会基本法が制定され、その実現に向けて、社会の隅々における取組みが進められている今日のわが国の状況を考慮し、本件紛争が早期に、かつ、前向きに解決されることを期待して、別紙和解条項をもって、当事者双方が和解することを勧告する。
平成15年12月1日
大阪高等裁判所第14民事部
裁判長裁判官   井 垣 敏 生
         高 山 浩 平
         神 山 隆 一
[ひとこと]
勧告で、裁判所が国際社会の共通認識を尊重する姿勢を打ち出し、間接差別にも配慮すべきと明示したことは画期的。