判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2007.6.28 昭和シェル事件
1−2003.1.29昭和シェル事件の控訴審
[裁判所]東京高裁
[年月日]2007(平成19)年6月28日判決、最判は2009(平成21)年1月22日
[出典]判時1981号101頁、労働判例946号76頁
[事実の概要]
会社を退職した原告が、在職中、賃金について女性であることを理由に差別的な取り扱いを受けたとして、会社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。
[判決の概要]
それをふまえて、本件については、定期昇進性等に関し、男女間で著しい格差があることを認め、原告について、男性社員との間に格差を生じたことにつき合理的な理由が認められない限り、その格差は、男女間において存した上記格差と同質のものと推認され、この男女格差を生じたことについて合理的な理由が認められない限り、その格差は性の違いによるものと推認するのが相当であるとした上、原告が入社以来担当していた仕事の内容、会社の合併などを基準に、3期間に区分し、会社の合併(昭和60年1月)以降退職まで、原告が男女差別され、会社が原告を昇進させなかったのは違法であり、少なくとも過失による不法行為が成立すると認めるのが相当と判示した。
[ひとこと]
平成9年改正前の男女雇用機会均等法8条は、「事業主は、労働者の配置及び昇進について、女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをするように努めなければならない。」と規定していた。
同条については直接的私法的効果を生じるか否かについて学説上争いがあるが、本判決は、「同条は単なる訓辞規定ではなく、実効性のある規定であることは均等法自体が予定しているのであり、上記目標を達成するための努力をなんら行わず、均等な取扱いが行われていない実態を積極的に維持すること、あるいは、配置及び昇進についての男女格差をさらに拡大するような措置を執ることは、同条の趣旨に反するものであり、原告主張の不法行為の成否についての違法性判断の基準とすべき雇用関係についての私法秩序には、上記のような同条の趣旨も含まれるというべきである」と判示し、不法行為責任を会社に認めた点に、本判決の意義がある。
最判平成21年1月22日は、双方の上告を棄却した(1992年に昭和シェル石油を退職した女性が、昇格や昇給で男女差別を受けたとして損害賠償を求めていた裁判の上告審判決。最高裁は双方の上告を棄却する決定を下した。これにより、同社に対する約2050万円の支払を命じた2審東京高裁判決が確定した)。