2−6−2009.12.21
元夫の元妻に対する慰謝料請求につき、離婚訴訟である前訴と実質的には紛争の実態は同一であり、紛争を蒸し返すものであるから、信義則に反して許されないと判断された事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2009(平成21)年12月21日判決
[出典]判例時報2100号43頁
[事実の概要]
被控訴人Y(妻)は、控訴人X(夫)との婚姻中である昭和58年に子Aを出産し、AはYとの間の長男として出生届が出された。Aは、Yが不貞相手との間にもうけた子であったが、Yはその事実を知らないまま、約18年間Aを自分の子として育ててきた。平成17年、YがXに対し、離婚及び慰謝料の支払いを求める訴えを提起し、Xも同様の反訴をした。同審理の中で、AとXとの間に生物学的な親子関係が存在しない旨のDNA鑑定結果が出され、裁判所は、婚姻関係破綻の主たる原因はYの不貞行為及び約18年もの間Aの出自の真実を隠し続けていたことにあるとして、Yに対して600万円の慰謝料等の支払いを求める判断を下し、裁判離婚が成立した(以下、「前訴」という。)。その後、XとAとの間に親子関係が存在しないことを確認する審判もなされた。
前訴は離婚そのものによる慰謝料の請求を認容したものであったが、本件では、Xは、@離婚原因たる個別の有責行為による慰謝料の支払いを求めるとともに、A不当利得返還請求権に基づき、Aが出生して20歳になるまでの間、Xが負担してきたAの養育費相当額の返還等を求めた。
[判決の概要]
慰謝料請求について。本訴の提起は、前訴において主張されて評価が尽くされた事実に基づいて慰謝料の支払いを再度求めているものにほかならない。「本訴は前訴と実質的には紛争の実態は同一であり、単に既判力に抵触するというにとどまらず、…十分な審理を尽くしたうえで司法判断を経て決着した紛争をあえて蒸し返すものであると言わざるを得ないから、信義則に反して許されない」。
[ひとこと]
養育費の不当利得返還請求の判断については、2009.12.21参照。
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